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管理職ならおさえておきたい「キャリア観」と「関係密度」の関係性

2024.05.14

入社した時にはやる気でみなぎっていた人が、徐々にやる気をなくしていく……。それは、リーダーや周囲の些細な言動が原因かもしれません。

社員のモチベーションが低下する職場風土の改善には、実は「関係密度」がカギになるのだそう。この「関係密度」とは何なのか、そして高めるポイントとは?

700を超える企業の職場風土改善に関わってきた中村英泰さんの著書『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』から一部を抜粋・編集し、〝社員のやる気を奪う間違った職場づくり〟を打破するヒントを紹介します。

「キャリア観」は「関係密度」を高めるための必需品

まず次の1on1面談におけるやり取りを読んでください。

Eは、入社2年目の若手社員です。FはEの直属の上司です。

F「今日は、相談したいことがあるって、なんだったかな」
E「はい、この会社では続けていく自信がないんです」
F「自信がない、だけど目標も達成しているし、評価も高いよ」
E「そうです、仕事には問題がないです。順調だと思っています」
F「 だったら、大丈夫だよ。取り越し苦労だな。なにか、不満があるのか。嫌なことがあるのかな」
E 「いや、そうじゃないんです」
F「だったら、なんだろう。僕から見るとなにも問題ないよ」

いかがでしたか?

この1on1面談において上司Fは「問題ない」と結論を出しています。

はたして部下Eは自身の「相談したいこと」を解決できたのでしょうか。

昔から、上司がかかわらなくてはならない部下の課題には、対象が明確で、どんどん解決していく「物理的課題」と対象は抽象的で、解決が難しいのでゆっくりと適応していくしかない「適応課題」との2つがあります。

先の事例も、上司Fが向き合わなければならい部下Eの課題は、キャリアに関する適応課題です。

それに気づいていない上司Fは、物理的課題に向かうがごとく、猛烈に解決しようとしています。

上司の不用意な「問題ないよ、順調だよ」というかけ声、根拠のない「がんばれば大丈夫」という励まし、無責任な「辞める必要ない」という結論。これらは、適応課題の代表格であるキャリアの問題にはことごとく通用しません。

近年では適応課題に関する悩みが増えてきたため、従来からの面談のほかに、実施のタイミングを細かくした1on1面談の必要性が高まっています。

上司には、このような面談で、キャリア観をしっかり持ったうえで、部下と向きあってほしいのです。

キャリア観とは「どう働くか? なんのために働くか? どのような人生を送りたいか」という質問への答えであり、「人には解決できない、割り切れない側面がある」という考え方を持つことです。

職場の人と人のかかわりによって、関係密度は高くも低くもなります。

人の課題の1つである適応課題にキャリアの問題がある以上、キャリア観を持っていない人は、先の例にあげた1on1面談のように「関係密度」を高められなくなってしまうのです。

キャリアの悩みを上司が間違って物理的課題として取り扱い、解決しようとすればするほど、複雑にこじれていきます。

解決できない、割り切れない側面があることを知ったうえで、結論を急がずに、かかわってみてください。

そして、いざというときにキャリア観をもって部下とかかわるためにもキャリアについて理解しておく必要があります。

キャリアとは人が「産まれてから死ぬまでの期間を通じて成すこと」を示す言葉です。

そこには、働く時間も、休みの日に自由に振る舞う時間も、さらには家族や大切な人と過ごす時間も含まれています。

さらに人は、オリジナルでユニークな存在である自身のキャリアを意味があるものだと考えます。

人生100年時代に入り、「自身が何者であるか」を考える時間が長くなった今、自身のキャリア成長に、自らが覚悟と責任を持ち、舵取りしていくことによって、自分らしいキャリアを描くための思考法の重要性が高まっているのです。

そうしたなかで、皆さまには次の3つの視点を持つことをおすすめします。

(1)人生を通じてどんなキャリアを歩みたいか、理想的な働き方はなにか
(2)これまでを振り返って生かせること、できることはなにか
(3)実現に向けて取り組むことはなにか

よい職場風土づくりに取り組む者として、自らに対してはもちろん、部下や同僚とかかわるときにも大切にしてください。

☆ ☆ ☆

いかがだったでしょうか?

社員のやる気を左右する「関係密度」が高くなると、「社員の不本意な離職率が低下する」「コミュニケーションの齟齬が減る」「他責志向が、自己課題自己解決型に向かう」などのメリットがあるそうです。

部下や後輩との接し方に悩んでいる人は、心地良い職場づくりのヒントが詰まった一冊『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』をぜひ書店でチェックしてみてください。

社員がやる気をなくす瞬間
間違いだらけの職場づくり
発行所/株式会社アスコム
Amazonで購入する
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著者/中村英泰(アスコム)
株式会社職場風土づくり代表
ライフシフト大学 特任講師
My 3rd PLACE 代表
1976年生まれ。東海大学中退後、人材サービス会社に勤務したのち、働くことを通じて役に立っていることが実感できる職場風土を創るために起業し、法人設立。年間100の研修や講演に登壇する実務家キャリアコンサルタント。

監修/田中研之輔

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