「パック入り卵を4日連続で買ってしまった」「身近な人の名前が出てこない」など、最近何かがおかしいと感じることがあったら……それは認知症の警告サイン!?正常な脳と認知症の間にある〝認知症グレーゾーン〟かもしれません。
ちょっとおかしいという異変に気づいたら、認知症へ進む前にUターンできるチャンス!
認知症の分かれ道で、回復する人と進行してしまう人の違いは何なのか。40年以上、認知症の予防と研究に関わってきた認知症専門医の朝田隆さんによる著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』から一部を抜粋・編集し、健康な脳に戻るためのヒントを紹介します。
「いい昼寝」と「悪い昼寝」
■日中、眠気に襲われる人は、睡眠時無呼吸症候群かも
昼寝は脳によい影響を与える一方で、危険な昼寝もあります。
意識的に行う昼寝とは別に、「夜の睡眠時間は十分とれているのに、日中、眠気に襲われることが多くて、仕事の会議中でも居眠りしてしまう」というような人は、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。
Sさん( 62 歳・男性)もそうでした。
幼い頃に健康優良児として表彰されたこともあり、自分の健康には自信をもっていましたが、60歳を超えた頃から、「なんとなく体がだるい」「夜中に何度も目覚めてしまう」といった症状が出ていました。
ところが、健康診断では問題なかったことから、そのまま放置していたところ、あるとき奥さんから「毎晩いびきがひどい」「寝ている途中で呼吸が止まっている」と言われて驚いたそうです。
奥さんはとても控えめな方で、よほどのことでないかぎり、Sさんに対して何かを言うことはありません。これはよほどの問題なのだと危機感を抱き、睡眠外来を受診したといいます。その結果、睡眠時無呼吸症候群と診断されました。
睡眠時無呼吸症候群という病名を聞いて、「ひょっとしたら自分も」と感じている人も多いのではないでしょうか。一方で、具体的な症状やリスクについては、詳しくご存じないかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ているときに何度も呼吸が止まり、体が低酸素状態になる病気です。空気の通り道(上気道)が狭くなる「閉塞型」と、呼吸を調整する脳の働きが低下して起こる「中枢型」の2つのタイプがありますが、全体の9割以上を占めるのが閉塞型です。
閉塞型の場合、上気道が狭くなる原因としては、肥満による脂肪の沈着のほかに、飲酒や睡眠剤の内服などによってのどの緊張がゆるみ、舌の付け根、あるいは口蓋垂(のどちんこ)などが下に落ち込んで、上気道をふさいでしまう場合もあります。
一時的な無呼吸状態とはいえ、毎晩繰り返されて、それが何年も続くと、真綿で首を絞めるように脳がじわじわとダメージを受け、認知症の重大な原因となります。
しかも、前記した日中の眠気や、夜寝ているときに息苦しさで目覚めるケースもありますが、自分で気づくのはなかなか難しいからやっかいなのです。
睡眠時無呼吸症候群は、認知症だけでなく、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な引き金になるほか、突然死するリスクもある恐ろしい病気です。
Sさんのように、同居している家族から、いびきや睡眠中の呼吸について何らかの異変を指摘された場合は、すぐに睡眠外来を受診しましょう。
また、就寝直前のアルコールは筋肉を弛緩させ、口蓋垂が下がることで症状を悪化させます。やはり夜のお酒は、就寝の3時間前までに済ませることです。
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いかがだったでしょうか?
「おかしい」と感じてから専門の医療機関を受診するまでに、何と平均4年かかるというデータもあるそうです。その間に、認知症の症状はどんどん進行していってしまいます。
認知機能をセルフチェックし、正しい生活習慣を身につけるためのヒントが詰まった一冊『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』。ぜひ書店でチェックしてみてくださいね。
認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること
発行所/株式会社アスコム
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著者/朝田 隆(アスコム)
認知症専門医
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会 理事長、メモリークリニックお茶の水院長
1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年に筑波大学臨床医学系(現・医学医療系臨床医学域)精神医学教授に。2015年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。2020年より東京医科歯科大学客員教授に就任。
アルツハイマー病を中心に、認知症の基礎と臨床に携わる脳機能画像診断の第一人者。40年以上に渡る経験から、認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害)の段階で予防、治療を始める必要性を強く訴える。クリニックでは、通常の治療の他に、音楽療養、絵画療法などを用いたデイケアプログラムも実施。認知症グレーゾーンに関する多数の著作を執筆し、テレビや新聞、雑誌などでも認知症への理解や予防への啓発活動を行っている。