イオンモバイルの大容量プランは家族でシェアに最適
房野氏:格安ブランドであるLINEMOの話が出ましたが、MVNOのイオンモバイルが料金プランを改定しました。一般向けプランである、「さいてきプランMORIMORI」の30GBから50GBを4月から値下げ。また、最大200GBの大容量プランを新設しています。
石川氏:イオンモバイルが上手いなと思ったのは、大容量をシェアで提案してきたこと。1人のユーザーを相手にしたら限界が来るわけですよ。容量を増やしていけばいくほど、キャリアの使い放題プランに近づいていくし、でも料金は上げられない。そこでイオンモバイルは「家族でシェアしましょう」とした。だから200GBで1万円超えという料金プランが成立する。将来的にも容量を増やしていく中で1万円をキープできるはずで、上手い仕組みだなと感じました。本来は200GBまで提供する気はなかったみたいですが、「担当者がやりたいと言ったからやった」みたいなことを言っていましたね。
石野氏:単体ではMNOの無制限プランより高いので、単体で契約する人は、ほぼいないと思いますけれど、3人や4人でシェアするとだいぶ安くなる。これは確かに上手いですよね。
法林氏:今まではMVNOの大容量プランについて懐疑的に見ていた。だからNUROモバイルの大容量プランも意味ないと思っていたんだけれど……
石川氏:自分もまさにそう思っていました。
法林氏:だけれど、イオンモバイルの話を聞いて、なるほどってちょっと納得した。
石川氏:そうなんですよ。
房野氏:シェアはなかなか賢いですよね。
石川氏:その手があったかと。
法林氏:昔、ドコモがシェアパックをやっていたけれどやめてしまった。IIJmioもシェアをやっている。mineoもシェアをやっていて、しかも契約しているキャリアのタイプがバラバラでもシェアできる。例えばお父さんがドコモ回線、お母さんはau回線、子どもはソフトバンク回線でも、3人でデータ容量をシェアできる。シェアプランは容量を上げても用途があるなと思った。
石川氏:お父さんは30ギガ、子供は15ギガといった上限設定もできる。そのあたりが優しいし考えているなと。ユーザーの声をちゃんと反映していると思いました。
イオンモバイルの契約者数が伸び悩む理由
法林氏:イオンモバイルは圧倒的に店頭での契約が多いみたい。東京のユーザーだけがオンラインだと。
房野氏:オンラインとオフライン、両方あるのはいいですよね。
法林氏:でも、オンラインの手続きがダメ、やりにくいんですよ。
石野氏:オンラインは基本的にどのキャリアにもあるけれど、イオンモバイルなので、そりゃイオンに紐付いた方が強い。でも、都心にイオンはあまりないので。
法林氏:イオンカードのカウンターで契約手続きをできるようにしたら、すごく獲得できるようになったという話が今回あった。拡大して、都内にも店舗数が多い「まいばすけっと」のスペースにブースを作って売るのもいいかも。
石川氏:まいばすけっとは狭くないですか?
法林氏:まいばすけっとはいろんな種類があるから。
房野氏:スーパーで長々と過ごすことはあまりないような気がしますが、カードカウンターは座ってじっくり話をするところなので、携帯電話の話をするにもいいかなって感じます。
法林氏:ウチの近所のまいばすけっとはWAONの手続きができる機械があって、そこであれこれやっている人をよく見かける。イオン銀行の手続きも含めてだと思うけれど、レジではできないサービスをそういうところでやるっていう感覚はあると思う。サービスカウンターがあって、そこで手続きができる、もしくはサービスカウンターに相当する機械があって、今月の利用料がわかるとか、アプリを端末にダウンロードできるとか、もしそういう仕組みができるのだったら面白い。それが、例えばテレワークブースみたいなものに入って手続きするとか。楽天ほどではないけれど、イオンも保険から何からあるので。
房野氏:あまり利用しないので意識しなかったんですが、イオンって金融系もちゃんと揃っているんですよね。
石野氏:地方に行けばイオンイコール人生みたいな感じじゃないですか。
石川氏:週末のすべて、みたいな感じ。
石野氏:仕事が終わったら行くし、もう人生なんですよ。
法林氏:でも都心にはあまりない。
房野氏:すごい経済圏を持っている会社ですよね。
石川氏:とはいえ、あれだけ店舗を持って頑張っているにも関わらず、イオンモバイルはまだ50万契約を超しただけというのが……
房野氏:100万契約に行っていないんですよね、意外でした。
法林氏:そこは突っ込みどころだと思う。100万契約突破の目標が2029年3月末でいいのかと。
房野氏:遅すぎませんかって思いました。
石川氏:家族で5回線獲得するとして、10万世帯が加入したら、それだけで50万回線じゃないですか。
石野氏:井原さん(イオンリテール イオンモバイル事業部 商品マネージャー 井原龍二氏)に理由を聞いたら、イオンモバイルはグループ内で新参者なので、ショップがイオンモールの奥の方にあって、お客さんが来てくれないと(笑)
石川氏:建物の上の方、奥の方にあるから人が来ない。だから、一番良いところにあるカードカウンターでSIMカードを売ってもらうと。
房野氏:そういえばイオンカード、ポイント還元率が高いですよね。イオンモバイルの利用料金をイオンカードで支払うと、WAON POINTが基本の4倍、200円で4ポイントもらえる。
法林氏:55歳以上はG.Gマーク付きのイオンカードを作ると良いかも。JALマイレージと組んでいる「JMB G.G WAONカード」もあって、マイルの有効期限が通常36か月のところ、60か月に延長される。ウチはそのために夫婦共々利用している。
石野氏:ウチの最寄りだと品川シーサイドのイオンスタイルがあるのですが、イオンモバイルがあったという記憶がないんですよね。
石川氏:探さないと見つからない。
法林氏:上の階にある。
石川氏:実家の近くにイオンモール日の出があるんですが、デカいんですよね。半端なくデカいから、イオンモバイルに行くという目的意識がない限り寄らない。そういう弱さはあるだろうな。
石野氏:イオンモールはもう街ですからね。僕の実家の方では、週末、イオン渋滞がすごいんですよ。帰省した時に連れて行ってもらったんですけれど、確かに1日生活できるな、みたいな。渋谷の街中でドコモショップを見つけるのと同じような感じで、イオンモールの中でイオンモバイルを見つけないといけない。確かにイオンの中にあるからといって、そう簡単にユーザーを獲得できるものではないのかなと。
石川氏:ただし、イオンには4キャリアのお店もある。MNOで機種変更や契約変更するために来る人もいるので、そこから獲ってくることも可能。MVNOの中でも圧倒的に顧客接点では強いはずなんだけれど、なぜユーザーを獲得できないのか。
石野氏:MNOの代理店としての立場との2軸になっていることで、やっぱりアクセルを踏み切れないところがあるのかなと。先日の発表会のトークセッションでも、井原さんがゲストに「プランを見直してください」と言っていたけれど、それって代理店のトークじゃないですか。ドコモ、au、ソフトバンクの立場を代弁しているような感じだった。そこでイオンモバイルを推さないの? って思いました。
房野氏:あと、ちょっと自虐的でしたよね(笑)
石野氏:正直でいいんですけれど、イオンモバイルとしては「イオンモバイルに安いプランがありますよ」ってすぐ勧めるのかと思ったら、見直してくださいと来た。
法林氏:逆に言うと、3キャリアを扱っている併売店としての強みがあって、他社プランをよくわかっている。
房野氏:強みでもあり、弱みになってしまうこともあるって感じですね。
石川氏:一番良かったのは、ドコモのネットワークに対して不満を抱いている人があまりいないってこと。その期待がないっていう(笑)
石野氏:そうですね。MVNOは元々データ通信が少し低速だと思われているから。
法林氏:プランのデータ容量が大きいものを家族でシェアするのは新しいマーケットだと思うけれど、本当に容量が少ない、とにかく安く使いたい60歳以上の人向けの「やさしいプラン」は、ドコモのirumoと争うような低価格小容量プラン。地方では「ドコモショップは2km先にあるけれど、イオンモバイルは週末にイオンモールへ行くからそのついでに寄るか」みたいな話になるかな、という感じはしました。だからもっとユーザーを獲得できると思う。50万は少ない。
石川氏:本来だったら、もう100万契約に行っているつもりだったと言っていましたね。
房野氏:なぜ苦戦しているんでしょう。
石野氏:解約率が高かったんですよね。
房野氏:MNPの踏み台にされていたんですかね。
石川氏:MVNOのシェアが全体的に上がっていないんですよね。むしろ下がった。以前は10%を超えていたのに、ahamoショックで9%に下がったので、やっぱりahamoの存在が大きいし、総務省と国が失敗したな、みたいな感じがしますね。
法林氏:もう少しMVNOを優遇する施策があるべきでしたね。
石川氏:菅元総理が自分の手柄にしたがったというのが最大の敗因かな。
日本通信が音声でもドコモと相互接続、2026年にサービス開始
法林氏:これから先、MVNOが盛り返せるかどうか。最近、HISモバイルとかも一生懸命やっているけれど、ユーザーを獲得できるかなぁと。イオンモバイルで50万超だとすると、やっていけるのはmineoとIIJmioだけかな、ほかは難しいんじゃないかなって思ってしまう。
石野氏:イオンモバイルも極論を言うとIIJですけれどね(IIJはイオンモバイルを支援する事業者)。
法林氏:そうね。そういうのを含めて考えると、MVNOはこれから何か新しい取り組みをしないといけない。
石野氏:日本通信がいいですよ。
石川氏:日本通信は先日、会見がありましたけれど……
石野氏:ドコモとの間で、ドコモの音声通信網とSMS網との相互接続に合意したという発表でした。サービスが提供されるのは26年5月予定と結構先の話だったのでアレなんですけれど。
石川氏:先の話だし、今さら音声? みたいな。
石野氏:ただし、音声相互接続しないと、電話番号を持てないとかが確かにあって、ドコモもMVNOに協力する姿勢を見せたいので、そこをうまく利用しているというか。
石川氏:福田さんが、ドコモの態度が変わったと言っていた。ドコモがMVNOを活性化する方向に舵を切ったという話をしていて、へぇと思った。旧ドコモ時代というか、完全子会社になる前のドコモにとって日本通信は敵でしかなくて、日本通信に好きなようにさせないモチベーションだったのが、NTT傘下になってそういった態度が変わった。対応する部署の名前も変わったと言っていたよね。
法林氏:やっぱりNTTドコモからNTTに変わったってことですよね。体質の変化。
石野氏:総務省の何かの有識者会議でドコモが出した資料に、日本通信のプレスリリースが引用されていたんです。ウチはちゃんと音声の開放を進めているということの参考資料として載っていて、仲良い! と思った。
法林氏:仲が良いというか、やってます感を出すためっていうところはあるんだけれど、NTTというくくりで考えると、NTTは〝広くあまねく〟が基本ルール。以前のドコモは独立している会社だったから、別に他社と仲良くする必要がなかった。NTTの文化として、そこの差が出てきちゃったのかなと思う。
石野氏:ドコモ、変わったなと思いました。NTTになったことを1番感じたところかもしれない。日本通信が、大臣に助けを求めずにドコモとの交渉をまとめたのは初めてなんじゃないですかね。
石川氏:日本通信の方が面食らっていましたね(笑)
……続く!
次回は、Galaxy S24について会議する予定です。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。
石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。
構成/中馬幹弘
文/房野麻子