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「エンパワーメント」が企業にもたらす3つのメリット

2024.05.27

ビジネス環境の変化が加速する中、従業員に権限を委譲する『エンパワーメント』が注目されています。

適切な方法で導入すれば、企業や個人を大きく成長させられるでしょう。エンパワーメントの目的やメリット、企業・従業員が意識すべきポイントを解説します。

「エンパワーメント」とは?注目される理由もチェック

先行きが見えない時代、多くの組織には『エンパワーメント』が求められています。エンパワーメントの本来の意味や、組織における重要性を理解しましょう。

■「権限を与えること」を意味する言葉

エンパワーメント(empowerment)には複数の意味がありますが、ビジネスシーンでは『権限を与えること(権限委譲)』の意味合いで使われるのが一般的です。

組織の業務においては、メンバーの意見を積極的に取り入れたり、権限を委譲したりして、自発的な目標の達成を目指す考え方を指します。

企業がエンパワーメントを推進する主な目的は、人材の能力開発と組織全体のパフォーマンスの向上です。従業員に権限を与えれば、自律性の向上に期待できるほか、潜在的な能力が引き出される可能性があります。

■「エンパワーメント」が注目されている理由

エンパワーメントが注目されている背景には、先行きの見えないVUCA時代の到来があります。VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉で、将来の予測が立たないほど目まぐるしい状況を指します。

IT技術の進展やグローバル化により、企業のビジネス環境は急速に変化しています。トップダウン方式で物事を進めるよりも、現場に判断を委ねる方が、目まぐるしく変化する環境に柔軟に対応できるでしょう。

また、人手不足が深刻化する日本において、優秀な人材の採用は困難を極めます。自社の若手を次世代のリーダーにいち早く育て上げるためには、適切な権限委譲が有用です。

「エンパワーメント」のメリット3選

コーチング

(出典) pixta.jp

日本では、多くの企業がエンパワーメントの重要性を認識し始めています。エンパワーメントを取り入れることで、企業や従業員にどのようなメリットがもたらされるのでしょうか?

■スピーディーな意思決定が可能になる

一つ目のメリットは、意思決定のスピードが上がることです。日本における従来の意思決定方式は、組織の上層部が意思決定を行い、それに基づいて従業員が動く『トップダウン』です。組織の一貫性が保てるのは利点ですが、現場に決定権がないため、臨機応変な対応をしにくい傾向があります。

エンパワーメントの考えを取り入れ、現場に権限を持たせれば、経営層や上長の指示を待たずに動けます。迅速な意思決定によって機会損失を回避できるほか、業務効率もアップするでしょう。

■人材育成に役立つ

二つ目のメリットは、リーダーシップを発揮できる人材が育つことです。現場の従業員に権限を委譲することで、リーダーに必要な判断力や行動力、責任感などが磨かれます。生産年齢人口の減少で採用難が続く中、自社内で次世代のリーダー候補を確保できるのは、大きなメリットといえるでしょう。

優秀な人材の育成には一定の期間を要する上、リーダーに必要な要素は日々の業務をこなすだけでは身に付きにくいのが実情です。早い段階から少しずつ権限を委譲していけば、着実なステップアップが可能になります。

■従業員のモチベーションアップにつながる

三つ目のメリットは、従業員のモチベーションがアップすることです。権限が与えられると、当事者意識や責任感が養われます。任務の遂行に必要なことを自分の力で考えられるようになり、上司の指示がないと動けない『指示待ち人間』が減るでしょう。

離職率が多い企業は、従業員が仕事にやりがいを感じていない傾向があります。エンパワーメントによって、従業員一人一人のモチベーションがアップすれば、エンゲージメント(自社に対する愛着や思い入れ)が向上し、結果的に離職率の低下につながります。

「エンパワーメント」のデメリット2選

面接を受けるビジネスパーソン

(出典) pixta.jp

これからの時代を生き残るには、エンパワーメントが機能する組織をつくる必要があります。一方で、エンパワーメントにはデメリットもあり、必ずしもうまくいくとは限りません。

■企業と個人の方向性にずれが生じる

エンパワーメントが機能すると、一人一人の自律性が促されます。主体性を持って業務に取り組むようになるのはメリットですが、個々が好き勝手に動き、組織としてのまとまりがなくなる可能性があります。

企業の方針と従業員の方向性にずれが生じるケースも多く、『価値観が合わない』『方向性が一致しない』といった理由で、離職を検討する従業員も出てくるでしょう。

エンパワーメントの導入に当たり、企業側は、権限の範囲やルールを明確に定めなけばなりません。従業員にエンパワーメントの目的が正しく伝わっていなければ、意見の衝突やトラブルによって現場が混乱します。

■判断ミスが増えてしまう場合もある

もう一つ懸念されるのが、判断ミスの増加です。自分の権限で判断・行動するのが得意な従業員もいれば、苦手な従業員もおり、必ずしもエンパワーメントがうまく機能するとは限りません。

権限を委譲する人材とタイミングを見極めなければ、判断ミスの増加を招くだけでなく、従業員に大きなプレッシャーがかかります。

権限の委譲は、部下に権限を丸投げする行為ではありません。業務の執行責任は部下が負いますが、上司には部下の結果に対する責任があります。部下の未熟さを理解した上で、上司がしっかりとサポートする必要があるでしょう。

「エンパワーメント」で意識したいポイント

研修のイメージ

(出典) pixta.jp

エンパワーメントとは、従業員が潜在的な力を最大限に発揮し、自らの判断で主体的に行動することです。単なる権限委譲で終わらせないためには、従業員(上司・部下)は何を意識すればよいのでしょうか?

■原因精査や改善を怠らない

エンパワーメントに取り組んでも、一人一人が主体的に動けるようになるまでは長い時間を要します。失敗を繰り返しながら、徐々に適切な判断や意思決定ができるようになるのです。自己成長のスピードを速めるためにも、失敗時には原因の精査と改善を怠らないようにしましょう。

上司の立場にある人には、部下の判断ミスを許す寛容さと育成の視点が求められます。フィードバックの機会を設けたり、部下が自分で判断・行動できる環境を整えたりして、大きなミスにつながらないようにサポートすることが肝要です。

■報告・連絡・相談を小まめに行う

部下が判断を誤った場合、上司はすぐに修正をする必要があります。適切な情報共有がなされないと、小さなミスが取り返しのつかない事態に発展する恐れがあるため、チーム内の報告・連絡・相談(報連相)は小まめに行いましょう。

上司の立場にある人は、報連相だけで終わらせず、『なぜ問題が起こったのか』『どうすれば再発を防止できるのか』を部下自身に考えてもらいます。

Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)のPDCAサイクルを自分で回せる自律型人材の育成は、上司の重要な任務といえるでしょう。

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