カーボンニュートラル時代の地域課題解決に向けて、先進的な取り組みの事例を紹介する「地域DX・GX 新インフラ創造プロジェクト」が、3月上旬に東京都大田区の羽田イノベーションシティ「PiO PARK」で開催された。
「PiO PARK」には、主催の大田区とイベントを企画したみらいリレーションズが選定した、脱炭素に結び付く新たな技術を持つ企業や、新インフラ産業の種となるアイデアが集結。会場とオンライン配信をあわせて、企業や自治体の関係者、研究者など約150人が参加した。
太田区が目指す「SDGs未来都市」を支える企業たち
大田区はSDGsの達成に向けた優れた取り組みを提案する都市として、内閣府の2023年度「SDGs未来都市」、「自治体SDGsモデル事業」に選定されている。
企業の稼ぐ力を強化し、区民のQOL向上につながるイノベーションを将来にわたって起こし続けるというコンセプトのもと、区内外での公民の連携創出にも取り組んでいるが、「地域DX・GX 新インフラ創造プロジェクト」もそうした取り組みのひとつ。地域脱炭素の実現に向けて産学官が集い、連携を深めながら、カーボンニュートラル時代の地域課題解決につながる先行事例を、全国に発信することを目的としている。
冒頭の挨拶に立った大田区環境清掃部の山田良司氏は、「環境負荷低減のための行動を行ないながら、どう地域課題を解決していくか。既存のやり方ではなく、斬新なアイデア、発想を、DXを使いながらどう実現させていくかなど、大田区として何か発信できないかというのがこのイベントです」と説明。
「今までなかったようなイノベーション、ゼロからイチを作るような新しい産業を起こしていきたい。国内はもとより海外ともつながる羽田空港があり、極めてレベルの高い中小企業が、東京で一番集積している自治体だからできることだと考えています」と話していた。
会場ではさまざまな企業、団体がブースを構え、このブースを順番にまわるツアー形式で、各社の取り組みが紹介された。ツアーは二部制で第一部では「都市型再エネ創出革新プロジェクト」が発表された。
最先端技術を誇る各社の「都市型再エネ創出革新プロジェクト」
テスノロジーとグローバルエナジーのブースでは、「都市部でも再エネ自家消費100%実現を可能にする圧倒的かつ高効率な小風力発電」について、デモを交えながらプレゼンテーションを実施。
桑田とイケヤフォーミュラは、大型蓄電池を使用し、同時に複数台のEV車の急速充電を可能にするシステムを紹介。会場にはイケヤフォーミュラの小型EV車も展示されていた。
台湾プラスチックグループの台湾プラスチックジャパンニューエナジーは、日本向けに展開する家庭用ハイブリッド蓄電システムを展示。グループ会社からの調達による、電池の内製率70%という強みが紹介された。
電力スマートメーターのシェアで国内1位を誇るほか、エネルギーマネージメントシステム(EMS)やスマートロック等を手がける大崎電気工業は、企業の脱炭素の取り組みをサポートするソリューションを紹介。
省エネ・蓄電池ビジネス担当 長谷川浩史プロジェクトマネジャーは「専任の担当者が他社の製品やサービスも含めて、最適な提案をできるのが強み」とアピールした。
また、電気代の高騰や、電力会社による市場連動型料金メニューの追加、太陽光など再生可能エネルギーの拡大といった、市場を取り巻く背景についても説明。太陽光自家消費、蓄電池制御、市場連動型の電力調達を、AIで自動制御して自社に最適化することでコスト削減をはかる、新サービスを提供予定であることも紹介された。
このほか、東京工業大学発のベンチャーであるシグマエナジーは、災害時などに太陽光発電を遮断する安全装置の必要性に言及。自社が開発する直流ハイブリッドスイッチを、デモを交えて紹介していた。
「地域DX・GX 新インフラ創造プロジェクト」は2023年2月に第1回が実施され、2024年3月2日に開催された今回のイベントが第2回となる。なお、当日の模様はイベントのサイトにて無料公開されており、アーカイブ映像でも見ることができる。
https://events.mirairelations.co.jp/
取材・文/太田百合子