部下に与えるべき正しいストレスと聞いて驚く方も多いのではないか思います。昨今では少しでも部下にストレスをかけようものならハラスメント扱いされ、部下が精神的に病んでしまって会社にこなくなるというようなことが稀な話ではなくなってしまっています。しかしながら、成長にストレスは不可欠です。ストレスについての理解を深め、部下とストレスの扱い方が上手になれば、これ読んでいるあなた自身もストレスから解放されるでしょう。
そもそもストレスとは何か?
ストレスとは一般的に外部からの刺激による負担と定義づけられ、英語では緊張や負荷とも言われます。ストレスはどうしようもない状況になればなるほど強くなります。定期券を落としたなどであれば軽度であり短期的で、家族が急死したなどであれば重度で長期的になるケースが多いでしょう。しかしながら、重度のストレスを多く抱える人はみなストレスに押しつぶされてうつ病になってしまうのでしょうか。逆に、重度のストレスを多く経験している人が鉄人のようになるタイプも意外といるのではないでしょうか。このようなことからストレス自体は悪ではなく、ストレスの原因となる事象の捉え方だと考えています。
正しいストレス
ストレスは「無くてはならないストレス(正しいストレス)」と「無い方が良いストレス(正しくないストレス)」の2つに分けることができます。前者の「無くてはならないストレス」は目標を達成するうえで抱えるストレスでありいわゆる「プレッシャー」というものです。競争社会においては必要な要素、前提であるため、このことが抜けてしまっている場合は前提の教育が必要になります。「競争したくない」という人もいるかもしれませんが、会社や仕事、あるいは異性の取り合いが起きなかったら世の中はどうなるでしょうか?会社の成長も人類の繫栄もすべて比較と競争という前提の上に成り立っているのです。「競争などせずにそこそこの仕事でそこそこの給料でよい」と言っている人もいずれはAIと競争せざるを得ない状況になっていくことでしょう。無くてはならないストレスから逃げることは人間の本質から逃げていると言っても過言ではありません。こういったことがわかっていない部下にはしっかりと教育したうえで、無くてはならないストレスを与えてあげましょう。
正しくないストレス
一方で「無い方が良いストレス」ですが、これは人間関係と時間のロスです。職場での人間関係は自分のパフォーマンスを高めることに役立つ場合や、自分の人生における貴重な交友関係に発展する可能性もありますが、例えば、仲間と仕事の後に飲みに行って仕事の愚痴を言い合うなどは不必要な人間関係です。一時的にはストレス解消になっているように見えるのですが、一方で自分自身にその状況をさらに強く刷り込んでいるのと同時に根本的にその問題を解消しようとしていないことを認めてしまっているからです。愚痴っている時間があればそれを解消するために考え行動するか、雨が降っていることに愚痴ることがムダであるように、自分には到底変えられないことであれば愚痴っても無駄だと理解して自分に変えられることに自分の貴重な時間を使う方が賢明だと思います。このような人間関係を上司自ら作り出すのは危険です。
また、人間関係をうまくやらないと社内の仕事が円滑に進められないというのも危険です。人間関係で仕事が回っている組織は強い組織とはいえませんので転職を考えた方が良い可能性もあります。人間関係で仕事が円滑に進められるのは長い期間一緒にいてそれなりの人間関係が築けた(ずっと同じメンバーでやっている)か、人間関係の構築が得意な人たちが集まっている場合がほとんどです。
人間関係にはプラスもあればマイナスの側面もあり、同じ人間関係でも状況によって影響のベクトルが反転する場合もあるので、自分のパフォーマンスを維持向上させるために本当にその人間関係が必要かどうかを見極めることが重要です。
時間のロスとしては“決まっていないことが多い”ことがあげられます。決まり事が少ないと都度疑問が生まれます。「これはどのように申請すればよいのか?」「こういう場合はどうすればよいのか?」などです。「よくわからない」というのは不必要なストレスなので部下のそういった迷っている時間をとにかく削減してあげるために“決めてあげましょう”。
さいごに
成長のための正しいストレスを気持ちよく与えてあげるためにも、正しくないストレスをとにかく与えないことが重要です。部下とのあいだで“成長のため”という目的をしっかりとすり合わせ、もう一度成長に向けた一歩を踏み出して頂けたら幸いです。
文/渡辺健太