3月4日が「短鎖脂肪酸の日(タンサ(3)シ(4)ボウサン)」に制定されたのをご存知だろうか。短鎖脂肪酸は腸内細菌がつくる代謝物質で、太りにくい身体づくりをはじめ、免疫機能の増強など多様な研究結果が出ている注目の物質だ。
記念日制定に取り組んだ江崎グリコは2024年2月28日に制定セレモニーと研究発表の機会を設けた。そこでは長年、短鎖脂肪酸を研究する株式会社メタジェン 代表取締役社長CEO 慶應義塾大学先端生命科学研究所 特任教授 福田真嗣氏により、短鎖脂肪酸の重要性や増やし方などについて紹介された。またカルビー株式会社やホクト株式会社、帝人株式会社などの短鎖脂肪酸にまつわる発表も行われた。
この中から、ビジネスパーソンの健康に役立つポイントを紹介する。
健康効果がすごい“ミラクル”な代謝物質「短鎖脂肪酸」
メタジェン福田氏による講演「なぜ、短鎖脂肪酸に注目すべきなのか ~腸から健康に寄与するメカニズムと次世代のヘルスケアの考え方~」の講演では、まず、「人の大腸の中にいる1000種類、40兆個ほどの腸内細菌が作る代謝物質が、全身の健康維持や疾患場所に関わっている」と腸内細菌の重要性が語られた。そして最も注目的すべきものが短鎖脂肪酸であるという。
「短鎖脂肪酸が腸の中で作られると、血流によって門脈を通って最初は肝臓に行き、肝臓に作用します。さらに外に出て行き、膵臓(すいぞう)をはじめさまざまな臓器に作用することによって、短鎖脂肪酸が全身に行き渡っていくのです」
そして福田氏は、短鎖脂肪酸の健康効果を語った。肥満抑制、免疫活性化、アレルギー抑制、便通改善、疲労軽減、持久力向上などとさまざまな効果が期待できる“ミラクル”な物質なのだという。
免疫活性化はもちろんのこと、持久力向上の効果もビジネスパーソンにとって関心が高いと思われる。福田氏は、思い立って持久力のありそうな青山学院大学の駅伝チームの学生の便を調べたところ、3000mのレースタイムが速い人ほど菌が多いことがわかったという。また菌を増やすオリゴ糖を週に1回ほど運動習慣のある人に食べてもらった実験では、2ヶ月後、タイムが10%ほど速くなり、疲れも感じにくくなっていることもわかったそうだ。
健康を目指すなら自分の腸内フローラをよくする「腸内デザイン」が必要
そして福田氏は、30代から50代の48人の腸内フローラを調査した研究結果も紹介した。すると、短鎖脂肪酸の量は人によってあまりにも違ったという。なぜか。
その理由として福田氏は、「みなさん、自分の腸内フローラのタイプに合わせた食事が取れていない、つまり腸内フローラに適切な餌を届けられていないのです。実は腸内細菌は、種類によってかなり好き嫌いがあるので、自分のお腹の中にいる腸内細菌に合わせて食事を取ることが必要。そうして体内発酵を促進し、短鎖脂肪酸を作らせるということがとても重要なのです」と述べた。
とはいえ、自分の腸内フローラのパターンを知っている人は、ほぼいないという。ではどうすれば自分の腸内細菌に合った食事を選ぶことができるのか。
「市場には健康食品やサプリメントが数多くあり、多くの人が購入している一方で、生活習慣病の患者数は増加の一途をたどっており、世界で3億人の方が生活習慣病になっています。これだけ健康食品やサプリメントを摂取している人が多いのにも関わらず、病気になる人が増えている。つまり、全員が効果を得られていないということではないでしょうか。
そこで、効果を得るために腸内環境を適切に整えておくという『腸内デザイン』が必要になると考えます。『ある食品の効果を得たいから、それに合わせて先に、腸内デザインを変えておく』のです。これを多くの人々が実践できるように、『腸内デザイン共創プロジェクト』を発足し、市場の共創を目指して、研究開発、商品開発、啓発活動をスタートします」
自分の腸内フローラの特徴をよく知り、「腸内デザイン」を自ら行えるようになれば、短鎖脂肪酸を作り出す腸内細菌の餌もうまく選ぶことができるというわけだ。確かにそれができることは現代人にとって、とてもありがたい。