入社した時にはやる気でみなぎっていた人が、徐々にやる気をなくしていく……。それは、リーダーや周囲の些細な言動が原因かもしれません。
社員のモチベーションが低下する職場風土の改善には、実は「関係密度」がカギになるのだそう。この「関係密度」とは何なのか、そして高めるポイントとは?
700を超える企業の職場風土改善に関わってきた中村英泰さんの著書『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』から一部を抜粋・編集し、〝社員のやる気を奪う間違った職場づくり〟を打破するヒントを紹介します。
大切なのは「ワークライフバランス」ではなく「ライフコネクト」
「仕事にプライベートを持ち込むな」
こんな言葉が、昭和の時代には、よく聞かれました。
その後、平成になってからも「オンとオフ」、「ワークライフバランス」など、仕事(ワーク)と人生(ライフ)は別物で、分けるのが当たり前とされてきました。
しかし、今や、仕事と人生を別物ととらえるのではなく、仕事が人生の一部としてインクルージョンされ、仕事が生活と密接に結びついているいうなれば「ライフコネクト」の時代に向かいつつあります。
そうしたなか、『LIFE SHIFT2』で、リンダ・グラットン氏は「仕事に対するトンネリング」と題して、次のようなリスクを訴えています。
「薬局で鎮痛剤を買えば、1日に何錠飲めばいいか箱に明記されている。ところが収入を得るための仕事に関して、どれくらい働けば最大限の効用が得られるのか、明らかになっていない」
いわば、職業人生が長期化するなかで、どんな仕事を、いつまで、どのように働けばいいのか、誰もがわからない状態なのです。
工業化以前、農業が中心の社会では、人は、住んでいる場所と職場が近い、いわゆる「職住近接=生活の一部」の状態にありました。
朝起きて畑に出て、日が暮れると家内で作業を行うイメージです。
その後、工業化が進展するにつれ、生産のための工業地帯が造成され、労働集約が進み、住んでいる場所と職場が離れる「職住分離」の状況が生まれます。
私たちが抱いている「オンとオフ」、「ワークライフバランス」という働くイメージがここで確立されたのです。
そして、近年になって、デジタル化の進展や働き方改革、さらに新型コロナ感染症の拡大の影響もあり、人々の働き方は大きく様変わりしてきました。
結果、長く定着してきた「職住分離」から再び「職住近接」、さらにテレワークのように「職住同一」や「職遊同一」のワーケーションなども、私たちがどのように働きたいかの意志によって選択できるようになりつつあります。
まさに、『LIFE SHIFT2』のメッセージである「あなたの将来の選択肢と老い方は、いま、どう行動するかで決まる」時代に入ったといえます。
人が情報や仕事に向かう時代から、情報や仕事が人に向かう時代に変化したのです。
だからこそ、ワークライフバランスということではなく、仕事を人生の一部にインクルージョンしたうえで、キャリアというものを考えていかなければなりません。
そして職場を、社員のライフ(人生)にコネクト(接続)する場所へと変えていくこと、仕事を通じて享受できる可能性を最大化することに取り組んでいく場にすることが求められています。
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いかがだったでしょうか?
社員のやる気を左右する「関係密度」が高くなると、「社員の不本意な離職率が低下する」「コミュニケーションの齟齬が減る」「他責志向が、自己課題自己解決型に向かう」などのメリットがあるそうです。
部下や後輩との接し方に悩んでいる人は、心地良い職場づくりのヒントが詰まった一冊『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』をぜひ書店でチェックしてみてください。
社員がやる気をなくす瞬間
間違いだらけの職場づくり
発行所/株式会社アスコム
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著者/中村英泰(アスコム)
株式会社職場風土づくり代表
ライフシフト大学 特任講師
My 3rd PLACE 代表
1976年生まれ。東海大学中退後、人材サービス会社に勤務したのち、働くことを通じて役に立っていることが実感できる職場風土を創るために起業し、法人設立。年間100の研修や講演に登壇する実務家キャリアコンサルタント。
監修/田中研之輔