改正旅館業法のポイント|カスハラ対策・差別防止
2023年12月13日より施行された改正旅館業法では、ホテルなどの宿泊客によるカスタマーハラスメント(カスハラ)への対策が強化されました。
他方で、ホテル(旅館)側による障害者などへの不当な差別を防止するための規制も新設されました。
本記事では、カスハラ対策と差別防止の点を中心に、改正旅館業法による変更のポイントを解説します。
1. 改正旅館業法のポイント(1)|カスハラ対策
改正旅館業法による変更ポイントの1つ目は、宿泊客によるカスタマーハラスメント(カスハラ)への対策の強化です。
カスタマーハラスメントとは、顧客による店舗・施設などの事業者に対する理不尽な要求を意味します。
「店は客の言うことを聞くもの」「お客さまは神様」などの身勝手な発想に基づいて、事業者に対して無理難題を押し付けたり、従業員を罵倒したりするのがカスタマーハラスメントの典型例です。
ホテルなどの旅館業においても、宿泊客によるカスハラが社会問題となっていることを踏まえて、改正旅館業法によってカスハラ対策が強化されました。
1-1. カスハラを繰り返した客については、宿泊を拒否できる
旅館業を営む者は、宿泊しようとする者の宿泊を原則として拒むことができません(旅館業法5条1項)。
ただし例外的に、一定の場合には宿泊を拒否できます。今回の旅館業法改正により、カスハラを繰り返したことが新たに宿泊拒否事由として追加されました(同項3号)。
1-2. 宿泊拒否の対象となるカスハラ行為
旅館業法に基づく宿泊拒否の対象となるカスハラ行為(=特定要求行為)は、以下のいずれかに該当し、かつほかの宿泊者に対する宿泊に関するサービスの提供を著しく阻害するおそれのあるものです(旅館業法施行規則5条の6)。
(a)宿泊料の減額など、その内容の実現が容易でない事項の要求
※社会的障壁の除去を求める場合を除く
(例)
・契約外の部屋のアップグレード、レイトチェックアウト、アーリーチェックイン、送迎などを求める
・合理的な理由なく慰謝料の支払いを求める
・上下左右の部屋にほかの宿泊客を入れないように繰り返し要求する
・特定の従業員による応対を繰り返し求める
・特定の従業員を出勤停止にするよう繰り返し求める
など
(b)粗野または乱暴な言動など、従業者の心身に負担を与える言動を交えた要求であって、接遇に通常必要とされる以上の労力を要することとなるもの
※営業者が宿泊しようとする者に対して障害を理由とする不当な差別的取扱いを行ったこと、その他これに準ずる合理的な理由に基づいて要求がなされた場合を除く
(例)
・土下座を要求する
・長時間にわたって理不尽な要求を繰り返す
・従業員を叱責しながら理不尽な要求を繰り返す
など