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デジタル社会こそ「社員同士の関係性」が重要といわれる理由

2024.07.17

入社した時にはやる気でみなぎっていた人が、徐々にやる気をなくしていく……。それは、リーダーや周囲の些細な言動が原因かもしれません。

社員のモチベーションが低下する職場風土の改善には、実は「関係密度」がカギになるのだそう。この「関係密度」とは何なのか、そして高めるポイントとは?

700を超える企業の職場風土改善に関わってきた中村英泰さんの著書『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』から一部を抜粋・編集し、〝社員のやる気を奪う間違った職場づくり〟を打破するヒントを紹介します。

今回は、同著の中から著者の中村英泰さんと法政大学教授 田中研之輔さんの対談をお届けします。

〈特別対談〉社員同士の関係性が、なぜデジタル社会で重要なのか?[法政大学教授 田中研之輔×職場風土改善の専門家 中村英泰]

中村英泰(以下、中村) この10年デジタル化により、職場でさまざまなツールが使えるようになって、私たちの業務効率は飛躍的に改善したと感じています。

そのため、仕組みや制度で個人の生産性を向上させることで、組織の生産性の向上を図るのは、限界に到達しているのではないか、余地は限られているのではないかと私は思っています。

そうしたなかで、「企業が、組織が、今後一層の成長に向けて取り組みはじめるべきことはなにか」といえば、職場の関係性だと思います。本当の意味での社員と社員の関係性とはなにかを考えなければならないところにきているのではないかと。それはつまり、「職場を仕事をするだけの場所」にしない、職場の「関係密度」の再定義が必要だと思っているんです。

田中研之輔さんの、専門的知見からはどのようにお考えでしょうか。

田中研之輔(以下、田中) まず、コロナとともに過ごした期間がなんだったかというと、それは「働き方」を見つめ直した期間でしたよね。

切り口はさまざまですが、これまで「働くこと」は、オフィスとセットだった。通勤することを前提に、箱の中に集まることだった。

本社、支社、組織=オフィスという箱のなかで、関係性は紡ぎ出されていたのです。そうした前提がコロナを機に大きく変わったという実感があります。

現実を見渡してみると、オンラインで働かれている人もいたり、リアルが推奨もされていたりもする。また、いわゆるハイブリッドを自己選択できる環境であれば、「私は家です」という人も、「私はオフィスです」という人もいる。そうなると職場の関係性は、必ずしもオフィスを前提にしていないわけです。

あるとき、オフィスに行ったら誰もいないみたいなことが起きてきます。

中村 どこにいるから仕事というわけではなく、どこにいても仕事ができる。確かに、「仕事=成果をアウトプットする」という観点からしてみたら、それで完結できるのかもしれません。

ですが、想定している仕事のゴールの枠を広げて、超えて、「さらによいもの」とか、「さらによい仕事・職場にしよう」といったことを追い求めようとすると、これまで、目を合わせて、顔合わせながら言葉を交わした機会や、昼食や、ときに酒を飲みながらの談笑などによって培われた「関係密度」が重要だと感じています。

それは、デジタル化では補えない部分もあると思うんです。

田中 中村さんのお話にもあるように、組織というのは単なる箱ではなく、コミュニケーションの束=関係の密度です。

それを示すのが、たとえば「どこどこ会社のなになに部長ですっていう肩書」です。それがなにを指すのかといえば、その人がこれまでやってきたコミュニケーションの束で、どれだけ価値のある生の情報に接点を持っているのかを示しているんです。

だから、積み重なっていった束がその人の信頼を生み、その組織のなかで仕事を任されるようになり、それが、その人の組織内で形成したキャリアになるわけです。

つまり、本質的に考えるならば、「仕事というのは、組織1人ひとりの関係性や組織を超えた関係性に向き合うことでなされる」のだと思います。

■関係性は、生ものであり、生き物だからこそ変えていける

中村 「モノづくりの社会」を終えて「デジタル社会」に入り、それを越えて、これから「創造社会」へ向かっていくことを考えると、田中さんがおっしゃるところの「束」を生かしてなにをつくり出していくのかというところに、もう少し目を向けていく必要があるんじゃないかなと思うんですけど、いかがでしょうか?

田中 関係性は、機械やデジタルにはない、人固有のもので、生ものであり、生き物なんですよね。だからこそ、誰でも、いつからでも関係性はよりよいものにしていける、改善していけるという視点が大切です。

関係性と聞くと、「上長とうまくいかない」「上長がチームの部下のメンバーが思うように動いてくれない」という話につながりそうです。こうした課題って、どこの企業でもあるわけですよね。

そんなときにどうすればよいのか。

よく私が伝えているのは、「他責にしない」ということです。

チームのせいにしない、組織のせいにしないで、自分のコミュニケーションのなかでその上長とのやり取りや部下・チームメイトとのやり取りを少し改善することで、関係性は必ず変えられます。

「関係密度」と中村さんは表現されていますが、すごく大切な観点だと思います。

密度とは、深度、深さということ。これから、職場自体のデジタルシフトが一層進むことを考えると、職場の「関係密度」が薄く、ぷつぷつと0と1で切れる信号のようなものでは問題だと思います。

あらためて、職場の関係性を束にしていく必要があります。

■人が成長する機会は、職場のなかでこそ見出される

中村 少なくとも過去10年間、離職理由の上位には職場の人間関係が挙げられています。

そうしたことからも、職場は、自分の気持ちが削られ、デモチベーションを引き起こす場所になってしまっているのではないかなと思います。コミュニケーションの束も冷めたものになっていると感じます。

しかし実際は、仕事に投じる時間は、創造性に富んだもので、職場は、世の中の不確定要素が高まるなかで安定した場所の1つです。

そして、自分の成長とこれからの可能性にアクセスできる数少ない場所であると思います。

だからこそ、職場はもっと楽しい場所であってもいいんじゃないでしょうか。

コミュニケーションの束は、もっと温かいものであってよいと思います。

ワークライフバランスという言葉がありますが、どちらかといえば、ライフのほうを重要視して、ワークを超下位層にもってきている人を見かけます。

でも、あらためて人が成長する機会として、もっと職場に期待してもよいのではないでしょうか。

田中 共感します。これまでコミュニケーションといえば、業務を円滑に進めるためのものという考え方でした。

「報・連・相」といわれているように、オペレーションのためのコミュニケーションだったと思います。

それが、コロナ禍に、対面では不都合になったオペレーションを一気にデジタルシフトしました。業務の観点からは効率化が図れたこともあり、とてもポジティブな側面が強調されました。

一方で、「仕事のいくつかがデジタル化されたことで、職場の関係性が薄くなり、孤立している」という相談を多く受けています。仕事はしっかりとやっているけれど、「これでいいのか」「このままでいいのか」という孤立感、相対的な孤独感を感じているようです。

これまで、業務とセットで行ってきたコミュニケーションが「デジタルに置き換わった」ことで、コミュニケ—ションそのものを再定義する時期がきたと感じます。

それは、たとえば、「デジタルをうまく使いながらもやっぱり少しリアルを戻して、オンラインをうまく使いながらリアルも大事にする」ということを何回も重ねながら、コミュニケ—ションを通じて業務が進展していく発想です。

そう考えると、「関係密度」とはなにかというと。人と人がライフスタイルを優先しながら働くこれからの時代に欠かせない「関係性を築くためのコミュニケーション」を行うのに重要なフレームだと感じます。

中村 ハイブリッドという言葉が定着していくのであれば、「職場」と「家庭」といった場所の話に、密度ってものを加えることで、今まで以上に、コミュニケ—ションの価値が見直されるのではないかなと思います。

個人のキャリア成長を考えたときに、これまでさまざまな論文を見てきても、楽しんで仕事しているときと、つまらないと思ってやっているときって、どちらがキャリア形成になる時間かといったら、圧倒的に楽しんでいるときです。

チクセントミハイ氏が唱えたフロー理論は、それを示す代表格です。

あらためて、職場に「関係密度」という観点を持ち込むことが、これからの組織にとっても、個人にとっても重要なポイントになるのではないかなと思います。

■つながりの広さから深さも求められる時代へ

田中 「関係密度」に近い概念っていったら、アメリカの社会学者、マーク・グラノヴェッター氏が言っている「ウィークタイ」。「弱い紐帯理論」ではないかなと。

この2つの根本的な違いがなにかと、私のほうで考えていくと、「関係密度」は、これからの時代に必要な問題提起をされていると思っています。まず、弱い紐帯理論とは、ウィークタイのことで、タイといったら、ネットワークなんですよね。

たとえば、私と中村さんがつながっていますよね。

そして、私がなにかプロジェクトを動かそうとしたときに、家族とか、友人のなかだけでは、そのプロジェクトを動かすリソースが足りないため、どうしようと思案していると、もともとつながっていた中村さんが「知り合いにこういう人いるよ」ってつないでくれる。そのゆるやかなつながりこそイノベーティブな動きになるよって考え方、これが弱い紐帯理論です。

ただ、蓋を開けてみると互いに機能しない。その理論では、1つ語り得ていないものがあって、それはネットワークの深さなんですよ。

また、今SNSがあり私たちは多くの人とつながることができます。

各部署を越えて、社内イントラ(チーム内や、部署内、会社内といった限定された人だけがアクセスできる情報通信網)があり物理的に、会社のなかでつながっていますという理屈もある。

だけど、信用でもある深さっていうのはオートメーション化されていない、ここを意識していかなければならない。

デジタル社会の恩恵として、私たちは弱い紐帯を手にしました。

そこで、手にしたネットワークを私たちが互いに、深めあっていく=「関係密度」を整えていくことが求められています。

コロナ禍以前よりも、「関係密度」を整えること、育てること。それは、キャリア成長において重要になってきたと感じています。

■必要なのは、半径5メートルの職場単位での変化

中村 最後に、田中さんにうかがいたいのは、今まで私たちは、組織開発をするにあたっても、企業や組織の単位でどうにかしていこうとする側面があったと思っています。

現場からは、遅々として進まない改革にやきもきする声も聞こえます。とはいえ、それは、今後も続けていく必要があると思います。

その一方で企業が、組織が、変わるのを眺めて待っているのではなく、私たちが明日からできることがなにかといえば、職場の「関係密度」の改善だと思うんです。

いろいろと呼び方はあると思いますが、他部署であろうが、同じ部署であろうが、上司部下の関係であろうが、半径5メートル以内に入っている人のことを、私は職場と呼んでいます。

この職場単位で「関係密度」をしっかり深めていくことが、確実に組織にも反映していくし、最終的には企業に影響すると思うんです。

実際にご一緒させていただいて、そうしたボトムアップが企業文化を変えたケースがいくつもあります。

田中 それは、たとえば、社員がモチベーションを落とすというモーメントを考えると、そこで起こっているのは、制度がフィットしてないとか、あるいは自分の思うような結果が出ていないとか、人事評価が実態に追いついていないとか、さまざまな要因があります。そうした、現場の状況を全部回収していくために職場単位で「関係密度」を深めていくことがカギになると思います。

中村さんが問題提起しているように、これまで、いろいろな間違いや誤解が職場づくりにおいて放置されてきたといってもよいと思います。

それを1つひとつ、紡ぎ直し、組織をリブーストすること、個人がキャリア成長に向かうことは、可能です。さらには、日常の業務を通じて、まず職場単位で取り組んでいくことが大切です。

そういう意識は、私が言ってきた「プロティアン」や「キャリア自律型のキャリア形成」とか「キャリアオーナーシップ」、自分のキャリアのオーナーになりましょうという話とつながってきますよね。

結論、職場の「関係密度」を高めていくことによって、ある意味組織内エンゲージメントスコアが上がっていくことも考えられます。

中村 これからの大変革社会に、企業が見据える未来は、まったく未知の領域であるわけです。そうしたときに、業界がどうこうとか、他社がどうこうとかは別にして、自社が確実に成果を残していかなければならない。

また、企業が大きくなることによって、確実に挑戦できるフィールドであったり、そこで関係できる人が変わったりします。

それにより、個人のキャリア形成の可能性も格段に高くなると思います。

デジタル化とともに、便利になるフレームは確かに使っていく必要があると思いますが、さらにもう一歩、職場に目を向けて、隣の人たちと、人と人がつながるコミュニケーションを図り、「関係密度」を深めるということを大切にしていく。みんなが当たり前にそれに取り組める職場が生まれてくると、いいんじゃないかなという思いがあります。

チクセントミハイ氏が著書『フロー体験入門』の序段で、もう一度「よい人生とはなにか」という問題を考え直す。予言やミステリーに任せることなく、自らの日常ありふれたこと、普段の1日を通じて遭遇する出来事に焦点を当てて、できるだけ筋を通すように努めることの大切さを述べていいます。

いい職場とは準備されたものではなく、私たちがつくり出していくものだと考えます。

田中 職場の人間関係は、不思議ですよね。

家族とは違うし友人とも違います。

つまり親密圏のコミュニケーションとはちょっと違って、プロフェッショナルの集まりという意識があるから、お互い、関係性の距離を取りながら、プロフェッショナルのコミュニケーションをやっていこうという意識がある。

踏み込みすぎないとか、感情を露出しすぎないとか、いわゆる家族のなかでのコミュニケーションとか、友人やパートナーというような、親密な方たちとのコミュニケーションとは、違うコミュニケーションがルールとして求められます。

そして、そのようなコミュニケーションの上に、ビジネスのスピード感を担保すべく、デジタルテクノロジーが入ったんです。

すると、コミュニケーションが、最初に中村さんが言ったような、冷たいものにどんどん見えてくる。冷たいもの、それはドライで感情に関係なく、方向性としては、ある種の機械的なコミュニケーション。それを、私自身も変えていく必要があると思っています。たとえば、「この先輩と働きたい」とか、「このチームで下期までにこういう達成をしたい」とか、人間的なものに変えていく必要を感じています。

今、サポートしているベンチャー企業では、みんなでこの目標を達成したいと話しあい、そして達成できたことを喜びあっている。ときに、達成したことに感極まり、本気で泣いている人もいて、「この職場っていいな」って思えるんです。

中村 そういう、あふれ出るものですよね。

田中 「そういう職場をつくっていくことができるよ」って、可能性を、この書籍を通じて伝えていきたいですね。

それは決して、会社の制度改革を待つことでもなく、経営者からの中期経営計画を重視することでも、労働組合から大きな発信をすることでもなくって、まずその自分の周り5メートルのコミュニケーションを、「関係密度」を意識しながら、大切にしていくことですね。

中村 明日からでも、今日からでもできることはあります。

田中 最後に、中村さんからの、「こうやると『関係密度』が強くなる、これだけは取り組んでほしい」ということは、ありますか?

中村 それは、タイミングのいい声かけですね。もうそれに尽きると思います。

これまで1万を超える人たちの声を聴いてきたなかで、本当にいい職場はいくつもありました。

そこでは、上司がタイミングよく「お疲れ」「助かった」「ありがとう、また明日も期待しているよ」っていうひと言を、本当に手を抜くことなくかけています。

そこで働いている人が、得ている給料やステータス、いわゆる履歴だけで見ていたら大学卒業から高校卒業からアフリカから来た人までさまざまなんですが、そうした多様で多層な人たちを職場でつなぐためには、タイミングのよいひと言をかけることに尽きると思うんです。

田中 今、キャリアコンサルティングの知見を、1人ひとりの社員のビジネスリテラシーにしてほしいと思っています。

もちろん専門資格として全部を学ぶことは、皆さんも業務があるから難しいけど、たとえば「タイミングのいい声かけ」とか、「ポジティブフィードバック」とか、「傾聴」のスキルっていうのは、職場の「関係密度」を整えるうえで外せない重要項目だと思います。

読者の方が、「関係密度」を深めていくために、1つひとつ中村さんが言っているエッセンスを学んで身につけて、実践に向けてほしいですよね。実践していく過程で、コミュニケーションの束が、つまり関係の密度が変わっていくってことを、体感してほしいです。

体感することによって、その効果がより感じられる。

やっぱり、これは本のなかだけの話じゃなくて、実践書ですよね。

皆さんにはこの本を参考に、ファーストアクションしてほしいなと思います。

中村 本当にそう思います。仕事が人生の大きな部分を占めています。よい人生を考える意味からも、「職場を仕事をするだけの場」にしないために、職場の「関係密度」の再定義に取り組んでほしいと思います。

今日は、ありがとうございました。

☆ ☆ ☆

いかがだったでしょうか?

社員のやる気を左右する「関係密度」が高くなると、「社員の不本意な離職率が低下する」「コミュニケーションの齟齬が減る」「他責志向が、自己課題自己解決型に向かう」などのメリットがあるそうです。

部下や後輩との接し方に悩んでいる人は、心地良い職場づくりのヒントが詰まった一冊『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』をぜひ書店でチェックしてみてください。

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著者/中村英泰(アスコム)
株式会社職場風土づくり代表
ライフシフト大学 特任講師
My 3rd PLACE 代表
1976年生まれ。東海大学中退後、人材サービス会社に勤務したのち、働くことを通じて役に立っていることが実感できる職場風土を創るために起業し、法人設立。年間100の研修や講演に登壇する実務家キャリアコンサルタント。

監修/田中研之輔

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