努力しても漫才で勝ちきれない万年2位のコンビが抱く葛藤
これといった挫折経験もなく、圧倒的なスキルでコンスタントに笑いをかっさらう。スマートに漫才をこなす2人にも、絶望的な課題があった。それは〝どれだけウケても勝ちきれない〟こと。
「僕らって、誰よりも2位を取っているコンビなんです。どんなに努力しても、漫才がうまくても、賞レースで1位だけはなかなか取れない。これまでずっと葛藤してきました」(楢原)
ゆるがない目標である『M-1グランプリ』優勝。ずっとツーマンライブを行なってきた戦友・令和ロマンとファイナルステージに進出したが、ヤーレンズは僅差で2位となった。
「いろんな人に『M-1準優勝おめでとう』って言われても、楢原が『おめでたくないですけどね』って皮肉を返すんですよ。そこは、『ありがとうございます』って言いなさいよ(笑)」(出井)
かつて流行した「2位じゃダメなんでしょうか」というフレーズ。その価値観が世の中で受け入れられたこともあったが、彼らは2位じゃ満足しない。
「確かに、こうしてインタビューしてもらえたり、収入が増えたりしたけど、僕にとってそれは大事なことじゃない。決勝直後はずっと悔しかったです。チャンピオンって肩書がないとできないことがいっぱいある。うん、やっぱり2位じゃダメですね」(楢原)
「僕は悔しさ半分、うれしさ半分でした。ずっと停滞している感じがつらかった。優勝するためには、どこかで違う刺激が必要だなと思っていました。そういう意味では、準優勝して人生が変わった喜びはあります」(出井)
『M-1グランプリ』準優勝という躍進で知名度が一気に高まったヤーレンズ。テレビの仕事も格段に増えたというが、あくまで 漫才に軸足を置く一途な姿勢は変わらない。
「今年は、漫才に支障が出そうな仕事は受けないと思います。例えば、長期の海外ロケとか。どんなに良いギャラをいただいても、その仕事をやる時間があったら漫才を磨きたい」(出井)
ファンが増えても、広く名が知られても、野望の到達点にはいまだ及ばない。
「準優勝したからこそ結果を出さなきゃいけないんで、これから本当にしんどい1年になると思います」(出井)
「今年は漫才が最優先ですね」(楢原)
『M-1グランプリ2024』こそは、勝ちきることができるのか。人生を捧げた2人の戦いは、始まったばかりだ。