組織で働く中で、はじめて部下を持つ瞬間があります。
優秀なプレーヤーだった人がいきなり優秀な上司になれるとは限りません。プレイングマネージャーだったとしても、自分だけが数字を出せばいいというわけではありません。今回の記事では、はじめて部下を持つ立場になった時、気を付けた方がいい3つのことについて解説します。
理想の上司とは
部下にとって「理想の上司」とはどのような上司でしょうか。これは大きく分けて2つの要素があります。
(1) チームを勝利に導くことができる上司
(2) メンバーを成長に導くことができる上司
まずはこの2つの要素について見ていきましょう。
(1) チームを勝利に導くことができる上司とは
チームで仕事をする場合、個人でいくら成果を出したとしても、チームとして成果が出せなければ、チームを続けていくことができません。チームを続けていくことができないということは、仕事で言えば、メンバーに給料が払えなくなること、もっと言えばチームにとっての働く職場がなくなることを意味します。
そうならないよう上司はチームとして成果を出すこと、チームを勝利に導くことが求められます。
メンバーであるうちは、自分の成果を出すことに集中していれば問題なかった環境から、自分が出せる成果だけではチームを勝利に導けない状況に陥ることもあります。
チームとして、今ある戦力を最大限に活用し、チームを勝利に導くことが上司の役割です。
(2) メンバーを成長に導くこと
チームを勝利に導くことができることに加えて、次にメンバーを成長に導くことが出来る上司が理想の上司となります。
上司がいなければ勝てないチームでは、上司がいなくなった瞬間、チームが存続できなくなります。上司が抜けたとしても、メンバーが成長し、新たな上司となることでチームとして存続できる、属人的ではないチームを作ることが上司には求められます。
そのためにも、上司はメンバーを成長させ、自身の代わりとなる次代の上司を作ることも必要です。
また、仮にメンバーが自らのチームを離れたとしても、新たな場所であっても活躍できる部下を育成できている上司がいるとすれば、部下の立場からも、その上司は理想の上司と言えるのではないでしょうか。
この2つの要素を押さえた上で、はじめて部下を持つ人が気をつけたい3つのことを以下のとおりお伝えします。
部下と仲良くなろうと思わない
まず1つ目は、上司は「部下と仲良くなろうと思わない」ということです。
チームを勝利に導く上で、上司はときに、部下に対して「出来ていないことを指摘する」ことが必要となります。
ルールを守ることができない部下、目標が未達成な部下に対して、ネガティブなフィードバックをする機会はどんな上司にも訪れます。
他人にネガティブなフィードバックをすることに抵抗感がある人は多いものです。
はじめて部下を持つと、「部下から好かれる上司」「部下から頼りにされる上司」「部下と気軽に話しができる上司」を目指すあまり、部下と個人的に仲良くしようとしがちです。
「こんなことを言ったら部下に嫌われるのではないか?」
「厳しいことを言ったら、その後、自分の言うことを聞いてくれなくなるのではないか?」
そんなことを考え、部下に対して出来ていないことを指摘できず、個人的に部下と仲良くなることで、部下に動いて貰おうと考える上司は、「仲がいいけれど成果が上がらないチーム」を作ってしまいます。
部下とは仲が悪くなる必要はありませんが、部下に対して「出来ていないことは出来ていないと指摘する」上司にならなければ、チームを勝利に導くことは出来ません。
部下のやり方に口出ししない
次に、はじめて部下を持つ上司が気を付ける点は、「部下のやり方に口出ししない」ということです。
メンバーが成長する上で必要なものは、自ら考え、自ら実行し、出来なかったことを自責で捉えて改善を繰り返していく経験です。
部下を成長に導くため、上司がやるべきことは、部下に明確なゴールを設定し、部下が迷わない環境を作ることです。
しかしながら、部下が失敗することを恐れるあまり、部下のやり方に逐一口を出す上司がいます。
「もっと、こうした方がいいのではないか?」
「自分だったこうするけどな・・・」
部下には失敗させたくない、手取り足取り教えた方が部下の成長は速いはずだ、そのように考え、良かれと思ってする上司のアドバイスが、部下の指示待ち姿勢や部下の他責(上司から言われた通りにやってのに・・・)を産み出してしまいます。
上司は部下に対して明確なゴールを設定し、ゴールの期限が来るまで部下のやり方に口を出さないようにする。
このことで、部下は、プロセスについて自ら考え、実行し、出来なかった場合、自責で捉えることが出来ることで、自らの成長に繋がります。
部下と自分を比べない
そして最後に、はじめて部下を持った上司が気を付ける点は「部下と自分を比べない」ということです。
はじめて部下を持った上司は、部下の能力を自分のプレーヤーとしての能力と比較し推し測りがちです。
「自分だったらもっとできるのに」
「部下はこんなことも出来ないのか」
「なんでこんな当たり前のことも分からないんだ」
このように自分のプレーヤーとしての能力と部下の能力を比べて、出来ない部下に対して苛立ったりしていませんか。
部下の能力は、部下の過去の経験に依存するため、直ぐに変えることは出来ません。
現在の部下の能力を把握し、自身と部下の戦力を綜合して、どうやったらチームを勝利に導けるかを考えることが上司の役割です。。
部下と自分を比べて、部下の能力不足を嘆くのではなく、今ある戦力で、どうやって成果を上げていくか、このような視点に立たなければ上司は、チームを勝利に導き、部下を成長させることはできないでしょう。
また、部下と自分を比べてしまう上司は、出来る部下のことを、自分のポジションを脅かす存在だと捉え、その部下の育成をやらない、という傾向が出ることもあります。
上司の役割は、チームで勝つことです。
この観点で、しっかりと部下の能力を把握し、育成につなげることが必要です。
記事のまとめ
はじめて部下を持つ人が気をつけたい3つのこととして
(1)部下と仲良くなろうとは思わない
(2)部下のやり方に口出ししない
(3)部下と自分を比べない
を上げさせて頂きました。
いずれも、上司が良かれと思ってやってしまうことが、結果として、チームの勝利や部下の成長を遠ざけてしまうこととなります。
はじめて部下を持つ人であっても、まず自身の上司が求めていることは何なのか、自らの役割を把握した上で、その役割を全うすべく動くことが求められます。
はじめて部下を持つあなたの評価者は、上司であって、部下ではありません。
迷った際には、上司に相談しながら、部下が迷わない、働きやすい環境をルールとゴール設定で作って頂ければ何よりです。
文/岩澤雅裕
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