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「うだつが上がらない」とは、うまくいっていない状況を表すことわざである。出世や金銭面でのマイナス表現として使われるが、使い方を正しく理解しているだろうか。
本記事では、ことわざの意味から由来・語源、言い換える場合の類義語まで広く解説していく。具体的な使いどころとして、例文を知りたい人も要チェックだ。
「うだつが上がらない」とは
はじめに、ことわざの意味と漢字表現、語源・由来について解説していく。
■ 意味
「うだつが上がらない」を辞書で引くと、意味は以下の通り。
地位・生活などがよくならない。ぱっとしない。 [補説] 梲2を設けたのが物持ちの家だったからとも、「梲が上がる」が棟上げをする意の大工言葉から転じて志を得る意となったことからともいう。 |
上記で地位や生活などがよくならないとある通り、「出世や昇進がかなわない」「金銭的に恵まれない」「生活がぱっとしない」といった意味が、このことわざにはある。
「ぱっとしない」には「運がよくない」の意味も込められ、仕事やプライベートがなかなかスムーズにいっていないことも指す。
ちなみに「うだつ」自体は、屋根に取り付ける柱や防火壁を指す。建築用語を意味する時は漢字で表現されるが、ひらがな表記が一般的だ。
漢字表現については、以下で詳しく説明する。
■ 漢字表記
「うだつが上がらない」の漢字表記は、「梲が上がらない」が一般的だ。そのほか、「卯建」「宇立」などの字で表現されたこともある。
■ 語源・由来
「うだつが上がらない」の語源は、「うだつ」を「梲」と書く場合と、「卯建」と書く場合の2パターンある。
まず「梲」とは、「(家の完成を担う)棟木を支える短い柱」のこと。梲を上げられないとは、「家を建てきれないほどお金に余裕がない」ということだ。
また、梲は構造上、棟木に上から押さえつけられているように見えることから、「出世や昇進できない」という意味も持つようになったと言われている。
また、「卯建」は、江戸時代に装飾の一環として取り入れられた防火壁を指す。防火壁こそ裕福の象徴であり、金銭的に恵まれていない家を指し「卯建(うだつ)が上がらない」と言われるようになったという。
「うだつが上がらない」の使い方
「うだつが上がらない」は、意味の通り、「出世や昇進ができない」「金銭的に裕福になれない」「生活に余裕がない」ことを示す時に使える。
ちなみに否定形のみ適用され、うまくいくことを指し「うだつが上がる」と表現するのは間違いであると覚えておこう。
例文を交えた使い方は、次の通りだ。
■ 使い方(1)謙遜の意を込めて使う場合
出世や昇進できない意味を持つ「うだつが上がらない」は、自分を謙遜する表現として、以下のように適用できる。
【例文】
・私はまだまだうだつの上がらない平社員ですので、〇〇さんを見習ってこれからも精進してまいります。
・うだつが上がらない私をフォローしてくださり、いつも感謝しております。
ビジネスシーンにおいて、自分の現状を報告する機会は少なくない。クライアントや上司から「有望株と聞いているよ」などと言われた時に、上記のような表現ができるといいかもしれない。
■使い方(2)第三者の悪口・噂話
「うだつが上がらない」は、地位や生活に対するマイナス表現のため、第三者の悪口や噂話としても使える。
・〇〇さんはいつまで経ってもうだつが上がらないので、他の人に期待する方が良いかもしれない。
・〇〇さんは長年勤めているが、なかなかうだつが上がらないものだな。
上記のような使い方をする場合、悪口や噂話の対象となる本人の前では口にしてはならない。血縁関係などごく親しい人であればまだしも、同僚や上司といったビジネス関係の人に直接言うとトラブルの元である。あくまで本人のいないところで使用しよう。
■使い方(3)状況の悪さを伝える時
「うだつが上がらない」は人ではなく、ぱっとしない状況を指して、以下のように表現することもできる。
・最近は客足も遠のきつつあり、なかなかうだつが上がりません。
・うだつが上がらない状況ではありますが、社員一丸となって改善策を練っております。
仕事の進捗や営業報告をする際に、あまり良くない状況を伝えるのは何かと気を遣うものだ。ビジネスシーンにおける婉曲表現として重宝するだろう。
「うだつが上がらない」の類義語
次に、「うだつが上がらない」の類義語を3つ紹介する。先述の通り、他者の悪口としても捉えられやすいため、あわせて覚えておこう。
■「鳴かず飛ばず」
「鳴かず飛ばず」とは、「何の活躍もできないでいる様」を表すことわざだ。「将来に備えて準備し、機会を待っている」という意味もあるが、いずれにせよ向上していないという点では「うだつが上がらない」と同じだ。
■「芽が出ない」
「芽が出ない」とは、植物の成長段階にかけたことわざである。発芽しないように、「注目される機会がない」「うまくいかず留まっている」ことを意味する。
■「甲斐性なし」
「甲斐性なし」とは、「頼りがいがない」「情けない」といった意味だ。「甲斐性」は「自分の役割を果たす能力」を指す。打消しになると、主に人のぱっとしない態度や行動を表現する言葉として使われる。