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世界のCEO1200人に聞いた2024年のビジネス見通し、3分の2が収益成長率と収益性の増加を見込む

2024.04.01

急速なインフレや地政学的なリスクにAIの台頭など、ビジネスシーンでも見通しが不透明な状況が続いている。こうした情勢の中、適宜判断に迫られる世界のCEOたちは2024年がどのような年になると予想しているのだろうか。

EYは、最新のM&Aに関する調査レポート「EY CEO Outlook Pulse survey」を発表。世界21カ国1,200人のCEOを対象に、企業の将来の見通し、課題、ビジネスチャンスなどに関する分析をしたので、詳細をお伝えしよう。

企業のビジネス変革が加速!世界のCEOは2024年の収益成長率、収益性、ディールメイキングの増加に期待

本調査でCEOは、2024年の自社の見通しについて、世界経済への逆風が強まる中でも収益成長率と収益性を向上させることができると予想していることが明らかになった。

CEOの4分の3(日本76%)が、世界経済は低成長または停滞が続くと予想しているが、64%が収益成長率の増加を、63%が収益性の増加を見込んでおり、低成長の環境下でも大半が自社の業績見通しに強気な見方を示している。

日本のCEOも9割強(93%)が低成長・停滞と予想している一方で、86%が収益成長率の増加を、88%が収益性の増加を見込み、世界のCEO以上に強気な見方を示している。

根強いインフレ圧力による「高金利長期化」に備えているCEOは78%(日本97%)を占め、「事業コストが増加すると思う」と回答したCEOは半数以上(57%)、日本では89%と9割近くに上った。

日本は、他国に比べてインフレ率が低かったことに加え、日本銀行のイールドカーブ・コントロール(YCC)および、量的・質的緩和(QQE)政策の枠組みの行方などが日本のCEOにとって大きな懸念になっていると考えられる。

EY Japan ストラテジー・アンド・トランザクション リーダー 梅村秀和氏は以下のように述べている。

「CEOは、世界経済の停滞が続くと予想していますが、そうした環境に臆することなく収益性を追求しています。そして、新たなレジリエンス(回復力)と自信を原動力に、成長に向けて、効率性向上やビジネス変革の機会を模索しています。

M&A市場は今後回復基調に向かうことが予想され、多くのCEOがビジネス変革プランの再考や賢明な投資先の模索、将来的な提携に向けた基盤の構築などに真剣に取り組んでいます。

日本のCEOが今後についてグローバル全体と比べても強気な姿勢を見せた理由としては、円安によって恩恵を受けた企業も一定数あったことに加え、M&Aや株式市場が、過去数四半期にわたって非常に好調だったこと、また、高い海外投資、消費者信頼感、日本への人材流入などが理由と考えられます」

58%のCEOが 変革を加速させる予定。2024年は大規模ディ―ルの場に戻る企業が増加すると予想される

CEOはディール市場の活況が戻るという見方を示しており、回答者のうち10人に8人(79%)が100億米ドル以上の大型M&Aが増加すると予測しており、36%が今後12カ月の間にM&A取引を積極的に進める予定で、さらに29%がダイベストメント(事業売却)を検討していることが判明。

M&A活動の観点から見ると、依然として米国が最も望ましいM&A投資候補国となっており、その後に日本、英国、中国、インドが続く。

最も高い買収意欲を示しているのは製造業で、僅差でバンキング・キャピタルマーケット、保険、消費財、モビリティが続き、上位5位を占めていた。

「日本は、M&A投資候補国上位であるとともに、投資から資金を引き揚げるダイベストメントにおいても上位3位に入っています。

これは日本が変わらず堅調で高い技術力をもった産業界および購買力の高い消費者基盤を有して世界有数の経済大国と認められていると同時に、日本が金利を最低水準で維持してきたことが、輸出国にとって競争力と収益を高め、日本への投資や事業拡大を目指す投資家にとってプラスに働いたのではないでしょうか」と梅村氏は述べている。

今回の四半期調査では、20以上の国のプライベートエクイティ(PE)企業の経営幹部300人超からも見解を収集し、投資やポートフォリオ管理に関する展望を探ったところ、CEOに対する意識調査の結果と同様に、PE企業の大半(71%)が大規模ディールの活発化を見込んでいることが判明。

また、70%が、2024年には企業のダイベストメントやカーブアウトが増加するだろうと回答していた。こうした調査結果は、前年に比べ、ディール市場の活気が増すことを示唆している。

効率性向上を主とする変革の加速

CEOの企業成長に対する自信の強まりは、加速する戦略的変革に裏打ちされている。本調査によると、ビジネス変革アジェンダの加速を検討しているCEOは58%に上り、2023年7月の21%からほぼ3倍に相当する著しい増加だ。

ビジネス変革においてCEOが特に重点を置いているのは、効率性向上とコスト管理の改善に向けた戦略の展開である。実際、CEOの42%、PE企業の45%が、運転資本の効果的な管理を優先事項に据えている。

また、CEOは、効率性の原動力としてテクノロジーを受け入れており、CEOの41%が効率性や事業業績の改善を目指して人工知能(AI)の採用を検討している。

そうした中、興味深いことに、CEOの4人に3人(76%)が、効率性向上の手段としてAIを受け入れつつも、そのテクノロジーは収益成長にはほとんど影響を与えないだろうと回答した。

梅村氏は、次のように述べている。「2023年が組織にとってポリクライシス(複合危機)への対応に振り回された過渡期であるとしたら、2024年は、それをうまく乗り切るための行動を実践する年と言えます。

ビジネスの運営コストがパンデミック前の水準に戻る可能性は低いとの認識から、ビジネス変革に対するCEOの考え方に変化が表れており、CEOは、成長に対して前向きな見方を維持しつつも、効率性とコスト管理の改善に主眼を置いた現実的なアプローチでビジネス変革を推し進めています」

2024年は世界人口の半分以上が選挙に関わる「選挙イヤー」、政治的不透明感や人工知能(AI)が生み出すフェイク情報などが懸念材料に

2024年は世界人口の半分以上が選挙に関わる年となるため、CEOは、今後12カ月間における地政学的リスクとそのリスクがビジネスに与える潜在的影響に敏感になっている。

調査対象となったCEOの4分の3以上(78%)、日本では9割以上(93%)が、地政学上の不確実性やビジネス課題をもたらすポピュリスト運動の可能性を懸念している。

また、76%、日本の94%のCEOが、2024年の主要な選挙でAIが政治広告に悪用される可能性があると懸念を持っている。

多くのCEOが、地政学的混乱の影響を反映した意思決定を行うことができると回答しているが、地政学的リスクの管理プロセスに関しては、回答者のほぼ半数(48%)が、その定義づけと有効性において改善の余地があると感じていた。

実際、98%のCEOとPE企業が投資プランの見直しの必要性に迫られていると回答。その内容は特定の事業からの撤退(CEO32%、PE企業38%)、または計画投資の延期(CEO42%、PE企業32%)など。

梅村氏は、次のように述べている。「政治の世界が企業の世界に与える影響はかつてないほどに強いものとなっています。

そうした中、今年は政治活動にAIが台頭し始め、悪用の恐れも懸念されるなど、新たなリスクが表出しています。CEOは、こうした状況に鑑み、自社の戦略プランを策定する上で地政学的混乱を考慮する必要性を十分に認識しています。

一方、リスク管理プロセスの有効性を懸念するCEOは依然多数を占めています。地政学的に不安定な環境を乗り切るためには、今こそ戦略の再評価と精緻化に取り組む必要があるでしょう」

関連情報
https://www.ey.com/ja_jp/ceo/ceo-outlook-global-report

構成/Ara

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