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ウェルビーイング企業として知られるコクヨのサステナブル経営は現場にどう受け入れられたのか?

2024.04.16

コクヨは社員のウェルビーイングを実現しつつ、会社の増収・増益を達成し続けている。これは、2020年から「社内外のWell-beingの向上」を重点課題のひとつにしたサステナブル経営と、「コクヨ式ハイブリッドワーク」というワークスタイルをスタートしたことと重なる。1回目では、効率的な働き方と、チーム単位で仕事を進めていった背景について詳しく聞いた。ここでは、人材マネジメントを中心に、ウェルビーイングの施策について紹介する。

1回目はこちら

(右)江崎舞さん・ヒューマン&カルチャー本部 働き方改革室  入社13年目、一級建築士。オフィスの設計に従事したのち、コクヨの働き方の企画・運営を行う。を担当する。
(左)赤松広道さん・ワークプレイス事業本部 ワークスタイルマーケティング本部 入社25年目。多くのオフィス家具の企画開発を手掛けている。

仕事とプライベートは地続きである

DIME WELLBEING(以下・D):1回目では、ゾーニングやオフィス家具の配置などで、個人とチームの潜在的な能力を引き出す話を伺いました。環境一つで、生産性と個人の成長、コミュニケーションの活性化が両立できることに驚きました。

江崎舞さん(以下・江崎):社員の行動をデータで解析しているので、数字の裏付けがあるので結果が狙いやすいのです。

赤松広道さん(以下・赤松):生産性を高め、自分らしい働き方・暮らし方・学び方を実現するために、有給休暇取得率100%という目標があります。有給は「取得してもいい」ものではなく、「取得しなければならない」としています。有給休暇は、社会人としての成長に必要です。でも、取得しても何をしていいかわからないという人も少なくありません。

D:社員に真面目な人が多いイメージがあります。

江崎:そうなんです。コロナ禍のテレワークの時も「仕事をし過ぎてしまう」方が問題になりました。有意義な有給休暇の活用方法を見つけるワークショップを開催しました。自分の過去・現在・未来における関心や意思を捉え直し、有意義な休暇の活用の仕方を見つけるのです。

赤松:「ライフ ベースト ワーキング」も取り入れています。自分らしい人生を軸に働こうという考え方。コロナ以前は、仕事とプライベートは分かれていました。しかし、あのときに、人とのつながりや生きがいの大切さを痛感したことで、仕事とプライベートは相互に関連していることに多くの人が気づきました。

江崎:だからこそ、それぞれが自律的でありながら、協働していくことを目指したいと考えています。これを常にブラッシュアップし続けています。

社内で「複業」する仕組みづくり

赤松:効率化を推し進めていく過程で、人材に対する考え方を深掘りしていきました。その過程で「20%チャレンジ制度」が生まれたのです。これは、「社内複業」を支援する制度です。自分の業務を効率化するとそれまで100%の時間と能力を費やしていたことが、80%ぐらいでできるようになります。そこで浮いた20%をほかの業務に充てるという取組みです。

江崎:これは、2020年に発足しました。目的は、個人の主体的なキャリア形成と能力向上だけでなく、組織の活性化です。それまでは、所属している部署の仕事に専念をするだけだったのですが、他部署が出した求人に自ら手をあげ、業務時間の20%程度を活用して他部署で仕事ができます。

赤松:社員本人と、求人先部署の上司、人事でマッチングを行います。復業先の取り組みの成果や貢献も、個人の実績評価に加味しています。開始から4年間で延べ260名がこの制度を使いました。海外事業の市場調査、戦略推進支援、学びのデジタル化の未来を見据えた研究開発、従業員の環境意識の向上など、所属事業や組織を跨いだテーマにチャレンジしています。

江崎:社員は「現業80%+新しいテーマ20%」の状態を目指し、業務工数を可視化しながら、本人・上司・人事で対話を行い、業務の見直しや軌道修正を進めます。これにより社員・採用した側のチーム・人事にも大きな気づきがありました。

江崎:求人にも人気・不人気があります。それもまた自分の部署を客観的に見て成長させる要素になるのです。

赤松:就職活動中の学生さんにも、この制度は知られており、質問されることも増えていると聞きました。人材は社会からお預かりしている大切な存在です。ずっとコクヨにいてくださったらうれしいですが、コクヨから旅立った後も、学んだことが社会をよくする要素になってほしいと思っています。

思想そのものが変わったオフィス環境

D:人を長い目で見て、大切に育てていることが、「コクヨ式ウェルビーイング」の根幹にあると感じました。

江崎:確かにそうかもしれません。現場に寄り添った制度と環境づくりを磨き続けています。離職率も低いですし、社内の風通しはいいと感じています。四半期に1度、社員向けに働き方満足度のアンケートを実施しているのですが、約3000人中80%が「概ね満足」以上の点数をつけています。

赤松:会社の方針に納得いかないという社員についても、学びの機会を設けています。社会全体を考えても、「コクヨ式ウェルビーイング」の働き方や、「自律協働社会」のビジョンの方向に進んでいくと確信しています。

江崎:そのため社内に人材育成機関を立ち上げました。ここでは、すでに持っている知識や価値観などリセットし、その人の可能性を最大化させることを目的としています。学び続け、変化し続けなければ、組織はもとより、個人が幸せになることは難しいと考える人は増えています。

D:変化のスピードは予想以上に速い。まさに私たちはVUCA(Volatility・変動性、Uncertainty・不確実性、Complexity・複雑性、Ambiguity・曖昧性)の時代を生きていると思います。目まぐるしく変転する予測困難な状況を嘆き、過去にとらわれてしまえば、幸福からは遠くなってしまう。

赤松:それは痛感しています。私は入社して25年ですが、オフィスの環境はこの2年で20年分くらい加速的な進化を遂げました。それまでも、デスクトップパソコンからノートパソコン、スマホ、タブレットの登場等のインフラの変化はあったのですが、思想そのものが変わったのはコロナ禍以降です。

江崎:コロナ禍以降、自宅の家具での業務を体験し、オフィス家具の機能性や心地よさを多くの人が感じました。かつては「総務部にお任せ」だったオフィスづくりを、社員の方主導で行うプロジェクトも増えています。私たちが大切にしている考え方である「ライフ ベースト ワーキング」も広がっている手応えはあります。

赤松:オフィス環境は生産性を上げ、イノベーションを起こすベースです。私たちの家具やシステム、そして思想が多くの人の役に立てるように、これからも学び続け、変化し続けます。

ウェルビーイング企業として知られるコクヨは、人と可能性を何より大切にしていた。現在、力を入れているテーマの一つは、インクルーシブデザインだという。その定義は、「障者がいのある人を始めとした、社会のバリアに阻まれている人と企画段階から共感・共創することで、新たな課題を発見・解決すること」だ。製品の開発において、社会のバリアを取り除いたり、や多様性を取り入れた設計・デザインをしていく。

現在、本社オフィスの1階にダイバーシティオフィス「HOWS PARK」がある。構築の初期段階から、聴覚・精神・車椅子ユーザーなど、多様なリードユーザーとの対話を重ね、安心して使える。ここでの実証実験のデータと検証を通じて、さらによい世界を目指す。ウェルビーイングには、社会全体がいい方向に導かれていくパレードに、当事者として参加している“実感”も含まれるのではないかと感じた。

取材・文/前川亜紀

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