営業サイドの「伝え方」がヒットに繋がった
今回のプロジェクトは、過去と同じ失敗は繰り返せない状況だったため、しっかりと売上を上げる必要があった。コンビニやスーパーなどへ商談を行う営業担当の努力が、ヒットの一因になっていると鈴木さんは語る。
「商談では、過去商品との違いや他メーカーとの違いを積極的にお伝えしました。また、今回は商品名に『白湯』を入れたことが一番の変更点。他社もやっていないインパクトとなる部分だったので、その点も入念に説明をしました。それに加えて白湯が世間でどれくらい流行していて、どれくらい売上が見込めるかも、わかりやすくお伝えすることを意識しましたね」
温かさを感じるパッケージデザインへのこだわり
アサヒ飲料の白湯へのこだわりについて、鈴木さんは次のように語る。
「家庭で作る白湯とは異なり、地層で濾過され、とぎ澄まされた天然水を使っている点がこの商品のプラスαの価値です。弊社の白湯は、軟水の天然水を使用しているので、口当たりがまろやかに仕上がっています」
また、温かさを伝えるため、パッケージデザインにもこだわったという。
「一般的に天然水のパッケージデザインは、青や白のイメージがあるかと思います。今回はオレンジを主体にした温かみのあるパッケージデザインにしているんです。2014年に発売した際は、青とオレンジを使い、主体は青のデザインだったんです。ホットなのに青だと寒々しい印象がどうしても出てしまうと考え、今回から変更しました。また、とにかく『白湯』ということを伝えたかったので、『白湯』の文字を大きく配置し、見やすくしました」
2023年の9月にはパッケージデザインがリニューアルされた。リニューアルに伴う大きな変更点は「保温ラベルの採用」だ。
「保温ラベルは、不織布の素材を使用することで、通常のラベルよりも商品の温かさを長く保てます。通常のラベルと比べ、40度以上の状態が約1.3分長く続くんです。不織布が和紙のような質感を持っていることを生かし、グラスから上がっている湯気が、よりふんわりと、温かみのあるイメージになるようなデザインにしました」
実は男性も『白湯』を求めていた!意外な購入比率
商品名やパッケージを大きく変更し、2022年11月に再発売された「アサヒ おいしい水 天然水 白湯」。消費者からは、「待っていました」「とても助かる」などの声があがっているという。
「当初想定していた飲用シーン以外にも、例えば服薬時、車酔いや体調不良時などに白湯を重宝するという声も届いています。『白湯がこんなに求められていたんだ』と気づかされました。当初は冬季だけの販売を予定していましたが、現在では通年販売をしています。服薬時や夏の電車、オフィスの冷房対策としてのご要望を多くいただいたんです」
男女の購入比率を見ると、女性が6割、男性が4割を占めているという。男性の購入比率の高さについて、鈴木さんは次のように考察する。
「年代別で見てみると、40代男性の購入が多いことがわかりました。その背景には40代男性の健康意識や美容意識の高まりがあると考えています。この世代は、健康診断や日々の生活をとおして、体調が右肩下がりだと気づき、カフェインをとらない生活や朝活を始めるなど、新しい生活スタイルの取り組みをしている世代です。同製品は、コンビニでの販売を主体に考えていたため、男性にも買っていただけるかを意識して開発していました。男性へのヒアリングも実施し、男性飲用経験率が伸びているデータもあったので、男性の購入も予想はしていましたが、4割も男性が占めるとは考えていませんでした」