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「一念岩をも通す」とは、「困難なことでも、強い気持ちで挑めば成し遂げられる」という意味を持つことわざだ。思わず逃げ出してしまいそうなときの教訓ともなるが、正しい読み方や意味、由来などを理解している人は少ないのではないだろうか。
本記事では、ことわざについて詳しく解説していく。類義語や使い方、例文を知りたい人にも役に立つだろう。
「一念岩をも通す」とは?
「一念岩をも通す」は、気持ちを強く持つことの大切さを教えてくれることわざである。以下では、意味・読み方と由来、成り立ちを解説していく。
■ 意味・読み方
「一念岩をも通す」を辞書で引くと、意味は以下の通り。
強い信念をもって物事に当たれば、どんな事でも成し遂げることができる。 |
上記の通り、「どれだけ困難と思えることも、思いをしっかり持って挑めば達成できる」という意味を持つのが「一念岩をも通す(読み方:いちねんいわをもとおす)」だ。一念には、ひたすら心に深く思いこむこと、または深く思いこむ心といった意味がある。
思いが深いことにかけて、「女の一念岩をも通す」や「虚仮の一念岩をも通す」といった言い回しもされる。前者は女の執念が深いことのたとえであり、後者は才能がなくても努力し続ければ成し遂げられるといった意味を持つ。あわせて覚えておこう。
■ 成り立ち・由来
「一念岩をも通す」のことわざは、古代中国の楚で起こった出来事に由来している。とある人物が虎だと思い矢を放ったが、その正体は石で、石に矢が突き刺さっていたという。実際のところ、石に矢が通るということは考えにくい。このことから、強い思いがあればどんなことも成し遂げられるたとえとして使われるようになったというのが成り立ちだ。
ちなみに、古代中国に伝わる『韓詩外伝』や『史記―李広伝』のほか、1706年に作られた浮世草子の『風流曲三味線』にも一文が見られる。古くより伝わることわざと分かるだろう。
「一念岩をも通す」の使い方
「一念岩をも通す」は、困難を乗り越える・物事を達成するシーンに当てはめられることわざである。以下では、例文をあげながら使い方を2パターン紹介していく。
■「一念岩をも通す」の例文(1)
努力の末に困難を乗り越えたことを表す例文は、以下の通り。
・彼女は並々ならぬ努力を続け、むずかしいと思われていた志望校に合格した。これこそ、一年岩をも通すを体現している。
・一年岩をも通すというから、先輩より評価される機会が訪れることを信じ、今まで諦めずに来た。そしたら本当に達成できたのだから、ことわざも捨てたもんじゃない。
一つ目は自分よりレベルが上の志望校の合格、二つ目は先輩を追い抜くといったふうに、努力によって困難と思える物事を達成したことを表している。
■「一念岩をも通す」の例文(2)
強い信念を持ち行動することの大切さを表す例文は、以下の通り。
・自分よりレベルの高い相手だが、戦う前から負けを認めるのはどうかとおもう。一年岩をも通すというし、できるだけのことはやってみよう。
・一念岩をも通すというが、意思だけ強ければ良いわけではない。きちんと行動しないことには、願う通りにはならないだろう。
上記はいずれも、物事の達成に対する教訓として「一念岩をも通す」を使った例文だ。物事を成し遂げるためには、強い思いと行動が必要ということを伝えている。二つ目は、いくら強い思いがあっても、行動なしには達成できないという戒めの意味も込めた例文だ。
「一念岩をも通す」の類義語
強い思いや努力で物事を達成することを意味することわざは、「一念岩をも通す」のほかにもある。以下では、2つの類義語を紹介していく。
■「雨垂れ石を穿つ」
「雨垂れ石を穿つ(読み方:あまだれいしをうがつ)」とは、「少しの努力でも、続ければ最後には成功する」といった意味を持つことわざだ。漢書の『枚乗伝』に由来し、雨垂れでも繰り返されると石に穴を開けられることを表現している。「点滴石を穿つ」は同義語だ。
■「石に立つ矢」
「一念岩をも通す」と同様、虎と見誤って矢で石を射ったことに由来するのが「石に立つ矢(読み方:いしにたつや)」だ。意味も同じで、どんなことも思いを込めて行えば成し遂げられることを指している。ぜひセットで覚えておこう。
「一念岩をも通す」の意味を刻み、諦めない心を
「一念岩をも通す」は、古代中国で虎と見間違えて矢を射ったところ、石に突き刺さったことに由来することわざと分かった。通常のところ石に矢が刺さるとは考えにくいことから、困難と思えることも努力によって成し遂げられるといった意味を持つ。
「女の一念岩をも通す」や「虚仮の一念岩をも通す」といった言い回しもあることから、いかに人の気持ちや心が常識を超えてくるのかが分かる。無理と尻尾を巻いて逃げそうなときも、このことわざを胸に刻んでいると立ち向かっていこうと思えるかもしれない。
文/shiro