ニッポンの下駄は世界を席巻するのか?
日本の伝統とも言える「下駄」から始まったリゲッタ。古からの魅力は世界でも受け入れられるのか?勝算を聞いた。
「日本製神話や品質神話はまだ残っていると思いますが、作り込みの細かさや技術はもう海外に負けていると思っています。靴に使用する素材も靴作りの機械の性能などすべて中国やベトナムの方がレベルが高いです」
「なので、日本の靴ならではの魅力…というのは相当に厳しいと思います。我々日本の靴メーカーはビルケンシュトックのような500年の歴史を紡ぐプロダクトも、クロックスのようなイノベーションも起こせていません。僕の場合はビルケンシュトックとクロックス、そこに日本の下駄の機能性を足して分解したようなイメージで靴づくりをしてきました」
「庶民的なところでの愛用と言うか、「隣のお兄ちゃんが考えた靴」みたいなイメージで、狭い世界でも理解してくれている人が深く愛してくれる場所を見つけていくべきだと考えています」
高本代表はこうも語っていた。「目指すは日本で一番面白い靴屋さん」。その真意も聞きたい。
「社員には、商品のことだけでなく理念に関わることならイベントや新しい取り組みでもなんでもやり切ってほしいと思っています。必要最低限のことを守っていれば無謀といわれるチャレンジでも認められる会社でありたい」
「弊社が行なっている「中期経営計画を演劇でやる」、「区民ホールをネーミングライツでリゲッタIKUNOホールにする」などはそのヒントになる気がしています。靴が好きじゃなくていいんです。靴を通じて面白いことができる会社、やっている会社という認識を持ってもらえるようになればいい」
面白い人がたくさん集まれば利益を追うことも面白がれるし、危機に直面しても面白く感じられるかもしれない。高本さんが目指す「面白い靴屋」の真意はそこにある。
――靴業界で生き残るために大事なことは?
「それは、靴業界で生き残ろうとしないことかもしれません。僕は足にまつわる業界、地続きの業界で販路を増やしてきました。かつては靴業界から飛び出して通信販売、その後はアパレルやスポーツ、雑貨店などヤドカリのようにやってきましたが、現在はドラッグストアやホームセンター、ワークマン、空港など販路が広がっています。これらの納品先は10年前では絶対に販路目標に入っていませんでした」
「関わる業界が広がると新しい発見や刺激になり、創作内容や見せ方も変わってきます。なので同じ場所に居続けないことがこれから大事なことかもしれません」
「コロナ禍が過ぎたものの、未だ靴の販売はコロナ以前に戻っていません。だからこそ今まで以上に面白くなることを試みていきたいなと考えています。今は大阪万博や世界展開を広げられる商品開発に注力したいです」
取材協力
株式会社 リゲッタ
文/太田ポーシャ