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こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチかわかりやすい法律解説を目指しています。
性格が合わなかった夫婦の離婚法廷バトルをお届けします。ファイト!
夫
「とにかく妻がルーズなんです。部屋は散らかっているし、物はなくすし、時間もルーズだし」
――と言ってますが、奥さまご反論は?
妻
「夫は細かすぎるんです!口うるさいったらありゃしない。几帳面すぎてお金にも細かいですし。私に生活費しか渡しませんから」
別居5年を経て、夫が離婚請求訴訟を提起。
裁判所
「離婚請求OK!改善の見込みがナッシング」
(東京地裁 S59.10.17)
性格の不一致を理由とした離婚請求はほぼ認めないので、今回はレアケースです。
以下、わかりやすく解説します。
※ 争いを一部抜粋して簡略化
※ 判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換
登場人物
夫婦ともに医者です。
▼ 夫
・脳神経外科医(東大医学部卒)
・30代
▼ 妻
・小児科医
・30代
▼ 子ども
・長女(7歳)
どんな事件か
▼ 結婚してすぐにドイツへ
結婚して4か月後には、夫の仕事の関係で夫婦はドイツで生活することになりました。ドイツ滞在中に妻は長女を出産します。この夫婦、新婚当初から些細なことでケンカすることが多かったんです。
▼ 夫の性格
・几帳面、キレイ好き
・部屋が散らかっていることに耐えられない
・しつこい
・口うるさい
・お金に細かい
妻が無断で高額な買い物をすると怒る
かなり激しく長時間激怒
・暴力を振るうこともあった
▼ 妻の性格
・整理が苦手
・物をなくす
・湯を沸かしっぱなしにしたりする
・やや時間にルーズ
とにかく合わない2人だったようです。結婚する前に同棲したほうがいいですね。
暴力を振るう夫はクソですが、妻にも融通が利かなかった面があるようで、夫の気持ちを逆撫でする言葉を繰り返していました。
▼ 夫が離婚を考えるようになる
結婚から約2年後、夫が離婚を考え始めました。ここで夫はしたたかな行動に出ます。
離婚で裁判になることを想定したのでしょう。証拠として部屋の散らかり具合を写真に納めたり、妻とケンカになった時に録音したりしました。
▼ 別居の引き金
ある日、夫が妻に「母が家に来る」と言いました。妻は断ったのですが、無視して夫マザーが来ました。
そして、部屋の散らかり具合を目の当たりにしてしまいます。部屋を見られた妻がブチギレます。
――夫にメチャクチャ怒鳴ってやりましたか?
妻
「いえ。夫のクツを湯船に入れてやりました」
わんぱく!
▼ 別居スタート
このクツ溺死事件で夫が見切りをつけます。クツの命日からしばらくして家を出ていきました。長女は妻が育てることになりました。
▼ 夫が離婚請求
そして、別居期間が5年になったころ、夫が離婚請求訴訟を起こしました。