「農政の憲法」とも呼ばれ、農政の基本理念や政策の方向性を定めた「食料・農業・農村基本法」について、現在25年ぶりの改正に向けた動きが進んでいる。
食料安全保障上のリスクの高まりや、地球環境問題への対応等、足元の農業を取り巻く情勢を踏まえ、「食料・農業・農村基本法」の改正案が今国会で提出されるなど、現在、日本の農業は変革期を迎えている。
こうした動きを踏まえ、農林中央金庫は、日本の農業に対する意識や実態の把握を目的に、2024年2月、全国の消費者と生産者それぞれ約1,000人(消費者1,030人・生産者1,084人)を対象に「日本の農業の持続可能性に関する意識調査」を実施したので、概要をお伝えしよう。
消費者の国産食品・食材、日本の農業に関する意識について
消費者の約8割(79.2%)が国産食品・食材の購入意向ありで、理由のトップは「安全性」という結果に。消費者の約8割(80.8%)が日本の農業に課題を感じていた。
日本の農業に感じている課題について聞いたところ、「人手不足(86.0%)」「後継者不足(84.2%)」と、担い手(人)に関する回答がそれぞれ8割以上となった。次いで、「生産コストの上昇(51.2%)」「物流コストの高騰(47.2%)」が続く。
一方、国産生鮮食品・食材の供給・生産の未来に不安を感じるのは、およそ5人に1人(22.6%)にとどまる。
生産者が抱える農業経営の課題とその解決策について
生産者の6割以上(65.2%)が、農業経営を継続する上でなんらかの課題を抱えていることが判明。
農業経営の課題解決に必要とされるのは、「農業労働力の派遣や人材確保の支援」「農業機械や設備のレンタルサービスや、これらの導入に向けた助成などの金融支援」が上位に。生産品目によって、上記の課題や解決策で上位に挙がる選択肢は異なる傾向がみられる。
次世代の農業に向けて消費者・生産者が思うこと・感じていることについて
子ども世代に農業を職業として勧めたいと思う消費者は15.9%、生産者は20.8%にとどまる。
職業としての農業の魅力を高めるために求められるのは、消費者・生産者ともに「賃金の上昇」(消費者63.1%、生産者54.2%)。
消費者が日本の農業に取り組んでほしいこと(期待すること)、生産者が考える日本の農業が取り組むべきこと(果たすべき役割)は、ともに「食料の安定的な供給」であった(消費者・生産者ともに70.3%)。
調査概要
<消費者調査>
実施時期:2024年2月13日~2月14日
調査手法:インターネット調査
調査対象:自身で生鮮食品・食材を購入することがある、全国の20代~60代の男女1,030人(10歳刻みに男女各 103人ずつ 男性515人、女性515人)/令和2年国勢調査を基にウェイトバックを実施。
<生産者調査>
実施時期:2024年2月16日~2月19日
調査手法:インターネット調査
調査対象:農業に従事し「米作」「露地野菜」「施設野菜」「果物」「花卉」「畜産(肉牛・酪農・養豚・養鶏)」の生産に携わっている全国の18歳以上の男女1,084人(従事している経営形態(個人、会社、組合等)や、就農形態は問わない)/「農林水産省 2020年農林業センサス」の個人経営体と団体経営体の農業者数を基にウェイトバックを実施
※構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合がある。
関連情報
https://www.nochubank.or.jp/
構成/Ara