情報セキュリティは、コンピューターの誕生とともに始まった長い歴史を持つ分野です。その歴史は革新的な技術の出現と、それを悪用する者たちとの絶え間ない戦いの記録です。
本記事では、情報セキュリティの歴史をたどり、現代のサイバー攻防戦に至るまでの軌跡を解説します。
文明と情報セキュリティ
情報セキュリティのルーツは、コンピューターがまだ存在しない時代にまで遡ります。古代の暗号技術は、情報セキュリティの原型と言えるでしょう。例えば、紀元前5世紀にギリシアのスパルタ人が「スキュタレー」が暗号器具を開発しました。これは、特定の大きさの棒を使い、その棒に紙を巻き付けて上から下へと文字を書いていきます。紙を棒から解くと、意味のない文字列が現れるという仕組みです。
つまり文明が発達した社会では、こうした暗号を守るためのセキュリティは欠かせないものであり、それが情報技術の発達した現代の「情報セキュリティ」へと繋がっているのです。
コンピュータの時代の始まり
1940年代にコンピューターが登場すると、情報セキュリティの歴史は新たな局面を迎えます。第二次世界大戦中、連合国はドイツ軍の暗号機「エニグマ」を解読するため、アラン・チューリングらが開発した「ボンベ」という電子計算機を使用しました。これは、情報セキュリティとコンピューター技術が密接に関連している初期の例です。
スプートニク・ショック
情報セキュリティの歴史において、ソ連がスプートニクを打ち上げに成功したことが、米国に与えた影響は大きく、この出来事が情報セキュリティにおける転換点となりました。
1957年10月4日に打ち上げられたスプートニク1号は、人類史上初の人工衛星であり、この出来事は「スプートニク・ショック」として知られるようになりました。この成功により、米国は宇宙開発とミサイル技術の分野でソ連に後れを取っていると認識し、国家安全保障に対する深刻な懸念を抱くことになったのです。
「スプートニク・ショック」を受けて、米国政府は宇宙開発と科学技術の強化に注力するようになりました。この動きの一環として、1958年にアメリカ航空宇宙局(NASA)が設立され、宇宙開発競争が本格化しました。また、教育分野でも科学技術の教育を強化するための取り組みが行われました。
情報セキュリティの分野においても、この時期に重要な動きがありました。米ソ冷戦の緊張が高まる中、米国は通信の安全性を確保するために暗号技術の開発を進めます。1960年代には、政府機関や軍事組織で使用される暗号システムの開発が進みました。この時期に開発された技術が後の情報セキュリティ技術の基礎となっています。
電子メールの発展については、1960年代末から1970年代初頭にかけて、ARPANET(アーパネット)という、アメリカ国防総省の研究プロジェクトによって開発されたネットワークが重要な役割を果たしました。ARPANETは、異なるコンピュータネットワーク間でデータをやり取りするための技術を開発することを目的としており、1971年には、プログラマーのレイ・トムリンソン(1941ー2016)によって、異なるホスト間でメッセージを送受信するためのプログラムが開発され、これが電子メールの始まりとされています。電子メールの普及は、情報の伝達手段として革命をもたらし、後のインターネットの発展に大きな影響を与えました。
このように、スプートニクの打ち上げは、情報セキュリティを含む科学技術の分野において、米国に大きな影響を与えた出来事であり、その後の技術の発展につながる重要な契機となりました。