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アカハラとはアカデミックハラスメントの略称で、大学などの教育機関や研究機関で起こるハラスメントのことである。
このアカハラが近年問題視され、大きな話題となっているのだ。本記事では、各大学のガイドラインから読み解くアカハラの定義と相談窓口について解説していく。
アカハラ(アカデミックハラスメント)とは
アカハラはパワハラの一種で、力関係により起こるハラスメントだ。ここでは、アカハラの定義や具体例について解説していく。
■アカハラの定義
アカハラの定義は、大学などの教育機関や研究機関で起こるハラスメントで、力関係による強要や嫌がらせなどによるハラスメント行為のことである。
教育の場での指導や監督などの強い立場の者が弱い者に対して行なう行為のため、精神的、身体的な被害だけでなく、教育の自由や創造性も阻害する原因にもなる。
一般的に大学の教授が学生に対して起こすハラスメントと想像する人が多いと思われるが、職員間や学生同士でもアカハラは存在する。どのような関係であっても、教育機関などでの立場の強い者から弱い者へのハラスメント行為は、被害にあった学生や研究者のキャリアに大きな悪影響を与えることが問題となっている。
■アカハラの具体例
アカハラには、以下のようないくつかの種類がある。代表的なものを紹介しよう。
・不公平な指導や評価
教授の学生に対する不適切な指導や、気に入る、気に入らないなどにより不公平な評価を行なうなどが挙げられる。
・研究活動の妨害
研究に必要な資料などを提供しないことや、研究をさせないためにあえて研究の時間に雑用をさせることが挙げられる。また、望んでいない研究をさせたり、研究をさせなかったりする行為もアカハラになる。
・罵倒、暴言、暴力などの威嚇
突き飛ばしたり叩いたりする身体的な攻撃や罵倒、暴言などの発言、誹謗中傷なども当然、アカハラに該当する。
また、ものを投げたりして威嚇するような行為もあげられる。
・研究成果などの盗用
学生が行なった研究成果や論文などを、教授が自分の結果として発表することはアカハラになる。また、学生の論文などに対して、自分の名前を入れるように強要する行為も同様だ。
・進級や卒業の妨害
教授が学生に不当な理由で単位を与えなかったり、卒論の提出を認めなかったり、評価しなかったりすることが挙げられる。他にも、留年することを強要したり、退学を強要することもアカハラになる。
・進学に対する妨害
進学に必要な情報を与えなかったり、希望していない先への進学を強要したりすることもアカハラになる。
・就職に対する妨害
就職に必要な情報を与えなかったり、就職先を勝手に決めたりすることが挙げられる。また、就職活動をしないように強要したり、就職先に不利になるような情報を流したりすることもアカハラになる。
・経済的負担の強要
実際は研究費として大学などから支給されている費用を、学生などに負担させることもアカハラになる。また、論文のチェックをすることによる金銭を強要することもアカハラだ。
・プライバシーの侵害
私生活などの職務に関係のない情報を得ようとしたり、プライベートに踏み込んだりすることもアカハラになる。
大学のアカハラ対策とガイドライン例
大学などで実際にアカハラにあった場合、どうすればよいのだろうか。ここでは、いくつかの大学のアカハラ対策とガイドライン例について解説していく。
■東京大学のアカハラ対策
東京大学のアカハラ対策としては、「東京大学アカデミックハラスメント防止宣言」によりアカハラの防止と解決にあたっていく決意を述べている。その中で、部局ごとの教育や研究現場ごとの実情に沿った対応や環境改善に努力することが重要としている。
また、それぞれの部局が自らの責任において、アカハラの防止と解決のための体制を整えることが大切と述べている。他にも、東京大学では、相談員にアカハラなどのハラスメントを相談できる「東京大学ハラスメント相談所」を設置して、相談から解決への調整を行っている。
■一橋大学のアカハラ防止ガイドライン
一橋大学には、ハラスメント防止ガイドラインがあり、その中にアカハラ防止についての記載がある。教育上の指導には時には厳格さが必要不可欠であるが、指導を受ける側の感じ方によってはハラスメント行為となる。
そのため、最も大切なことは「指導する側と指導を受ける側の適切なコミュニケーション」だと記載されている。
またアカハラを受けた場合は、一橋大学にも専門相談員が話を聞いてくれるハラスメント相談室が設けられているようだ。
■早稲田大学のアカハラ防止ガイドライン
早稲田大学にも、アカハラを含むハラスメントに対するガイドラインがある。
アカハラかどうかの判断は、指導の方法が多様であり、指導を受ける側の感じ方も個々によって違うため難しい部分がある。しかし、教育においては、指導する側と指導を受ける側のコミュニケーションが必要のため、指導を受ける側が意義申立てをする機会が必要であると記載されている。
早稲田大学でも、ハラスメントに関する相談を受けるための相談窓口を設置している。
※出典:「早稲田大学におけるハラスメント防止に関するガイドライン」
大学内の相談窓口を活用するのが基本
今や、ほとんどの大学でハラスメントに対する相談窓口が設置されている。そのため、アカハラを受けてしまった場合には、大学内の相談窓口に相談することが重要になるだろう。
大学の相談窓口を頼ることは、解決への近道にもなる。また、アカハラの立証は難しいケースが多いため、大学の相談窓口へ行く際、できるだけアカハラの証拠を集めることが有効だろう。
文/小島 章広
信用金庫に8年、システム開発の会社に現在まで20年以上勤務。社会保険労務士・行政書士の資格を保有し、人事労務関係、社会保険関係の記事を中心に6年以上執筆活動を続けている。