入社した時にはやる気でみなぎっていた人が、徐々にやる気をなくしていく……。それは、リーダーや周囲の些細な言動が原因かもしれません。
社員のモチベーションが低下する職場風土の改善には、実は「関係密度」がカギになるのだそう。この「関係密度」とは何なのか、そして高めるポイントとは?
700を超える企業の職場風土改善に関わってきた中村英泰さんの著書『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』から一部を抜粋・編集し、〝社員のやる気を奪う間違った職場づくり〟を打破するヒントを紹介します。
ムダな出費を生む、関係性の齟齬を解消する
効率化が進む今の時代、DX化で効率のよい働き方に向けて動きはじめていますが、一方では、関係性の齟齬からさまざまな不利益が生じています。
経済的な損失も、その例外ではありません。
私の顧客であるE社も、以前はそのような状況に陥っていました。
E社は、製造業を営んでおり、従業員数は120人ほど。特殊な技術を持っていることが高く評価され、大手メーカーや海外の企業からも引く手あまたで、順調に売上を伸ばしていました。ただ、問題がないわけではありませんでした。
売上が伸びる一方で、利益があまり上がっていなかったのです。
右肩上がりで増える受注に応じるため、E社は組織を拡大し、各部署は大きくなり独立していきました。
その結果、部署間の物理的な距離が広がって、人の行き来が少なくなり、心理的な距離も広がったため、関係は疎遠にならざるを得なくなりました。
営業部門から送られてくる受注内容の意志を十分に確認することができないまま、設計部門が設計をする。その設計に従って、製造部門が製造をはじめるものの、どうもつじつまが合わない。
ここでようやく、営業、設計、製造の各部門の担当者が一堂に会してミーティングを開こうとするが、スケジュール調整がうまくいかず、そうこうしているうちに納期はどんどん迫ってくる……。
なんとか納期には間に合わせても、通常のプロセスを経ていないために、納品後もクレームや不良が発生しやすくなります。
そうなると、その都度、人や資材を使わなければなりません。
それが当初の見込みより原価率を引き上げることにつながり、利益を押し下げていたのです。
E社の全社員、1人ひとりと面談していくなかで、私はこの経緯を知ることになりました。
そして面談の最中に、他部署に責任を押しつけるような発言を数多く耳にしたのです。
また、それ以外にも、会社の上層部も把握していた問題として、高い離職率、長時間労働などがありました。
こうした問題を抽出し、会社の上層部と話しあうなかで、E社の最大の課題は、働く人たちの関係性が弱まっているため、職場風土が悪化していることだと、私たちは考えました。
そこで、部署間の垣根を取り払ったり、ベテラン社員が若手社員の研修をしたりするなど、とにかく従業員同士のコミュニケーションが活発になるようにして、その関係性を強化することに努めたのです。
その甲斐あって、今では、E社の職場風土は大きく改善されました。
会社に一歩足を踏み入れただけでその雰囲気のよさが伝わり、今いるこの場所をみんなでよくしていこうというムードに包まれています。
会社を辞める人もほとんどおらず、売上に比例した利益もきちんと出るようになりました。
働く人の関係性の齟齬が企業から失わせるもの、そしてそれが改善されたときに企業が得られるものの大きさを、このE社の事例がよく教えてくれます。
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いかがだったでしょうか?
社員のやる気を左右する「関係密度」が高くなると、「社員の不本意な離職率が低下する」「コミュニケーションの齟齬が減る」「他責志向が、自己課題自己解決型に向かう」などのメリットがあるそうです。
部下や後輩との接し方に悩んでいる人は、心地良い職場づくりのヒントが詰まった一冊『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』をぜひ書店でチェックしてみてください。
社員がやる気をなくす瞬間
間違いだらけの職場づくり
発行所/株式会社アスコム
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著者/中村英泰(アスコム)
株式会社職場風土づくり代表
ライフシフト大学 特任講師
My 3rd PLACE 代表
1976年生まれ。東海大学中退後、人材サービス会社に勤務したのち、働くことを通じて役に立っていることが実感できる職場風土を創るために起業し、法人設立。年間100の研修や講演に登壇する実務家キャリアコンサルタント。
監修/田中研之輔