マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルとは
ペットボトルなどプラスチック製品の多くは廃棄される際にリサイクルされており、現在日本では、年間891万トン排出される廃プラスチックのうち、約84%がリサイクルされている(2018年のデータ)。
リサイクルのうち、プラスチックをゴミとして焼却して発生した熱を発電や熱源に利用する、つまりエネルギー源として利用する方法を「サーマルリサイクル」といい、一方、廃プラスチックを元のプラスチック原料に戻す「ケミカルリサイクル」、プラスチック素材に戻す「マテリアルリサイクル」という方法がある。
出典:経済産業省資源エネルギー庁「カーボンニュートラルで環境にやさしいプラスチックを目指して(前編)」より
そもそもサーマルリサイクル、そしてCO2排出量削減のために欠かせないというケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルとはどういったものなのか。
サーマルリサイクルとは、廃プラスチックを焼却・エネルギー回収するリサイクル手法。
ごみ焼却熱利用、ごみ焼却発電、セメント原・燃料化、固形燃料化(RPF、RDF)などがあり、このうち、ごみ焼却発電は近年重要なエネルギー源として改めて注目を集めるようになってきている。
一方、マテリアルリサイクルは、廃プラスチックをプラスチックのまま原料にして新しい製品をつくる技術。1970年代に誕生し、現在、国内には数百社のメーカーがある。
マテリアルリサイクルされるのは、これまで主に産業系廃プラスチックだった。プラスチックの製造、加工や製品の流通段階で排出される産業系廃プラスチックは、樹脂の種類がはっきりしている、汚れや異物が少ない、量的にまとまっているという理由から原料にしやすかったのだ。
また、容器包装リサイクル法が施行され、家庭や店舗、事務所から出る一般系廃プラスチックも、原料廃プラスチックの分別・品質管理・配合・製造加工技術の向上などにより、マテリアルリサイクルの対象となるものがPETボトルを中心に増えている。
そしてケミカルリサイクルだが、これは廃プラスチックをガス化や油化することによって再利用する手法である。
例えば、廃プラスチックを油化する技術であるが、プラスチックは石油が原料なので、製造と逆のプロセスをたどれば石油に戻る。1970年代後半から廃プラスチック油化技術の開発が進められ、その技術はほぼ確立されている。
しかしながら、プラスチックを低分子状態に戻すプロセスに新たなエネルギーを必要とすること、設備投資などから実用化にはコスト面での課題が残り、なかなか実用化が進んでいない。
(参考)
一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識2023」
経済産業省資源エネルギー庁「カーボンニュートラルで環境にやさしいプラスチックを目指して(前編)」
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化学メーカーではケミカルリサイクルに向けての動きが活発になってきている。
今回、三井化学はCFP、プライムポリマー、花王と協力してケミカルリサイクル由来の誘導品(化学品・プラスチック)の製造・販売のスキームを確立した。その意味は大きいだろう。
取材・文/峯亮佑