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「クラッシャー上司」という言葉を聞いたことはありますか?クラッシャー上司とは、クラッシャー(crusher)という石などを叩く機械と上司を合わせた造語で、意味は『部下をたたいて砕いてしまうクラッシャーのような上司』のことをさします。
クラッシャー上司は部下に恫喝したり暴力をふるったりはしません。むしろ部外からは、仕事ができると評判が良かったりもします。それなのに、その人の部下になると、多くの人がメンタル不調で休職したり、早々に異動願いを出して異動してしまったり、転職するなどして部署を去ってしまいます。
私はカウンセラーとして、日々さまざまなお悩みをお聴きしていますが、会社の人間関係に関するご相談はとても多く、その中には「上司と合わない」という訴えもあります。お聴きしていると、クラッシャー上司にあたってしまったなあと感じることも少なくありません。
今回は、部下をつぶしてしまうクラッシャー上司について、その特徴や、なぜクラッシャーになるのか、さらにクラッシャー上司から標的にされた時の対処法までを解説していきたいと思います。
クラッシャー上司の特徴
■共感能力が低い
共感能力とは、簡単にいうと「相手の立場にたって物事を考える能力」をいいます。たとえば部下から「頭痛がひどくて仕事に集中できません」と言われたとき、共感力がある人は自分が頭痛になったときを想像します。
すると「少し休む?」「薬は飲んでみた?」など、いたわりの言葉が出てくるものです。たとえ頭痛の経験がなかったとしても、何らかの痛みの経験は誰しもあるはずで、そこに思いを馳せれば言葉は出てきます。しかし共感能力が低い人はこれができないため「甘えるな」「言い訳だ」など、部下を突き放す言葉を吐いてしまいます。
■心身ともにタフ
短時間睡眠でも体力が回復したり、アルコールに強く二日酔い知らずだったり、嫌なことを言われても寝て起きたら忘れられたりと、肉体的・精神的にタフでリカバリーも早い人が多いのも、クラッシャー上司の特徴です。
そして彼らは、自分の体力や精神力は普通だと思っています。そのため、部下にも同じタフさを求めてしまいます。
■上層部からの受けが良い
肉体的にも精神的にタフなクラッシャー上司は、仕事は精力的にこなすうえ、仕事終わりの飲みなどにも付き合いがいい。叱責しても翌日にはケロっとしているので、上層部からは「付き合いが良くて性格もさっぱりしている」と高評価であることが多いのです。
■部下を信頼していない
クラッシャー上司は、部下を信頼していない傾向があります。そのため、双方で合意をとったはずの資料を、最後に自分がもう一度チェックして手直ししてしまうなど、部下の仕事に対するプライドを傷つけるようなことをしてしまいがちです。
■感情のアップダウンが激しい
たとえば挨拶がわかりやすい例です。挨拶をすると、ムスッとしている日もあれば、愛想よく返してくる日もある。同じクオリティの業務でも、日によって突然ダメ出しをしてくる。ミスをネチネチと怒る日もあれば、ドンマイ!と笑顔で修正を手伝ってくれる日もある。
このように感情の起伏が激しく、何が上司の地雷なのかがわからないと、部下がいつも上司の顔色を伺ってビクビクするようになってしまいます。
クラッシャー上司はなぜクラッシャーになるのか
クラッシャー上司はなぜクラッシャーとなってしまうのでしょう。これには大きく2つの要因があると考えられます。
1つは「環境要因」。その人の若手時代の環境が、今でいうところのブラック環境だったことが要因です。本来、仕事の感覚や価値観は、社会の変化とともにアップデートしていくべきですが、クラッシャー上司はそれができていません。そのため「自分が若手の頃はもっと仕事していた」「病は気のせい」といった、時代遅れの言葉が出てしまいます。
もう1つは「パーソナリティ要因」。上記特徴でもあげたように、共感力がない、タフ、感情コントロールができない、といった性質がそれにあたります。
自分が部下のときは長所であったことが、マネジメント側になったときにも長所であるとは限りません。むしろ短所となることもあるのですが、クラッシャー上司はその切り替えができていない人が多い傾向です。また、彼らはハラスメントには非常に気をつけているため、厄介さが表に出にくいです。そのために周囲も問題にしづらく、それがクラッシュを増長させてしまいます。
パワハラ上司との違い
ではクラッシャー上司はパワハラ上司とはどう違うのでしょうか。
パワハラ上司の根底は、上司自身のストレス発散、つまり「自分が楽になるため」です。しかし、クラッシャー上司の根底は「部下のため」。つまり上司自身は、部下思いの良い上司だと思っています。クラッシャー上司は自分がクラッシャーだと気付いていない人がほとんどですが、それはこの「自分は善意の人だ」という感情が理由です。