入社した時にはやる気でみなぎっていた人が、徐々にやる気をなくしていく……。それは、リーダーや周囲の些細な言動が原因かもしれません。
社員のモチベーションが低下する職場風土の改善には、実は「関係密度」がカギになるのだそう。この「関係密度」とは何なのか、そして高めるポイントとは?
700を超える企業の職場風土改善に関わってきた中村英泰さんの著書『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』から一部を抜粋・編集し、〝社員のやる気を奪う間違った職場づくり〟を打破するヒントを紹介します。
組織を成功に導くには「急がば回れ」
関係性の向上が企業の成功へと導くことを裏づけてくれるのが、マサチューセッツ工科大学組織学習センター共同創始者のダニエル・キム氏が提唱した「成功循環モデル」です。
成功循環モデルでは、組織を「関係」、「思考」、「行動」、「結果」の4つの質でとらえます。
そして、「関係の質」が高まれば「思考の質」が上がり、「思考の質」が上がれば「行動の質」が高められ、それが「結果の質」、すなわち成功につながると考えるのです。
「成功循環モデル」の名のとおり、成功を得ることで「関係の質」はさらに高まり、好循環のサイクルが回り出すのです。
最近、相談として増えているのが、次のようなことです。
・エンゲージメントを高めるためにシステムを導入したが、改善が見られない
・リモートワークを推進させるため社内イントラを強化したが利用が進まない
・社員のリスキリングを目的にeラーニングを導入したが利用率が低い
・評価制度をシステム化したが、評価の考えが定着しない
確かに「結果の質」を高めるために、手っ取り早くシステムや制度を導入することも選択肢の1つです。
ただ、社内に関係性づくりの専門家がいてこそのシステムです。
「結果の質」を高めるなら、「関係の質」を高めることからはじめる。生産性や心理的安全性を向上させたいのなら、周囲とのかかわりやコミュニケーションを深めていくことからスタートするべきなのです。
意外に思われるかもしれませんが、業績を向上させている成長企業には、各部署に、特に人事部には関係性を調整する達人がいます。
この場合の達人とは、次のような人たちです。
・コミュニケーションを自在に使いこなせる
・社内外に広いネットワークを持っている
・心理学や行動心理学、さらには組織論、キャリア論に詳しい
・なにかことが起きると、頭も手も動かすが、なにより対話をする
ただ、このような専任の達人が各部署にいるのは、従業員数千人以上の企業がほとんどです。
では、多くの中小企業はどうしたらよいのか。「結果の質」を高めたいのであれば、手っ取り早くシステムや制度を導入するのではなく、構想や計画の段階から「関係の質」を高めるため、関係部署や関係社員を集めて、大いに手の内をさらすことからはじめてください。
そこでのコミュニケーションは「関係の質」を深める機会となり、行く先の「結果の質」に反映されていきます。
職場風土づくりでご一緒させていただいているある企業は、月1回の定例会議の際に、社会動向に、社内状況として社員の声を添えながら、半年後に控えた評価制度の改定に向けた情報を小出しにして共有・対話を行っています。
半年後の改定の準備としては、少し急ぎ過ぎの感は否めません。
デジタル化とともに、私たちは、クイックレスポンスに慣れすぎていますが、人の成長とは倍々で積み上がっていくものではありません。
実際の日々のコミュニケーションによるプロセスが積み重なることで、成長は見出されるものだと思います。
スピードが尊ばれるビジネスシーンだからこそ、あえて余白を設けて、考える時間をつくることが大切です。
組織を成功に導くためには、関係性の構築からはじまる「急がば回れ」の姿勢が必要とされるのです。
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いかがだったでしょうか?
社員のやる気を左右する「関係密度」が高くなると、「社員の不本意な離職率が低下する」「コミュニケーションの齟齬が減る」「他責志向が、自己課題自己解決型に向かう」などのメリットがあるそうです。
部下や後輩との接し方に悩んでいる人は、心地良い職場づくりのヒントが詰まった一冊『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』をぜひ書店でチェックしてみてください。
社員がやる気をなくす瞬間
間違いだらけの職場づくり
発行所/株式会社アスコム
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著者/中村英泰(アスコム)
株式会社職場風土づくり代表
ライフシフト大学 特任講師
My 3rd PLACE 代表
1976年生まれ。東海大学中退後、人材サービス会社に勤務したのち、働くことを通じて役に立っていることが実感できる職場風土を創るために起業し、法人設立。年間100の研修や講演に登壇する実務家キャリアコンサルタント。
監修/田中研之輔