入社した時にはやる気でみなぎっていた人が、徐々にやる気をなくしていく……。それは、リーダーや周囲の些細な言動が原因かもしれません。
社員のモチベーションが低下する職場風土の改善には、実は「関係密度」がカギになるのだそう。この「関係密度」とは何なのか、そして高めるポイントとは?
700を超える企業の職場風土改善に関わってきた中村英泰さんの著書『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』から一部を抜粋・編集し、〝社員のやる気を奪う間違った職場づくり〟を打破するヒントを紹介します。
職場風土で、社員のやる気が大きく変わる
人的側面は、やる気の持続に大きくかかわってきますが、これらの人的側面に影響を与えているのが「職場風土」です。
職場風土は、部署やチームの社員同士の長年の関係性によってつくられる、ある種の文化です。
たとえば、活発に意見交換ができる職場なら、社員が互いに相談や連絡をかけあう声で、活気づいた職場風土になります。
ワンマンな上司がいる職場では、社員が上司の様子や機嫌をうかがったりする職場風土となります。
また、一切自分の仕事以外のことは考えない人ばかりだと、交わされる話は形式ばった、事務的なものに限られ、お互いにドライでどこか冷めた職場風土となります。
叱責が職場に響きわたれば、どんな職場風土になるか想像しやすいと思いますし、ドライでどこか冷めた職場風土でやる気を維持する難しさも、理解いただけるのではないでしょうか。
ユーザーとしてサービスの提供を受ける際に、値段や立地、店構え、煌びやかな内装ではなく、ちょっとした言葉がけや働いている人たちの立ち振る舞いに感心してよく通うようになった経験はないでしょうか?
逆に、忙しいのはわかるけれど、ぞんざいな対応をされて、二度と訪れたくないと感じた経験。こちらを経験したという方が多いかもしれませんね。
端的にいえば、そこで感じているのが風土です。
風土次第で、働いている人も、顧客も時間を楽しく過ごせたり、つまらなくなったりするのです。
ビジネスシーンにおいても、訪問先の企業でスマートな来客応対をされて、清々しい気持ちで応接室に通されると、その後の打ち合わせで思わず「なにか、特別なことに取り組んでいますか?」と秘けつを確認したくなるような企業もあります。
そして、職場風土は、長い年月を経ていつしか企業文化となり、企業全体にいい面も悪い面でも大きく影響を与えるようになるのです。
そもそも私がなぜ、職場風土に着目するようになったのか、自己紹介を兼ねて簡単にお伝えします。
私は、これまでの職業人生18年間(2016年以降は法人設立したので、カウントしていません)を計4社の人材サービス会社で過ごしてきました。
最初は地元のベンチャー企業、続いて通信会社の系列企業、3社目が銀行と商社が出資する企業、最後がアフリカ人の就労を支援する小規模事業会社です。
この間に700社を超す企業の「働いてほしい」という要望と、1万人を超える「働きたい」という願いを結びつけてきました。
そのなかで、次のような事例がありました。
・建設会社の空港建設で、事務用品の調達からはじめる事務業務
・商社の海外貿易業務で、時差のある海外駐在員複数名に対する秘書業務
・通信機器販売会社で、小休止が取れないほど多忙な基幹システム構築の補助業務
・第三セクターで、当年の余剰予算を消化するための2カ月間のファイリング業務
・神社の初詣で集まった御賽銭を、3時間以内に勘定する業務
・不動産会社の支店で、人間関係が悪く1カ月で4人離職した職場の営業事務
・前任者の離職で、引継ぎがまったくできないセラミック製品製造会社の現場事務
・親会社の命により急遽発足した電子部品製造会社で、社内ルールをゼロからつくる総務事務
これまでかかわってきた人たちやその職場を振り返ってみると、商店から中小、そして大企業までバランスよく職場を観察できたことが、私にとって最大の資本になっています。
いろいろな職場をみていると、企業規模や働いている人の学歴に関係なく、イキイキと人が働く職場があり、そうした職場には必ず「お疲れさん」、「ありがとう」、「助かったよ」、「期待しているよ」とタイミングよく声をかける、モチベーターとなる社員がいます。
その一方で、諸条件は申し分なくて、働く本人も「念願の仕事」だと言っていたはずなのに、1週間も経たずに「これ以上は、続けられません」と、泣く泣く離職してしまう人が多くいる職場もありました。
こういった職場は、モチベーターとなる社員が不在であることはもちろん、当該部署を覗くと「一言では言い表せない」不穏な職場風土だったりします。
契約を履行せず、途中離職することを正当化はしませんが、離職する理由に納得してしまうことも少なくありませんでした。
そうした経験を重ねるうちに職場風土の大切さや職場は「仕事をするだけの場所」ではないのかもしれないということに気づき、「やる気を持って働き続けることとはなんなのか」を考えるようになったことが、職場風土改善の専門家である今につながっています。
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いかがだったでしょうか?
社員のやる気を左右する「関係密度」が高くなると、「社員の不本意な離職率が低下する」「コミュニケーションの齟齬が減る」「他責志向が、自己課題自己解決型に向かう」などのメリットがあるそうです。
部下や後輩との接し方に悩んでいる人は、心地良い職場づくりのヒントが詰まった一冊『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』をぜひ書店でチェックしてみてください。
社員がやる気をなくす瞬間
間違いだらけの職場づくり
発行所/株式会社アスコム
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著者/中村英泰(アスコム)
株式会社職場風土づくり代表
ライフシフト大学 特任講師
My 3rd PLACE 代表
1976年生まれ。東海大学中退後、人材サービス会社に勤務したのち、働くことを通じて役に立っていることが実感できる職場風土を創るために起業し、法人設立。年間100の研修や講演に登壇する実務家キャリアコンサルタント。
監修/田中研之輔