目次
「立つ鳥跡を濁さず」とは、見苦しさが残らないよう身辺をきれいにしてから去るべきだと説くことわざだ。去り際の戒めとしての意味を持ち、退職のシーンなどに当てはめられる。
本記事では、立つ鳥跡を濁さずの意味と由来、使い方や類義語・対義語まで解説していく。「飛ぶ鳥跡を濁さず」との違いを確認したい人も要チェックだ。
「立つ鳥跡を濁さず」とは?
「立つ鳥跡を濁さず」とは、去り際における美学や戒めを説くことわざだ。あらためて意味と由来、間違えやすいことわざを確認しておこう。
■意味
「立つ鳥跡を濁さず」を辞書で引くと、意味は以下の通り。
立ち去る者は、あとが見苦しくないようにすべきであるということ。退きぎわのいさぎよいことのたとえ。飛ぶ鳥跡を濁さず。 |
立つ鳥跡を濁さず(たつとりあとをにごさず)とは、とある場所から去る時とは、見苦しさが残らないようにきちんと整頓しておくべきだという意味だ。さらに去り際の戒めを説くと共に、引き際の潔さを例えた言葉でもある。
ちなみに「跡を濁さず」の元になっているのが「跡を濁す」という言葉だ。打消しにしなければ意味は反対になり、酷い状態を残して去るということになる。表記違いを防ぐと共に、「跡」を「後」、「立つ」を「起つ」や「発つ」と記すのも誤りのため注意しよう。
■由来
「立つ鳥跡を濁さず」は、水鳥の去り際に由来することわざだ。渡り鳥である水鳥は、定期的に場所を移して生活する習性がある。その飛び立ち際の水面が濁っておらず、きれいだったことからこの言葉が生まれたと言われているのだ。
ちなみに、安土桃山時代に記された辞書には「タツトリモアトヲニゴサヌ」という一節が登場し、16~17世紀頃に記された『北条氏直時分諺留』には「鷺はたちての跡濁さぬ」とある。これらのことから鳥は鷺を指し、古くから使われることわざと考えられるだろう。
■「飛ぶ鳥跡を濁さず」と「立つ鳥跡を濁さず」の違い
立つ鳥跡を濁さずとよく似た言葉が、江戸時代の俗語集に登場する「飛ぶ鳥跡を濁さず」ということわざだ。この二つは、漢字の違いのほか大差はないと言える。
立つ鳥跡を濁さずの誤用であると指摘する声もあるが、辞書で引くと「立つ鳥跡を濁さずに同じ」とされていることから、あながち間違いではないだろう。
「立つ鳥跡を濁さず」の使い方
「立つ鳥跡を濁さず」のことわざは、あらゆる去り際に当てはめて使用できる。主に退職・恋愛・旅先での表現として重宝されているため、例文と共に使い方を見てみよう。
■退職における例文
退職シーンに使える例文は以下の通り。
・長年勤めていた彼女だったが、引継ぎも片付けもスムーズで、これこそ立つ鳥跡を濁さずだ。
退職に限らず、転勤や転職などで、今の職場・会社を離れる時に使えるのが「立つ鳥跡を濁さず」のことわざだ。デスク周りの散らかりや抱えたまま放置された業務、借りっぱなしの制服などは、きれいに整頓・引継ぎしていくべきことを表せる。
■恋愛における例文
恋愛シーンに使える例文は以下の通り。
・フラれてしまったのは残念だが、立つ鳥跡を濁さずの精神で頭を切り替えるとしよう。
「立つ鳥跡を濁さず」は、恋愛が成就しなかった局面でも使える。この場合、きれいにして去るべしという意味ではなく、去り際の潔さを表すことが一般的だ。後腐れなく相手の元から去り、前を向くというポジティブな意味合いを指す。
■旅先における例文
旅先のシーンに使える例文は以下の通り。
・立つ鳥跡を濁さずと言うから、出発の時間までにきちんと部屋を元通りにしておこう。
水鳥が飛び立った後の水面がきれいだったという由来に最も近いのが、旅先でのホテルや旅館を後にするシーンでの使われ方だ。お世話になった人や場所に対し、感謝の気持ちを込めて片付けておくべきだという戒めとして使用される。
「立つ鳥跡を濁さず」の類義語
立つ鳥跡を濁さずのことわざには、よく似た意味の言葉が複数ある。場面により適した選択ができるよう、以下では3つの類義語を確認してみよう。
■原状回復
「原状回復」は、類義語としてまず挙げられる四文字熟語だ。字の如くとある状況から元通りにすることを指し、立つ鳥跡を濁さずと同等の意味を持っている。
ただし、退職や転職、転勤といった職場関係や旅先でのシーンには当てはめられるが、恋愛においては違和感が出るため言い換えは避けたい。
■大鳥たってあとを濁すな
「大鳥たってあとを濁すな」も、立つ鳥跡を濁さずと同様に、見苦しさが残らないようにと説いていることに変わりはない。ただし、鳥が大鳥であることから、芸能人など著名人の行動を表すことわざとして覚えておこう。
■有終の美
「有終の美」とは、物事を全うし、成果を見事にあげて美しい締めくくりを迎えることを意味する言葉だ。一般的に「有終の美を飾る」と表され、長年勤め上げた末の退職や転職に当てはめられる。