セールスフォース・ジャパンから「2024年版 接続性ベンチマークレポート」の日本語版が発表されたので、本稿では同社リリースをもとに、その概要をお伝えする。
日本のITリーダーの79%は今後3年間でAIによって自社の開発者の生産性が向上すると予想
セールスフォースの新たな調査結果によると、日本のITリーダーの79%は、今後3年間でAIによって自社の開発者の生産性が向上すると予想している。また、昨年だけでITに関する要請が37%増加したと報告されている。
しかし、70%の回答者は、所属する組織について、まだデータシステムを完全に連携させてAIテクノロジーを活用する準備が整っておらず、それによって移行が妨げられ、チームへの負担が増加していると述べている。
このような懸念に加え、日本のIT企業の100%が現在、デジタルトランスフォーメーション(DX)について課題に直面していると訴えている。また、44%はデータの分散に言及しており、68%は過度に相互依存的なシステムという問題に取り組んでいると述べている。
この調査は、これらの課題を把握し、インテグレーション、オートメーション、APIを利用して適切なAI戦略を考案するために組織に何ができるか明らかにするため、セールスフォースがMuleSoft事業の一環として、世界中の1050人のCIOおよびITリーダーを対象に実施された。
■AI戦略の成功によるROIと事業価値の向上はデータ統合と一元化次第
AI戦略を成功させ、業務効率、生産性、従業員体験、顧客体験の改善というメリットを得るためには、強力なデータ統合戦略が極めて重要となる。レポートによると、全世界の調査結果は次のとおり。
<AIは指標>
ITリーダーは、LLM(大規模言語モデル)の平均使用数が今後3年間で69%増加すると予想している。また、80%の企業は、現時点ですでに複数の予測AIモデルや生成AIモデルを使用していると回答している。
<AIイノベーションの課題はインテグレーション>
AIによって効率性と生産性が高まるが、それはデータの統合次第。しかし、連携しているアプリの割合は、平均でわずか28%と推定されており、95%以上のITリーダーはインテグレーションに関する課題がAI導入を妨げていると述べている。
<導入を妨げる障害は依然としてセキュリティと信頼性>
64%のITリーダーはAIの倫理的な利用と導入について懸念している。
■データサイロの解消によりAIの可能性を十分に引き出し、シームレスなユーザー体験を実現
日本では、データサイロが進歩と事業価値の向上を妨げる大きな障害となっており、44%の回答者はデータサイロがDXへの取り組みを妨げていると述べている。
そのため、適切なインテグレーションによって、すべての構造化及び非構造化データを一元化して、あらゆる事業領域に信頼性の高い適切なAIを導入する必要性が高まっている。日本では次のような調査結果が出ている。
<企業がデータとAIアプリケーションを連携させるのは困難>
68%のITリーダーは、現在使用しているインフラストラクチャが過度に相互依存的(密結合)なシステムを生み出していると考えている。また、70%は、所属する組織についてまだデータシステムを完全に連携させてAIテクノロジーを活用する準備が整っていないと述べている。
<データに基づくインサイトの活用が不十分>
44%の企業は、データに基づくインサイトを統合して顧客体験につなげることに悪戦苦闘している。
<デジタル顧客体験が未成熟>
すべてのチャネルで完全に一貫した顧客体験を提供していると回答した企業の割合は、わずか13%だった。
■業務のオートメーションは、ビジネス部門がIT部門に依存せず業務効率化を進めるには必要不可欠
IT部門は多くの場合、オートメーション導入の責任を担っており、依然としてビジネス部門がセルフサービスでオートメーション(自動化)を利活用することに対して慎重だ。
最新の戦略によってITエンジニアではないビジネス部門のユーザーが、アプリやデータソースを統合できるよう支援していると回答した日本のITリーダーの割合は、わずか8%だった。
また、IT部門内のスキルギャップも障害になっている。企業がオートメーションを最大限に活用して、イノベーションと優れた効率性の両方を実現するためには、戦略的なコラボレーションやアップスキリングによってこのギャップを埋めることが不可欠だ。
日本の調査結果は次のとおり。
<巨大なプレッシャーにさらされるIT部門>
IT部門は効率的にインテグレーションを進めることに苦戦しており、デジタルトランスフォーメーションについて100%の回答者が課題に直面していると述べている。
スキルギャップとコンプライアンスの懸念が、ITに関する課題の上位にあげられている。
<AIによってIT部門のパフォーマンスの向上を支援が可能に>
79%のITリーダーは、AIによって開発者の生産性が向上すると予想している。
<IT部門がロボティックプロセスオートメーション(RPA)を利用して負荷を軽減>
IT部門は大きな需要に対応するためにますますオートメーションを導入するようになっており、現在では3分の1のチームがRPAを求めている。
この割合は、2021年には13%だった、2023年には31%に大きく増加した。
■ほぼすべての企業がAPIを利用しているため、APIは戦略的な成長手段となり得る
APIによって、さまざまなアプリケーションやシステムがシームレスにインテグレーションされ、データへのアクセスとデータの利活用が効率化され、事業成長が促される。
実際に、日本では全収益の29%がAPIやAPI関連のサービスから生まれているという。戦略的にAPI活用をしていない企業は、29%の収益機会を失う可能性がある。
APIは収益の3分の1を占めており、この数字は過去3年間横ばいで推移している。
<APIが収益機会を創出>
APIが収益の向上に寄与したと答えた人の割合は41%、運用コストの削減に寄与したと答えた人の割合は49%だった。
<APIによって業務効率と生産性が向上>
ITリーダーは、APIによって機動性が向上し、セルフサービスが促進されている(43%)、生産性が向上している(56%)、ビジネスチームの要求が満たされてメリットがもたらされている(35%)と述べている。
<インテグレーションはAPI次第>
過半数(60%)の回答者は、APIによって適切なインテグレーションの構築が継続的に支援されていると述べている。
以上のような結果について、セールスフォースのオートメーションおよびインテグレーション担当エグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるパラム・カーロン(Param Kahlon)氏は、次のようにコメントしている。
「AIの有効性は、企業がAIと連携させることができるデータと、そこから引き出すことができる成果によって決まります。これこそが、企業が直面しているインテグレーションとオートメーションに関する根本的な課題です。今回の調査結果から、AIを稼働させて事業価値と顧客価値を高められるかどうかは、APIを使用してAIと既存のシステムを統合し、新たな成長機会を生み出せるかどうかにかかっているということを、ITリーダーがますます意識するようになっているという状況がわかりました」
◎ここで言及された未提供のサービスや機能は、現在利用できないものであり、予定通りに、または全く提供されない可能性がある。利用者は、現在利用可能な機能に基づいて購入を判断すること。
調査方法
セールスフォースは、MuleSoft事業の一環として、世界的な企業のITリーダー1050人を対象に、接続性ベンチマーク年次調査を実施した。この調査は2023年10月から11月にかけて米国、英国、フランス、ドイツ、オランダ、オーストラリア、シンガポール、香港、日本で実施された。
関連情報
https://www.mulesoft.com/jp/lp/reports/connectivity-benchmark
構成/清水眞希