2. 企業が職場環境改善を実施しない主な理由は「経営層の意識が低い」「職場環境改善の実施方法がわからない」
全体の約6割が集団分析を利用した職場環境改善を実施している一方で、実施していない企業も62社(従業員50人未満の企業は除く)あった。これらの企業に自由記入形式で「職場環境改善を実施しない理由」を答えてもらったうち、特に多かったものを図2では紹介している。
最も多かった回答が、企業側(経営層)の意識の低さへの指摘だ。社会全体として「健康経営」の意識が高まりつつあるものの、いまだ浸透しきっていない現状がうかがえる。また、「職場環境改善の実施方法が分からない」「ストレスチェック結果から改善点を見つけられない」など、ストレスチェックや集団分析の活用方法に苦慮している企業も散見された。
3. 全体の6割を超える企業が1on1ミーティングを実施
前述の、職場環境改善の具体的な取り組みを問う設問にも「1on1ミーティングの導入」という回答があることからもわかる通り、産業保健活動の一環として1on1ミーティングを導入する企業が増えてきている。
図3は「定期的な1on1ミーティングの実施状況」の設問に対する回答結果を集計したものだ。
「実施している」「部署ごとに異なる」「管理職のみ実施」を合わせた割合は63%(89社)であり、全体の6割を超える企業が定期的な1on1ミーティングを実施していることがわかった。
コンサルタントによる解説
1. 職場環境改善の重要性
職場環境の改善は、メンタルヘルス不調を未然防止するだけでなく、従業員一人ひとりの持っている能力を最大限に引き出し、社内全体の生産性向上につながります。また、近年は労働人口の減少により、優秀な人材の確保が難しくなっているため、労働環境を整備し、「働きやすさ」を社内外へ発信することの重要性は日々高まっていると言えるでしょう。
近年、企業さまから「集団分析結果を受け取ったが、どう活用すればよいのかわからない」というお声を多くいただいております。まずは、結果を適切に読み解き、経営層や管理職などへストレスチェックの結果をしっかりと説明し、現状を把握することが大切です。
ストレスチェックは、高ストレス者を見つけるだけでなく、疾病休業が起こるリスクや、従業員の心理的な負担を軽減します。また、併せて集団分析を実施することで、部署や年代別のストレス状況や従業員の満足度状況など、職場環境改善のヒントを得ることができます。
2. 1on1ミーティングの有用性とは
1on1ミーティングは、業務の進捗確認や従業員の成長促進・支援、上司と部下の信頼関係を深める目的があり、近年、導入が広がっています。上司と部下の信頼関係構築には、普段のコミュニケーションが必要不可欠ですが、定期的な1on1ミーティングは、部下が悩みを相談できる機会にもなります。こうした上司のサポートはストレスを緩衝する要因になり、メンタルヘルス不調を防止します※1。
1on1ミーティングの導入を検討している企業さまは、上司と部下のコミュニケーション手段の一つとして活用してはいかがでしょうか。また、すでに実施している企業さまも、実施の目的や方法の見直しを行うことで、より高い職場環境改善効果が期待できます。
※1 厚生労働省「こころの健康気づきのヒント集」(2013年)
解説:千葉晶子氏(株式会社ドクタートラスト ストレスチェック研究所 コンサルタント)
「多くの人々に健やかに働いてほしい」という願いからドクタートラストに入社。ストレスチェックの集団分析結果を専門に扱うアナリストとして、累計200万人分のビッグデータから、はたらく人たちの課題をあぶりだしてきた。現在はコンサルタントに転じ、規模や業種を問わず多種多様な企業の職場環境改善施策を支援している。
<調査概要>
期間:2023年11月28日~2024年1月31日
地域:全国
回答数:175人
方法:ドクタートラストメールマガジン「ドクタートラストニュース」にてアンケートフォームURLを送信
出典元:株式会社ドクタートラスト
構成/こじへい