自走型社員に関するセミナーが増えている。OODA(ウーダ注1)が2023年のビジネス検索ワードの上位に食い込んでいる通り、指示が無くても仕事ができる社員への期待が高まってきた。「社員が積極的に自走してくれれば、会社にとってこんなにも喜ばしいことはないでしょう。ただし、やり方など、いろいろ問題点があるとは思います」と森田勝先生は注意を促している。
自走型社員が求められる背景とは
森田先生は長年、中小企業の現場改善を指導してきてきた。たった一人で現場に乗り込み、改善を指導するやり方で、社員が働きやすい組織づくりを目指している。著書「くたばれISO。」(日刊工業新聞社刊)は第三者認証の問題を鋭く世に問い、発刊当初から話題になった。自らも自走型を自認する森田先生にとって、組織内で自主的に仕事を創って完結できるアグレッシブな社員は、マネジメントの点からも評価できると言う。
これまでの中小企業は創業者によるワンマン経営が多く、指示待ち社員が求められた。しかし、声の大きな人の意見に引きずられて、間違った方向に行きがちな上、責任の所在をうやむやにして、問題が改善されにくい。
経営者側も社員の自主性は必須課題だと考えるようになってきた。「自主性をもった社員の活躍は、経営者ならば誰もが期待するでしょう」と森田先生も言う。
「とはいえ、どこまで社員の自主性に任せてよいのか。人事コスト削減をもくろむコンサルタントに惑わされていないかなど、自走型社員への転換にはいくつかの課題がありそうです」と、新しい言葉だけが先走りして失敗しないように、アドバイスしてくれた。
自走型社員が注目されるようになった理由
自走型とはマニュアルを使って自ら走ることができる人、すなわち主体性をもって自分自身の力で仕事ができる人を指す。指示が無いと仕事をスタートできない人ではなく、自分で自分の目標を設定して仕事を始めることができる人、という点が自走型のポイントである。
自走型社員が注目されるようになった背景の一つに、生産性の向上と効率化、人件費コストの削減があげられる。自走型社員は自らの選択肢の中で、最も効率的な仕事のやり方を選択するから、効率は大幅にアップする。さらに、他人と協調する必要がないため、自走型社員にはストレスが少なく、仕事にやりがいを感じることができる。
自ら考えて結果に責任をとる自走型のやり方は、仕事の経験値を高め、一人一人の能力をあげることにもつながる。仕事をするごとにスキルアップしていく手ごたえがあるのも、自走型のメリットの一つである。