デザイナー松井諒祐の発想術に迫る
履きやすさにこだわりつつ、見る者を魅了するデザインのゴジラシューズだが、そのアイデアの源とは?
「数年前にホラーをテーマにしたファッションショーの仕事をさせていただいたんですが、その時に思いついたんですよね。ホラーと聞いてまず思い浮かんだのが、”墓場の地面から手が出てきて、何かを掴もうとするシーン”。それを形にしたのが今回のゴジラシューズの原点なんです」
誰もがイメージできる分かりやすい事象を意外なモノへと変換させる。そんな独自の発想力は靴だけでなく様々なジャンルのアイテムに注がれている。
2014年にアパレルブランドとして誕生した『ha | za | ma』。洋服を始めアクセサリーや財布、時計など幾多の商品を手掛けてきた。
【アーティストAdoさんとのコラボワンピース】
その名も「一凛の祈跡に添えるワンピース」。
奇抜さよりも普段使いを意識した『ha | za | ma』の正統派路線。
【惹き鉄となるカトラリー】
持ち手が拳銃型のナイフやフォークは、「口に銃口を入れるという、僕の厨二病あふれるお気に入りアイテムです笑」(松井さん)
すべてが唯一無二。鮮烈かつ強烈なアイテムを生み出す発想術について、もう少し聞いてみたいと思った。
「自分のアイデアの大元にあるのは昔から大好きなマンガやアニメの概念なんです。例えば、ドラゴンボールでスーパーサイヤ人になる時に雷や稲妻が走るような演出ありますよね?他のマンガでもパワーアップする時に雷が鳴るみたいな。そういう概念的なものを常にすくい上げているところがあるんです」
――それをどんな風にしてカタチに?
「僕はそんなに絵が得意ではないので、とにかくノートにキーワードを書きまくります。気になった言葉をいくつも書き殴って、ワードとワードをつなげていくんです。たとえ一つのワードがありふれた概念だとしても、何かと組み合わせれば新しい概念が生まれる」
「例えば、「セーラー服」と「スウェット」、どちらも誰もが知る普通のアイテムですが、それを掛け合わせたら新しいものが生まれる。そんな言葉のかけ算を僕は毎日のように考えてますね」
日々、新しい作品を求め、気になるキーワードをメモしては頭の中で言葉のコラボを繰り返す。時には目の前の仕事を放り投げたまま、ひとり会議に熱中してしまうこともあるとか。
そんな彼がデザイナーとして譲れないものとは?
「自分がやりたいと思ったら、それを絶対にやり遂げることです。もし99人がダメだと思っていても、自分が納得できるものならカタチにしたい」
「知り合いの方に聞いた言葉なんですが、”売れるものも売れないものも作れて一流だ”と。それに尽きると思うんです。自分がやりたいものを見せるためには、売れるものも作らなければならない。それを胸に仕事に臨んでますね」