楽天はコスト削減? ソフトバンクはarmブースで写真撮影
石野氏:今回、楽天は今までより少し縮小した感じ。
石川氏:プライベートイベントがなくて、ブースの中でこぢんまりやってた。
石野氏:楽天シンフォニーが通信ネットワークを構築した1&1の人とのトークセッションもありましたが、ブース内だったのでスペースが狭くて、見る人も十数人しか座れない感じだった。
石川氏:三木谷さんがめっちゃ近くにいたから、逆に写真を撮るのがちょっと難しかった(笑)
楽天グループ株式会社 代表取締役会長兼社長最高執行役員 三木谷 浩史氏
房野氏:これからも楽天シンフォニーをどんどん宣伝して売っていかなくちゃいけないですよね。
石野氏:まぁ、ちゃんと売っています。ブースも出しているし、そこに人もいっぱい来ていた。講演を全部自社ブース内でやっていたけど、そうするとブース代だけで済む。ステージでイベントをするとなると、そのためのお金を出さないといけない。コスト削減が徹底しているなと。ただ、三木谷さんが話すステージとしては狭すぎるかな、という感じはしましたが。
石川氏:三木谷さんは記者たちのグループインタビューで帝国ホテルのチョコレートを配ってくれて……
房野氏:お腹が空いていたから嬉しかったです(笑)ソフトバンクは「AI-RAN アライアンス」の設立を発表しましたね。
石川氏:ネットワークの無線部分にAIを載せましょうという考えがあって、それを実現するためにarmやAWS、Microsoftといった企業と組んでやっていくことを発表した。armブースで写真撮影会をして、デモも展示していました。そんなことやるんだったら、ソフトバンクもブースを出しなよって思いました。
房野氏:メーカーで印象に残ったところはありますか?
石川氏:端末メーカーはシャオミが頑張っていた。あと、相変わらずレノボとモトローラが賑やかしのコンセプトモデルを発表していました。
法林氏:元モトローラ・ジャパン社長のダニーさんもいたんでしょ?
japan orbic合同会社 代表取締役社長 ダニー・アダモポウロス氏
石川氏:来ていました。Orbicは5G対応の電気自転車をブース内に大きく展示していました。
石野氏:あと、KaiOS対応フィーチャーフォンも。
石川氏:日本で作るって言っていましたね。
房野氏:富士通やFCNTの端末を作っていた工場だそうですね。
石野氏:ジャパン・イーエム・ソリューションズ(JEMS)です。
房野氏:モトローラの手首に巻くコンセプト端末はどう思いましたか?
石野氏:あれは……
石川氏:賑やかしですよ。
房野氏:レノボの透明なパソコンやキーボードもそんな感じでしょうか。
石野氏:MWCはモバイルの祭典という面もあるので、お祭りを盛り上げるようなものも必要じゃないですか。そこはレノボさんが担ってくれているというか。あのモトローラの端末は、ガラスのディスプレイを外側に向けてバングルのようにして装着しないといけないんで、絶対ぶつけて壊れますよね。
石川氏:どう考えてもバッテリーが小さいので、すぐ電池切れするな、とか。
あと、MWCは端末発表会ではなくて、キャリア向けというか通信のイベントになったので、オープンRANの話題が非常に多かった。その中で、ドコモは販売会社のOREX SAIを発表して、NECと組んで人力でモバイルネットワークを売っていきますよっていうような感じだし、一方で楽天はオープン化といいますか、勝手にやってよ、みたいな感じ(笑)。対照的で面白いです。
ZTEが「nubia」ブランドを日本でも展開
房野氏:MWCからは少し外れて行きますが、新端末について伺おうと思います。ワイモバイルから「Libero Flip」が出ました。ZTE製端末ですね。
石野氏:Libero Flipという名前ではないですが、あれもMWCで発表されたんですよ。「nubia Flip 5G」ですね。すごいのが、明らかにnubia Flip 5GがLibero Flipのベースモデルなんですけど、nubia Flip 5Gを発表する前にワイモバイルが……
法林氏:2月29日に発売した。
石野氏:そう、発売しちゃっていて、発表した時にはまだグローバル版が発表されていなかった。
石川氏:何がベースなんだと。
石野氏:しかも、日本でのZTEのnubia Flip 5Gの発表会では、Libero Flipがベースでnubia版があるという説明をしていた。本当に? って思いました。ちょっとソフトバンクを持ち上げすぎじゃないかと。
法林氏:まぁ、ZTEは気を遣っているよね。
石川氏:急にZTEがやる気出し始めたのが、どういうことなんだと、みんなアワアワしているというか。
房野氏:OPPOの状況と関係はあるでしょうか。OPPOは特許の問題からドイツで販売禁止になり、今回のMWCではブースを出していませんでしたが。
石川氏:OPPOが元気ないから、頑張っているのかどうかはわかりませんが、急にnubiaブランドを持ってきたのは面白い。ZTEは今までどちらかというと地味な存在だった。日本で10年以上、ビジネスを、しかもキャリア向けにやってきましたけど、ここ最近は存在感があまりなかった。それが急にアクセルを踏み始めて、携帯業界に居る我々がちょっと面食らっている。
法林氏:ZTEは2016年にアメリカ商務省から禁輸措置製品の輸出に伴う制裁を受け、一時は日本法人も開店休業のような状態になってしまった。2018年に罰金の支払いなどで、制裁が解除され、本社の経営体制も一新。日本法人も体制を立て直し、各携帯電話会社からの受注に応えていた。たとえば、ソフトバンクが安い5G端末が欲しい時に、いの一番に作って納入し、キッズフォンやシニア向けスマートフォンなどの特定用途端末も開発した。auやUQコミュニケーションズのホームルーターは、ずっと旧NECアクセステクニカのNECプラットフォームズの製品が主力だったけど、今はZTE製がメイン。ZTEは元々、モバイルWi-Fiルーターなどでデータ通信端末に強く、技術力もあったけれど、キャリアのオーダーにちゃんと応えてくれるし、コスト面も頑張れるので、キャリアさんとの商売も続いてるんでしょうね。そんな流れを受けて、今度はnubiaで頑張りましょうというところなのかな。
石野氏:INFOBARなどを製造していた鳥取三洋的な裏方感がある。
石川氏:禁輸措置を受ける前のファーウェイというか。地道にキャリア向けの製品をやってきてポジションを確立し、ようやく自分たちの名前を出してきた。とはいえ、だったらワイモバイル向け端末もLiberoじゃなくてnubiaで出せばいいのにって思う。
法林氏:そこはたぶん、ソフトバンク側の意向が強く出たんだと思います。
石野氏:まぁ、nubia(ヌビア)って突然ブランド名を言われても、わからないという話がある。
石川氏:この先、nubiaのブランドが強くなってくれば、ワイモバイルやソフトバンクもnubiaで行きましょうとなるけれど、まだLiberoの方がソフトバンクユーザーの中では認知されているだろうし、ショップの店員さんもLiberoの方が親しみがあると思うのでLiberoになったと思う。nubiaブランドをどう訴求していくか、というのはこれからだろうし。日本ではシャオミが今、強い状況で、シャオミも非常に頑張ろうとしている感じがする。OPPOからシャオミに転職する人もいるみたいだし(笑)
房野氏:nubiaはグローバル展開するブランドですよね。
石野氏:そうですね。
法林氏:ヨーロッパと東南アジア、南米と言っていたかな。
石野氏:元々、ZTE内の別ブランドとしてやっていて、高級ブランド的な位置づけだったんです。それが中国とかで受けて、ヨーロッパにも進出していった。その際に、スピンアウトさせようということで、別会社の資本も入れていた。その後、ZTEが制裁を受けたりなんだりがあり、もう1回ZTEの中に引き戻して統合していって、メインのラインアップをnubiaにすることになった、みたいな言い方をしていました。それもあって日本でもnubiaでやっていく、というような説明でした。
房野氏:Liberoはnubiaと名乗らないんですね。
法林氏:Liberoはソフトバンクの商標です。
房野氏:Liberoで他メーカーの製品はありますか?
法林氏:ないと思う。
石川氏:多分、割引の付け方で左右される部分もあるんじゃないかなって思いました。
法林氏:nubia Flip 5Gのメーカー希望小売価格が7万9800円。ワイモバイル版のLibero Flipは6万3000円。インタビューでその辺のことを聞いたけど「値段を付けるのはキャリアさん」と回答していたので、ZTEの納入価格で、彼らが量販店で売るのは7万9800円にしたと。
石野氏:メモリとストレージの容量が違うんですよね。
房野氏:nubiaは高級ラインということですが、グローバルでのFlip 5Gの価格はどれくらいですか?
石野氏:グローバルでも8万円くらいだったかと。そんなに差はないですけど、日本はちょっと安いかな。ワイモバイル版はさらにそこから劣化仕様になっているというか、ストレージが256GBから128GB、メモリが8GBから6GBに減っている。値段を抑えるために、あえてそういう仕様にしたのかなという感じがします。
房野氏:チップセットは?
石野氏:Snapdragon 7 Gen 1。
石川氏:モトローラの「RAZR 40s」と同じ。
法林氏:RAZR 40sは10万円を切るくらいの価格なので、nubia Flip 5G/Libero Flipは、折りたたみとしては国内最安。
房野氏:かなり戦略的な値段ですね。
法林氏:〝おそらく……〟の話だけれど、昨年あたりに折りたたみスマホのヒンジの汎用品が部材メーカーでできたという噂があるので、それを採用したのではないかと思います。過去、日本の折りたたみケータイはNECだと言われて、他メーカーは当初、折りたたみケータイを作れなかったけど、埼玉県のとある会社、ヒンジ屋さんが折りたたみケータイ用のヒンジを開発した。
石野氏:ストロベリーコーポレーション。ありましたねぇ。
法林氏:今はない会社だけど、そこがいろんなところに売り込みに行って、他社もヒンジが手に入るようになった。日本で折りたたみケータイが増えたのは、そういう理由がある。当時の海外の折りたたみというかフリップ型のケータイは、モトローラのマイクロタックとかスタータックとかで、キーボード部分に蓋を付けた構造が主流で。2つの筐体をつなげた日本の折りたたみとはすごい差がある。あの時と同じで、フォルダブルのヒンジが各社に部品として販売されるようになって、今年は次々と折りたたみスマホが出るかもしれない。