「日本型ライドシェア」が始まった。
今でも賛否両論あるライドシェアだが、日本の場合は地域や時刻を限定したオペレーションが実施される。タクシーの繁忙時刻に、あくまでもタクシー不足を補う立ち位置としての運行だ。筆者の知っている限り、「日本型ライドシェアは既存タクシーの補完」と一番最初に表現したのは朝日新聞だが、この表現を用いた記者及びデスクは日本型ライドシェアの本質をよく把握している。
それはさておき、問題は「ドライバーはどれだけ稼げるか?」である。
本来のライドシェアも、「副業で稼ぎたい!」と熱望する普通自動車免許所持者が多数いるからこそ成り立っている。稼げるに越したことはない。が、日本型ライドシェアのドライバーは実際にどれだけ稼げるのだろうか?
ケース(1)日本交通
ライドシェアは「完全歩合制」である。
距離に応じた料金で利用客を乗せ、のちほどライドシェア運営者との契約に応じたパーセンテージ分の報酬を受け取る。客を乗せれば乗せるほど儲かる仕組みではあるが、逆に客が来なければ1セントの実入りにもならない。
運営者が配車依頼を各ドライバーに対して均等に通知したとしても、完全歩合制はあまりにも酷ではないか……という声がある。
それを前置きした上で、話を進めよう。日本のタクシー業界の雄で、ライドシェアに対して批判的と思われていた日本交通はライドシェアドライバー募集サイトを既に設けている。ここからライドシェアドライバーの待遇を覗いてみよう。
以下、日交のライドシェアドライバー募集サイトからの引用である。
雇用主 日本交通の各営業所または、グループ会社
必要資格 一種免許取得後1年以降経過されている方
給与 1400円+歩合+手当(※)
※手当:1時間400円支給
勤務地 東京23区(特には、港区、目黒区、新宿区、渋谷区、世田谷区)
※就業希望時間によって、運行頂くエリアが変わります
勤務時間
(1)平日 7:00~11:00
(2)金曜16:00~20:00
(3)金曜24:00~28:00
(4)土日10:00~14:00
※東京ハイヤー・タクシー協会のガイドラインに従い1週間あたりの労働時間に制限がございます。例えば副業としてライドシェアドライバーを検討されている方は、他企業様との就業を合わせて週40時間としています。詳細は応募時にお話し致します
これだけの情報があれば、日交と契約したライドシェアドライバーがどれだけ稼げるかを算出できる。
ここでは1ヶ月を4週間とする。東京ハイヤー・タクシー協会のガイドラインは週40時間までだが、契約先が日交だけの場合は上の「勤務時間」を読む限りはそこまで働かせてはもらえないようだ。
仮に金曜日に4時間、土曜に4時間の勤務と仮定しよう。つまり週に8時間、4週間で32時間だ。32×時給1,400円で4万4,800円、そこに1時間400円×32=1万2,800円の手当が加わり5万7,600円。これが基本給と考えてもいいだろう。
その上で、歩合も加味する。1日4時間の勤務で4乗車、それぞれ2,000円の運賃が発生したとしよう。そのうちの50%がドライバーの取り分とするなら、4×1,000円=4,000円、4週間のうちの8日勤務だから4,000円×8=3万2,000円。上の基本給と合算すると5万7,600円+3万2,000円=8万9,600円である。
これを12倍にすると107万5,200円。つまり、週に2日のライドシェアドライバーを1年間続ければ、100万円は確実に頂戴できるということだ。
1人の大人が生活することはできないが、副業として考えるなら悪い報酬ではないだろう。