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休日出勤をして、代わりに本来の労働日を休日にすることを代休もしくは振休(振替休日)という。代休や振休という言葉を聞いたことがある人は多いだろうが、何が違うのかがわかる人は少ないだろう。
また、両者の違いを知らなかったことで、実は今まで損をしていたかもしれない。そこで本記事では、代休と振休の違いをわかりやすく解説するとともに、月跨ぎに取得する場合や期限などのルールについても解説していく。
代休と振休(振替休日)の違い
代休も振休も本来休日だった日に労働をする代わりに、労働日を休日にすることは同じである。しかし、実は意味が異なるのだ。
ここでは、代休と振休の詳細や、違いについて解説していく。
■代休とは
代休とは、休日と定められていた日に労働をした後に、他の労働日と定められていた日を休日にすることだ。
代休のポイントは、もともと休日と定められていた日に労働した後に、その代償として休日労働日以後の特定の労働日を休みとすることである。そのため、休日労働する前に代わりの労働日を休日にすることは、振休であり代休にはならない。代休も労働基準法で定義された用語ではないが、振休と同様に厚生労働省の通達などで代休の一般的な考え方が示されている。
・代休による労働は休日労働か?
代休は休日労働が行なわれた後に労働日を休日にするため、前もって休日を振り替える振休とは異なり、法定休日に労働した場合には休日労働になる。そのため、法定休日に労働した日に対して、使用者は労働者に35%以上の割増賃金を支払わなければならないとされている。
ただし、休日には法定休日の他にも、使用者が自由に決められる所定休日がある。労働基準法では、使用者は労働者に毎週1回もしくは4週間に4回の法定休日を与えればよいことになっている。そのため、週休2日の会社などは、休みの内の1日は法定休日に、1日は所定休日になるのだ。
例えば、所定休日に休日労働を行ない、事後に代休を取得しても、所定休日労働には割増賃金を支払う必要がないため、基本的には割増賃金は支払われないのだ。
・代休取得のタイミング
代休は、休日労働をした後に他の労働日を休日にすることだ。代休の取得日については法令上明確な決まりがないが、労働基準法第115条の「賃金その他の請求権の時効」が2年であるため、代休の請求権も2年と考えられる。
しかし、できるだけ休日労働をした日の近くに取得することが、望ましいとされている。
■振休(振替休日)とは
振休とは、あらかじめ休日と定められていた日を労働日とする代わりに、他の労働日と定められていた日を休日にすることだ。
振休のポイントは、もともと休日と定められていた日に労働する前に、休日と労働日をあらかじめ振り替えておくことである。そのため、休日労働した後に労働日を代わりに休日にすることは、振休にはならない。
振休は労働基準法で定義された用語ではないが、厚生労働省の通達などで振休の一般的な考え方が示されていることを覚えておこう。
・振休による労働は休日労働か?
労働基準法第35条では、使用者は労働者に毎週1回もしくは4週間に4回の休日を与えなければならないと定められている。この労働基準法に定められた休日のことを、法定休日という。また、この法定休日に労働した場合には、労働基準法第37条にて、使用者は労働者に35%以上の割増賃金を支払わなければならないと定められている。
しかし、振休の場合は休日と通常の労働日との交換のため、たとえ法定休日に労働したとしても休日労働にはならない。そのため、基本的には、使用者が労働者に振休に対する割増賃金を支払われなくても、問題ないとされている。
・振休取得のタイミング
振休はあらかじめ休日に労働することがわかっている場合に、休日労働日前日までに代わりの労働日を休日とすることができる。この振休の取得日は、就業規則などで労使間の合意がとれていれば自由に取得が可能だ。
例えば、法定休日出勤よりも前であっても取得可能であるし、週跨ぎ、月跨ぎの取得も可能である。
・休日出勤により法定労働時間を超えたらどうなる?
また、労働基準法第32条では、1日8時間、1週40時間を法定労働時間としている。この法定労働時間を越える労働をした場合には、労働基準法第37条にて、使用者は労働者に25%以上の割増賃金を支払わなければならないと定められている。
例えば、週跨ぎや月跨ぎで振休を取得する場合、休日出勤をした週の労働日が通常週より1日多くなるため、1週40時間の法定労働時間を越える可能性が高くなる。その場合、1週40時間の法定労働時間を越えた時間に対しては、25%以上の割増賃金が支払われないといけないこととなっている。
※出典:「労働基準法第32・35・37条 | e-Gov法令検索」
■代休と振休の違い
以上のことから、代休と振休の違いは、休日出勤した後に以降の労働日を休みにするか(=代休)、あらかじめ休日出勤の代わりに労働日を休みにすることを決めておくか(=振休)である。また、休日出勤の後で労働日を休みにする代休の場合は、法定休日に出勤した日の労働は休日労働になり、35%以上の割増賃金が支払われる。
一方、あらかじめ休日出勤の代わりに労働日を休みにする振休の場合は、休日出勤した日の労働が休日と労働日の交換になるため、休日労働にはならない。そのため、振休の場合は法定休日に労働しても、割増賃金は支払われない。
代休と振休はどっちが得?
代休と振休の違いは、休日労働の代わりに労働日を休日とするのが休日労働の「事前」か「事後」かの違いだ。
些細な違いに思われるかもしれないが「事前か事後かの違い」が、労働者にとっては大きな違いになることを覚えておこう。
具体的には、法定休日に労働する代わりの休日を事前に決める振休の場合は、法定休日に労働しても休日労働にはならないため「割増賃金が発生しない」。一方、法定休日に労働する代わりの休日を事後に決める代休の場合は、法定休日に労働したら休日労働になるため「割増賃金が発生する」からである。
そのため、代休の方が振休よりも、労働者にとってはお得ということが考えられるのだ。
まとめ
例えば、就業規則に振休についてのことしか記載されていない会社であっても、法定休日労働の代わりに事後に労働日を休日とした場合は、代休として扱わなければならない。
しかし、この場合でも振休として処理をして、割増賃金を支払わない会社もある。代休と振休の違いを知らないと損をしてしまうケースがあるため、違いは知っておいたほうがよいだろう。
文/小島 章広
信用金庫に8年、システム開発の会社に現在まで20年以上勤務。社会保険労務士・行政書士の資格を保有し、人事労務関係、社会保険関係の記事を中心に6年以上執筆活動を続けている。