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日本企業に求められる「顧客体験向上」を実現するための3つのポイント

2024.04.02

生活者に支持される顧客体験を創出するために、企業はどのような施策を講じるべきなのだろうか?

KPMGコンサルティングはこのほど、KPMGインターナショナルが2023年に日本を含む21の国・地域で実施したブランドの顧客体験に関する調査「Customer Experience Excellence 調査(CEE調査)」をもとに、日本企業およびブランドの顧客体験に関する調査の結果と、そこからみえた顧客体験の構築・向上における重要な要素やトレンドの変化などをまとめたレポート「生活者に支持される顧客体験に関する調査2023-2024」を発表した。

本レポートは、KPMGが14年間にわたりブランド調査を実施するなかで定義した優れた顧客体験を構成する「パーソナライズ」「親密性」「利便性」「誠実性」「期待の充足」「問題解決力」からなる「Six Pillars(6つの要素)」や、「バリュー(価格に見合った価値)」「推奨度」「ロイヤルティ(今後も使い続けるか)」「各タッチポイントチャネルの満足度」などについて評価を行い、「CEEスコア」として集計している。

今年で4回目となる日本の調査では、娯楽・レジャーや物流、小売業界のほか、今回新たに自動車業界を加えた10のセクターを対象に、235のブランドのうち有効回答数100以上を獲得した192のブランドについて、顧客体験の卓越性を示すCEEスコアをもとにランキングするとともに、Six Pillars各要素の重要度の推移や変化し続ける顧客ニーズに合わせて柔軟かつ迅速に対応するための視点などについて考察している。

1. Six Pillars:優れた顧客体験を構成する6つの要素と重要度

Six Pillarsの6つの要素のなかで、最も重要度が高い要素は「パーソナライズ」となっており、生活者がより自身のニーズやライフスタイルに最適化されたサービスや製品を求めていることがうかがえる。また、この3年間で「期待の充足」の重要度が低下する一方で、「誠実性」と「親密性」の重要度が増している。

生活者が期待するサービスや体験を得られるだけでなく、生活者は企業やブランドに対する信頼と、感情的なつながりや共感をより重視することが明らかになった。一方、他の要素に比べて重要度が低いのが「利便性」と「問題解決力」で、これらの要素がサービス利用における当然の要素と捉えられており、ブランドに対する共感や差別化に大きくつながるものではないと考えられる。

【CEEスコアにおける各要素の重要度】

2.CEEスコアとSix Pillarsスコアの平均推移

今年の日本の調査対象ブランドの平均CEEスコアは、過去3年間の調査のなかで最高スコアを記録した。日本の企業やブランドのなかでテクノロジーの活用やサステナビリティへの取組みが浸透しつつあり、それらが生活者から一定の評価を獲得し始めていると考えられる。また、6つの要素のなかで唯一、「期待の充足」が前回の調査から平均スコアを下げており、生活者の期待水準の上昇に企業やブランドのサービスレベルが追いついていないことを示していると考えられる。

【日本の調査分析対象ブランドにおけるCEEスコアおよびSix Pillarsスコアの平均推移(2021~2023年)】

3.日本のトップブランド

今回の調査におけるトップ10ブランドには、非日常や高級感を演出するエンターテインメントリゾートのほか、ラグジュアリーファッションブランドやスポーツブランド、自動車メーカー、百貨店などが並んだ。また、前年の調査で30位以内にランクインしたブランドの60%が、今年も30位以内にランクインしており、顧客体験評価の上位ブランドはその高い評価を維持し続けていることがわかった。

【日本の調査分析対象におけるCEEスコア上位30ブランド(2023年)】

CEEスコアとブランドロイヤルティは強く結び付く、「バリュー(価格に見合った価値)」は顧客体験評価のうえで必ずしも重要ではない、トップブランドほど生活者との情緒的なつながりを実践していることが読み取れる。

【日本の調査分析対象のCEEスコア上位10ブランド、11~30位ブランド、それ以外のブランドの平均スコア比較】

4.セクター別概況

今回の調査では、「娯楽・レジャー業界」が前年に引き続き最も高い顧客体験評価を獲得した。2番目には今年新たに調査対象に追加した「自動車業界」が、3番目が前回から1つ順位を上げた「小売(食品以外)」となった。調査対象に自動車業界が加わったことで多くのセクターが順位を下げるなか、「物流業界」は前回から順位を上げている。

【セクター別平均CEEスコアランキング(カッコ内は前回比)】

5. 日本企業に求められる顧客体験向上のポイント(変革への視点)

■AIによる「パーソナライズ」の進化、そして「誠実性」とのバランス

進化を続けるAI(人工知能)によって、より高度な顧客理解やリアルタイムなパーソナライゼーションが可能となる一方、企業やブランドは、これからの顧客体験のなかでAIをどのように活かし、顧客の感情を掴み支持を得るかが今後の大きな命題となる。また、データの取得やカスタマイズされた体験に対して、抵抗感や不快感を示す顧客も一定数存在することから、企業やブランドは、顧客のデータがどこまで取得され、どのように活用されているのか、データが安全かつ適切に管理されていることを真摯に説明、明示することが求められる。

■「親密性」を高める情緒的な体験価値が差別化のカギ

これまで日本の企業・ブランドは、サービスや製品の機能的価値に根差したサービス改善に取り組み、発展を続けてきたが、モノやサービスがあふれた現在において、生活者から選ばれ、関係を維持し続けるためには、さまざまな接点で生じる感情的なつながりや愛着、そしてブランド・企業が発するメッセージやストーリーに対する共感が必要だ。そのためには、顧客1人ひとりに真摯に向き合い、感情的なつながりや共感を生み出す顧客体験を実現することが、ブランドの大きな差別化要因となる。

■変化を続ける顧客ニーズに合わせて、柔軟に迅速に対応するための組織のオーケストレーション

顧客は日々さまざまなサービスや情報に触れており、それに伴って期待するサービスレベル、さらには価値観も変化していく。あらゆるタッチポイントで矛盾なく、すべてにおいて顧客中心主義を貫いた柔軟な変化と、迅速な施策実行を続けるには、組織内で部門を跨いだシームレスな連携が欠かせない。優れた顧客接点(フロント)を実現するためのオペレーションやサプライチェーン(ミドルオフィス)、その前提となる人材育成や経営管理(バックオフィス)までの連携、すなわちオーケストレーションが求められている。

出典元:KPMGコンサルティング

構成/こじへい

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