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一億総他人社会に生き残る「関係性がいい組織」の作り方

2024.06.17

入社した時にはやる気でみなぎっていた人が、徐々にやる気をなくしていく……。それは、リーダーや周囲の些細な言動が原因かもしれません。

社員のモチベーションが低下する職場風土の改善には、実は「関係密度」がカギになるのだそう。この「関係密度」とは何なのか、そして高めるポイントとは?

700を超える企業の職場風土改善に関わってきた中村英泰さんの著書『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』から一部を抜粋・編集し、〝社員のやる気を奪う間違った職場づくり〟を打破するヒントを紹介します。

一億総他人社会だから、関係性がいい組織が生き残る

ここまで、関係性の改善、職場風土を変化させること、「関係密度」について、お伝えしてきました。

ここで、日常の場面を思い起こしてみましょう。

・電車に乗っているあなたは、何人と目が合いますか
・カフェに入っているあなたは、店員以外の何人と目が合いますか
・職場で1日過ごしているあなたは、いつ、何人と目が合いますか
・1日を通じて何人と目を合わせましたか?

古くから、「目は口ほどに物を言う」という言葉があります。

「言葉に出さなくても、目で相手と意思疎通を図ることはできる」「口で言わなくても、目で心情を伝えることができる」という意味です。

人は、生まれたばかりの赤ちゃんの頃から、生きていくための学習をはじめます。

それは、「ほほえみ返し」と呼ばれていますが、赤ちゃんにとって「ほほ笑む」ことの意味はわからずとも、周りの大人が行う行為の重要性を本能的に受けて映し、自分でできるようになっていくのです。

最初に学ぶのは「関係性をつなぐ」ことの重要性と、そのために欠かせないファーストアプローチである「表情」なのです。

ここに、ヒューマンモーメント(本来、人と人が接点を持つことの意味、人間らしいかかわりあい)があるのです。

それが今、少しずつ崩れてきています。

じわりじわりと水が染み入るように、日常にデジタルが浸透しています。

そのことによって「生活必需品を買うにも」「なにを買うのか情報を得るにも」「購入するために移動するにも」「週末を、観光地で過ごすにも」、数多くの恩恵を受けています。

そして、今やデジタルにアクセスするための端末、スマートフォンがない生活は、想像することもできないでしょう。

その一方で、私たちがゆっくりと時間をかけて築いてきた、人間社会の根が崩れてきているのを感じます。

他人同士が乗りあう電車のなかで「つながり損ねる」ことによる損失はそれほど多くないかもしれません。

ところが、同じ職場で同じ仕事をしていても、ほかの社員とは会話をすることはなく、デジタルとの「0と1」の会話だけで、気づくと半日、時には1日を終えてしまうこともあるのです。

企業は巨大な箱で、流れてくる情報を次に流すためのハブのような仕事。デジタル化がさらに進んだとき、私たちは……職場でいったいなにをしているのでしょう。

私たちがデータをつないでいるのか、データが私たちをつないでいるのか、もはやわからなくなってきます。

そしてついには、コロナ禍でテレワーク(分離作業)が進むことにより、物理的接触が失われました。

接触がなくなったことで、「企業とはなにか」「仕事とはなにか」という答えが見出せなくなり、自身が帰属する場所や意識が持てず「自分がなにか」わからなくなってしまう。今、アイデンティティ崩壊の危機に直面しているのです。

事実、外部面談先では、こうした相談内容が増えています。

自分でも自分の存在目的のわからない社員が、他人を理解すること、他人に理解してもらうことはできず、一層「職場は仕事をする場」としての輪郭を強めています。

「一億総他人社会だから、関係性がいい組織が生き残る」

この項目のタイトル通り、社会はデジタル化とともに、望めば人とかかわることなく、半径30メートルの世界で人生を終えることができるようになりました。

企業は、組織はどうでしょう。

私たちには、人と人が「関係性をつなぐ」ことと、「関係性を分離」することのどちらを選択するかの決断が、委ねられています。

■社員の「やる気」を育む要素

では、どうしたら人は、「やる気」を出せるのでしょうか。

第1章でも物的側面と人的側面という言葉で語りましたが、とても重要なことなので、もう一度、違った観点から話をさせてください。

まずは、そのメカニズムから確認していきましょう。

人のやる気=モチベーションを出すための要因を、心理学においては動機付けといいます。

その動機付けには、「外発的動機付け」(物的側面)と「内発的動機付け」(人的側面)の2種類があります。

「外発的動機付け」は、仕事において、企業側が設定した職位や報酬を得ようとして、わき上がるものです。

「外発的動機付け」の代表格である昇格や報酬、希望する部署・地域への異動などの物理的報酬は、企業の規模、財力によって限界があります。

そして、外発的動機付けに偏った考えを組織内に植え付けてしまうと、給与を上げ続けた先、企業の賃金制度上支払える限界に達したときに危機が訪れます。

本人が外発的動機付けを習慣化していた場合には、「もっと給料がほしい」「なぜ、上がらないのか」「俺は評価されていないのか」などと、状況によっては積極的転職の後押しをしたり、社員の不満を醸成する機会をつくったりすることにもなります。

他方の「内発的動機付け」とは、内面から湧き起こる、個人の興味や関心、そこから生まれるやりがいなどのことで、企業側からもたらされるものではありません。

つまり個人に起因するがゆえに、自己コントロールすることも可能なものです。

たとえば、ラーメンが好きな人が、「全国の有名ラーメン店の食べ歩きを楽しんでいる行為」は、内発的動機付けにもとづいています。

「仕事でレシピ開発を担当することとなり、よいレシピを開発することが、来年の昇格に影響するため、競合店の市場調査をする行為」は、逆に外発的動機付けにもとづいているというわけです。

どちらも重要な「やる気」を引き起こす動機付けには違いありません。

どちらかに優劣があるわけではなく、大切なのはバランスです。

あらためて、外発的動機付けの場合を考えていきます。

そこで得られる報酬そのもの(外的に設定されたこと)が目的となるため、「〇〇が得られるなら□□」と、どうしてもトレードオフの心理状態に陥りがちです。

内発的動機付けのほうは、自分の行動そのもの(自身の将来の成功や成長につながること)が目的なので、仕事の成果を出そうと、必要とされる以上のことに、主体的に取り組んでいく可能性が高くなります。

■外発的動機付けに頼る企業

ただ、実際に企業現場で話をうかがっていると、「やる気に働きかける要因」を外発的動機付けに頼りすぎている企業が圧倒的多数派です。

なぜでしょう?

1つには、外発的動機付けはシステムや制度として一定期間で一斉に、展開することができるからです。

そして、もう1つの理由としては、過度の労力やソーシャル・モーメントスキル(本来、人と人が仕事をする上で欠かせない接点を思考しながら取り組むスキル)を必要としないからだといえます。

要するに、一見ラクなのです。

しかし、実際には次のような面倒事を抱え込む可能性があります。

・やる気を創出し続けるため、常に目新しいシステムや制度に組み替える必要がある
・多くの社員が「企業がなんとかしてくれる」という思考から抜け出せなくなる
・自らの信念にもとづいた目標の設定、将来展望が描けなくなる
・仕組みや制度で人の満足は高まらないとわかっているが、方針転換できなくなる

若年層に限らず、シニア層以上の社員にはトレードオフや、他責思考から抜け出して大胆にイノベーションに取り組んでほしいが、なかなか変わらない。

本格的に「内発的動機付けを中核にしたやる気のサイクルが回る体制づくり」に取り組まなければ、全員が指示待ちの作業員になってしまう……と嘆きの声が聞こえてきます。

内発的動機付けを促す要素について、心理学者で自己決定理論を提唱したデシ氏とリチャード・Mライアン氏は、次の3つを持つことが大切だと述べています。

・自分はこれができるという「有能感」
・自分自身の計画に沿って目的に向けて行動しているという「自律性」
・同じ目標をめざす仲間とのコミュニケーションや刺激をしあう「関係性」

さらに、これら3つについて、組織と個人のように固有の目的が共有されている関係性において優れたネットワークを築いていることが、よりよい有能感、自律性を育んでいくことを示唆しています。

以上のことからも、「やる気」を高く保つにために欠かせない内発的動機付けは、職場の関係性を高めていくことでもたらされるのだといえそうです。

職場から、静かなる退職者を生み出さないためにも、「当社は働きづらい」などというネガティブな文化が形成されないためにも、職場において周囲との関係性を高められるような取り組みが重要です。

☆ ☆ ☆

いかがだったでしょうか?

社員のやる気を左右する「関係密度」が高くなると、「社員の不本意な離職率が低下する」「コミュニケーションの齟齬が減る」「他責志向が、自己課題自己解決型に向かう」などのメリットがあるそうです。

部下や後輩との接し方に悩んでいる人は、心地良い職場づくりのヒントが詰まった一冊『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』をぜひ書店でチェックしてみてください。

社員がやる気をなくす瞬間
間違いだらけの職場づくり
発行所/株式会社アスコム
Amazonで購入する
楽天ブックスで購入する

著者/中村英泰(アスコム)
株式会社職場風土づくり代表
ライフシフト大学 特任講師
My 3rd PLACE 代表
1976年生まれ。東海大学中退後、人材サービス会社に勤務したのち、働くことを通じて役に立っていることが実感できる職場風土を創るために起業し、法人設立。年間100の研修や講演に登壇する実務家キャリアコンサルタント。

監修/田中研之輔

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