目次
「綸言汗の如し(りんげんあせのごとし)」は、紀元前の遥か昔に生まれたことわざとされている。読み方はわかっていても、書くのは難しく、意味を誤って覚えていることも多いのではないだろうか。
本記事では正しい意味を解説し、例文も加えて説明していく。類義語や英語表現も紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。
「綸言汗の如し」とは?
「綸言汗の如し」とは、君主が一度口にした言葉は取り消せないという意味を持つ。以下では、正しい意味と由来を解説していく。
■意味・読み方
「綸言汗の如し」を辞書で引くと、意味は以下の通り。
《「漢書」劉向伝から》天子の言葉は、出た汗が体内に戻らないように、一度口から出れば取り消すことができない。 引用:デジタル大辞泉(小学館) |
「天子(てんし)」とは、中国の古代から前近代の君主の称号である。このことわざは、「君主の言葉は一度口から出ると取り消せない」という意味である。なぜなら「出た汗は二度と体内に戻らない」からである。
■由来
「綸言汗の如し」は、紀元前79年(元鳳2年)に生まれた前漢の学者「劉向(りゅうきょう)」のの言葉にさかのぼることができる。綸言とは天子の言葉と解釈できる。
成語としては、後世に整えられた可能性もあるという。
「綸言汗の如し」の使い方
「綸言汗の如し」を使うシーンによって、注意したいポイントや表現方法が異なる。下記の例文を参考にして、「綸言汗の如し」の使い方を理解し、適切に使用してほしい。
■ビジネスシーンでの使い方
ビジネスシーンでは、特に上司や経営者などの発言に対して使うことが多い。重要な決定や指示に対して、このことわざを用いると、その発言の重みや取り消せない性質を強調することができる。
例文
・「社長の言葉は『綸言汗の如し』であり、一度決まった方針は変わらない」
・「部長の発言は『綸言汗の如し』だから、しっかりと覚えておこう」
■教育での使い方
教育現場では、教師の指導や校長の方針などに対して使うことがある。生徒に対して、言葉の重みを理解させるために使うと効果的である。
例文
・「校長先生の言葉は『綸言汗の如し』だ。私たちもその方針に従おう」
・「先生の指示は『綸言汗の如し』で、一度決まったことは変わらない」
■日常会話での使い方
日常会話では、家族や友人との間で重要な約束や決定に対して使うことができる。相手に対して、発言の重さや取り消せない性質を伝えるために用いる。
例文
・「親の言葉は『綸言汗の如し』だから、一度言われたことは守らないといけない」
・「友人との約束も『綸言汗の如し』だ。一度決めたことは守るべきだ」
「綸言汗の如し」の類義語
一度言ったことは安易に取り消せない意味を持つ「綸言汗の如し」には、似通う言葉が複数ある。以下では、2つの類義語を紹介しよう。
■天子に戯言無し
「天子に戯言無し(てんしにぎげんなし)」は、君主や皇帝のような位の高い者が、ふざけた言葉を口にしないという意味である。現代では君主や皇帝を使わないため、このことわざを使う際には、役職が高い人や目上の人物を対象にして活用しよう。
「綸言汗の如し」との関連についてだが、「綸言」も天子が主役であり、軽口を叩けないという点で共通している。
■武士に二言なし
「武士に二言(にごん)なし」は、最初に言った言葉を覆してはいけないということわざである。「二言」という言葉に疑問を感じるかもしれないが、これは二度ものを言うことや、前に言ったことと違うことを言うことを意味する。
つまり、前言撤回はあり得ないということで、「綸言汗の如し」とも結びつけることができる。