「ギャンブルに依存する可能性の高い人」とは?
富とお金のメンタルトレーナー 三凛 さとし
■学術的にギャンブル依存症は、近年、遺伝の関係性が指摘されている
最近、ドジャースの大谷翔平選手の元通訳・水原一平氏のギャンブル依存問題が世間を騒がせています。そこで、どんな人がギャンブルに依存する可能性が高いのかを調査し、考察しました。ギャンブル等依存症とは、ギャンブル等にのめり込んでコントロールができなくなる精神疾患の一つで、人口の3.6%がとされています。
学術的にギャンブル依存症は、近年、遺伝の関係性が指摘されています。 アメリカのミズーリ大学の研究によると、家系にギャンブル依存症患者がいる場合、19.0%がギャンブル依存症予備軍。いない場合の発症率は5.0%なので、家族歴はギャンブル依存症を4倍にする、という結果が出ています。
今回の調査では、ギャンブルに依存したことがある人のうち、28.5%が家族もギャンブルに依存したことがあると答えたのに対して、ギャンブルに依存したことがない人の家族のギャンブル依存率は14.1%でした。このことからも、ミズーリ大学の研究を裏付ける結果が出ました。
■なぜ年収が高い人の方がハマる傾向があるのか
ギャンブルに依存する方の年収に関しては、 100万〜200万円が最も低く、そこから年収が上がっていくにつれて依存する確率も上がっていきます。
しかも、軽い依存を含めると、年収600万~1000万未満と比較的裕福な層では32.0%、1,000万円以上では31.6%が現在・過去含めて依存した経験があると答えています。つまり、三人に一人は依存経験があったということになり、これはかなり高い水準ではないでしょうか。
年収が高い人の方がハマる傾向があるということは、次のような原因が考えられます。
・そもそもギャンブルに使えるだけの経済的余裕がある
・責任あるポジションからくるストレスやプレッシャーを解消するため
・報酬感の追求 高収入を得ることに成功した人は、報酬感を追求する傾向がある。結果、ギャンブルでリスクを取るスリルと成功した時の報酬感にハマる。
実は私も昔、FXなど「トレード」という名の投機(ギャンブル)にハマってしまい、大きな損失を出してしまった過去があります。
にもかかわらず、そこから抜け出せたのは、仕事含め打ち込めるものや没頭できるものが他に見つかったからということと、大切な仲間や家族ができたなど人間関係が充実したことが大きかったです。
「遺伝だから」と個人的な経験則で言えば、遺伝以外に何かギャンブル依存になる要因があるとするならば、ストレスの多い生活、ギスギスした人間関係や孤独、そしてギャンブル以外に趣味や没頭できるものがないことだと思います。
水原一平さんに関しても、遺伝が原因である可能性と、ストレスやプレッシャーの多い環境に長期間身を置き続けているということがギャンブル依存に繋がった可能性が高いと言えます。
しかし、ギャンブル依存症には特効薬はないと言われていて、認知行動療法、モチベーション向上インタビュー、薬物療法、家族療法、生活スキルトレーニングなど、さまざまな治療法は開発されていますがどれも絶対ではありません。
■依存症治療において絶対的に必要なものが「自覚」
また、ギャンブルを止められるきっかけも人それぞれで千差万別なのです。
但し、依存症治療において絶対的に必要なものが一点あると言われていています。それは「自覚」です。
今回の調査でも、おそらく本当は依存しているのに「自分はまだ依存していない」と思いたいため、「依存なし」と回答した人もいるのではないかと推測しています。
しかし、自覚がなければ自分の行動を改めることもできませんし、専門機関で治療が必要かどうか正しい判断もできません。
そういう意味では、水原さんは騒動が発覚する直前にドジャースの選手たちの前で、自分は依存症なんだと告白しているようなので、十分に自覚されていることかとお見受けします。
大谷選手関連のこと、しかも被害総額がかなり巨額ということもあり、水原さんに対しては世の中からの批判の声も当然多い状況ではありますが、遺伝が大きな要因だということも最近は解明されてきているので、ご本人には適切な治療を受けることに専念していただきたいです。
また、今同じようにギャンブルに依存してしまっている人も、軽度な場合は、以前の私のように、ギャンブル以外で集中したり没頭できたりするものを見つけ、人生を充実させられるよう今日から意識して生活していただきたいです。重度な場合は、すぐにでも専門機関にご相談していただきたいと思います。
遺伝が原因の多くを占めるということは、ギャンブル依存症も他の多くの遺伝性疾患と同じように恥ずかしいものではなく、仕方のないものです。
水原さんの事件をきっかけに、日本でも依存症への偏見がなくなり、治療して社会復帰する人が増えれば、日本社会全体にとってもプラスになります。
今回の調査を通して、まずは一人一人が依存症について正しい認識を持つことが大切なんだと、改めて認識することになりました。
調査概要
調査期間/2024年4月1日
調査手法/インターネット調査
調査対象/20歳以上80歳未満の男女全国
有効回答者数/2791人(男性:1374人、女性:1417人)
調査機関/Freeasy
出典/合同会社serendipity 調べ
関連情報
http://sanrinsatoshi.com/
構成/清水眞希
やめたいけどやめられない!ギャンブル依存から抜け出す「エモーションシフト」のすすめ
誰もが何かしら、『やめたい』と思っているのになかなか『やめられない』悪習慣を持っているもの。その悪習慣をゾンビ習慣と呼び、やみつきさせる脳の仕組みを解明、「エモーションシフト」という新メソッドを用いて、「今度こそ」やめられるコツとワザをわかりやすく解説した新刊が『「やめられない」を「やめる」本 -脱・依存脳-』が話題だ。
『「やめられない」を「やめる」本 -脱・依存脳-』
著/山下あきこ(脳神経内科専門医)
自ら実体験した「やめられないをやめる」コツ
著者の山下あきこさんは、25年に渡り、脳神経内科の専門医としてさまざま疾病の診療にあたってきた。扱う疾病や症状は主に脳梗塞や認知症、頭痛、めまい、しびれなど。そして、その多くが、飲酒や喫煙、夜ふかしなど、「やめたいのにやめられない」悪しき生活習慣が原因になっているという。
例えばお酒の飲み過ぎで手足のしびれを起こしたり、食べ過ぎのせい糖尿病になったり、夜あかしが続いて頭痛やめまいを起こしたり……。そうした悪習慣や依存行動が病気をつくっているので、まずはその依存を解決することが、病気の予防や根本的治療になる、というのだ。
「今日からタバコをやめます!」と宣言したのに、その夕方にはタバコを買いに行く。「一週間お酒を飲まない」と決意したのに、3日後にはビールが冷蔵庫に並んでいる……。あなたの周りにそんな人はいないだろうか。実は山下さん自身も10年ほど前は同じだった。
「ところがある時、ひょんなことから禁煙に成功することができたんです。その成功がきっかけとなり次はお酒をやめました。さらにスナックやスイーツを食べる頻度もかなり減りました。さらにさらに早起きが苦手だった私が、毎朝5時に起きるようになったんです。もちろん、あっさり到達できたというわけではありません。とはいえ、ひたすら我慢と根性で頑張ったというわけでありません。私は最初の禁煙で「やめるコツ」を掴んだから、『やめられない』を『やめる』ことができたのです」(山下さん)
こうした自らの体験に加え、豊富な診療経験から得た知見とエビデンスデータを交え、具体的な克服術を指南するのが本書。本書では一度習慣になるとその行動について深く考えず、ただただやり続ける、健康を害しても人間関係が破綻してもやり続けてしまうこの悪習慣を「ゾンビ習慣」と呼び、ゾンビ習慣を撃退するテクニックを実際の診療事例をもとにした10人の依存ストーリーと共にわかりやすく解説する。
「今年こそ、やめたい!」「今年こそ、変わりたい」と思っている方におすすめの1冊だ。先日、山下さんと人気VTuber、犯罪学教室のかなえ先生との対談が行なわれたので、こちらも参考にしていただきたい。
ゾンビ習慣から「今度こそ」抜けだすノウハウが満載
■CONTENTS
◆第1章 人をだめにするやめられない習慣=ゾンビ習慣とは
心と体を蝕む「ゾンビ習慣」/依存の種類 その(1)物質依存/物質依存の代表例(1)〈アルコール〉/(2)〈ニコチン〉/(3)〈甘味料・グルテン・油脂〉/依存の種類 その(2)プロセス依存
◆第2章 ゾンビ習慣「やめたいのにやめられない」のはなぜ?
ゾンビ習慣に支配される脳の仕組み/人は「幸福貯金」がなくなると快楽で借金をする/悪習慣にはドーパミンが関係している/感情が習慣を作る/ゾンビ習慣にハマる人、ハマらない人
◆第3章 どうしたらゾンビ習慣から抜け出せる?
脳ホルモンを利用/悪習慣を良い習慣に置き換える/「エモーションシフト」の新常識と実践
◆第4章 「やめたい習慣」別 依存しにくい脳の作り方と行動例
ゾンビ習慣にかわる新しい習慣 (1)脱・物質依存 (2)プロセス依存 (3)すべての依存
◆第5章 ゾンビ習慣=「依存」脱却で待ち受ける未来
新しい習慣を身につけて自分を好きになる/自分が変わると周りも変わる/新しい習慣を定着させる技術
◆COLUMN Dr.あきこの依存診察室 様々な依存に悩む10人のストーリー
(著者プロフィール)
PROFILE
医学博士、内科医、脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医
山下あきこさん
1974年佐賀県生まれ。1999年川崎医科大学卒業、福岡大学病院脳神経内科を経て、米フロリダ州メイヨークリニック留学。佐賀県如水会今村病院勤務。人々が健康づくりを楽しむ社会を目指し、2016年、(株)マインドフルヘルスを設立。アンチエイジング医学、脳科学、マインドフルネス、コーチングを取り入れたセミナー、企業研修、健康コンサルティング等を行う。著書に『やせる呼吸』(二見書房)、『こうすれば、夜中に目覚めずぐっすり眠れる』(共栄書房)、『死ぬまで若々しく元気に生きるための賢い食べ方』(あさ出版)、『悪習慣の罠』(扶桑社)。