入社した時にはやる気でみなぎっていた人が、徐々にやる気をなくしていく……。それは、リーダーや周囲の些細な言動が原因かもしれません。
社員のモチベーションが低下する職場風土の改善には、実は「関係密度」がカギになるのだそう。この「関係密度」とは何なのか、そして高めるポイントとは?
700を超える企業の職場風土改善に関わってきた中村英泰さんの著書『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』から一部を抜粋・編集し、〝社員のやる気を奪う間違った職場づくり〟を打破するヒントを紹介します。
「関係密度」を高める力「関係構築力」をチェックする
さて、この章からは、「関係密度」を高めるために、具体的にあなたや企業、組織、チームがどうすればいいのかを説明していきたいと思います。
まずは、あなた自身がどれだけ、周りの人と質の高い接触ができているか、現時点の能力をはかる診断を用意しました。
誰しも、自分に対して「〇〇である」というイメージを持っています。
それは、自己概念ともセルフイメージとも呼ばれるものです。
たとえば、Dさんは、自分のことを「気が小さく、人前で話すことは苦手」だと思っています。
他者から意見を求められると、自信がないため声が小さくなり、さらに緊張することでしどろもどろな発言になります。
さらにはあるとき誰かから「聞こえなかったので、もう一度お願いできますか」と声をかけられたりすると、セルフイメージは「やはり人前で話すことは苦手」だと強化されます。
次第に、周りもDさんに発表をお願いすることが減り、Dさん自身も発表に対して準備することも少なくなります。
そうなると、一層、人前で話すことは苦手になっていきます。
これはセルフイメージの固着化とも呼ばれ、人が自身のことを「〇〇である」と考えるようになる一例です。
この固着化は、人が1人でつくりあげるものではなく、属する環境やかかわる他者との間で醸成されていきます。
その内容は変化していくため、「こうしたほうがよい」「これはしてはいけない」と、一概にいえるものではありません。
ですが、あなた自身が「私は〇〇」というセルフイメージをある程度把握しておくことは、接触の質を高め、職場風土にかかわっていくうえでとても大切なことです。
あらためて説明すると、職場風土には、企業や組織がルールや制度をもとに整えることによって高められる領域と、皆さんが行為の主体として、周りの人間と接触することによって変化する「関係密度」を核にした領域とがあります。
本書でお伝えしているのは後者です。
接触の行為の主体となる皆さんが自身に対して抱いているセルフイメージが実態とかけ離れていたり、過度に小さくまたは大きく歪曲してとらえていたりすると、スタート地点や取り組む際のルートを間違えることにもなりかねません。
今の自分のセルフイメージをどれだけ把握しているかを知ることで、質の高い接触ができているのかがわかります。
本書では1万人からヒアリングした経験をもとに、あなたの接触の質を測定する簡単な診断を用意しました。
名づけて職場における「関係構築力診断」です。
「職務挑戦思考」「人間関係思考」「職場へのフォロワーシップ」の3領域、計15問から構成されています。
さっそく下のチェックシートに取りかかっていただき、セルフイメージを客観的に確認するきっかけにしてください。
いかがでしたか? 3領域に各3つ以上のチェックを付けることができれば、あなたが職場において、質の高い接触ができていると自信を持ってください。
また一方でチェックが少なくても、これは簡易版なので、一喜一憂することなく「職務挑戦思考・人間関係思考・職場へのフォロワーシップ」の3領域の質問項目を意識して行動すれば、接触の質を高めていくことは可能です。
ちなみに、実際にサポートに入らせていただく際には、サーベイ(質問シートなどを用いて、現状を把握するために行う調査)の実施と、その結果に対するフィードバック面談を通じて適切なセルフイメージの確認をより厳密に行っています。
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いかがだったでしょうか?
社員のやる気を左右する「関係密度」が高くなると、「社員の不本意な離職率が低下する」「コミュニケーションの齟齬が減る」「他責志向が、自己課題自己解決型に向かう」などのメリットがあるそうです。
部下や後輩との接し方に悩んでいる人は、心地良い職場づくりのヒントが詰まった一冊『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』をぜひ書店でチェックしてみてください。
社員がやる気をなくす瞬間
間違いだらけの職場づくり
発行所/株式会社アスコム
【Amazonで購入する】
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著者/中村英泰(アスコム)
株式会社職場風土づくり代表
ライフシフト大学 特任講師
My 3rd PLACE 代表
1976年生まれ。東海大学中退後、人材サービス会社に勤務したのち、働くことを通じて役に立っていることが実感できる職場風土を創るために起業し、法人設立。年間100の研修や講演に登壇する実務家キャリアコンサルタント。
監修/田中研之輔