先日開催された映画の祭典アカデミー賞で日本作品で初めて視覚効果賞を受賞した山崎貴監督の『ゴジラ-1.0』。世界中がその快挙に湧く傍らで、同様に話題となっていたのが監督始め出演者が履いていた『ゴジラシューズ』だ。
登壇者の歓喜の表情から視線を下げると、その足元にはゴジラの鋭い爪が神々しく光っていた。作品のインパクトに加え、衝撃的で攻撃的な足元のオシャレは一躍世界中に配信され、話題に。海外勢も注目した“ゴジラシューズ”を手掛けたのは、日本のアパレルブランド『ha | za | ma』のデザイナー・松井諒祐さん。
今回、松井さんにゴジラシューズ誕生のきっかけを始め、デザイナーとしてのこだわり、成功のヒントを伺った。
――まずは、アカデミー賞おめでとうございます。
「いえいえ、僕じゃないですが笑。ありがとうございます」
――授賞式でゴジラチームが履いていた靴ですが、誕生のきっかけから教えてください
「そもそもは、3年前に公開された映画『名探偵コナン 緋色の弾丸』にゲスト声優として出演された浜辺美波さんが舞台挨拶で僕のアイテムを履いてくださったのがきっかけでした。その時は拳銃型のヒールパンプスを提供したんですが、それを見た『ゴジラ-1.0』の岸田プロデューサーが気に入ってくださり、舞台挨拶用の靴を作ってほしい依頼されたんです」
「岸田さんは『映画のテーマと身に纏うものとの相関性があればさらに作品に奥行きが出るんじゃないか』とお考えだったみたいで、今回、作品のイメージに沿った靴を作らせていただきました」
――依頼された時のお気持ちは?
「ぶっちゃけ、『キターーー!!!』って感じでしたね。ゴジラと言えば国民的な大スターですし、日本が世界に誇る怪獣映画の金字塔ですから。自分がメジャーブランドに認められたという感じがしてとても嬉しかったです。それに自分は『松井』という名字なので、昔から“ゴジラ松井”というヒーローにも馴染みがあって、個人的に運命かなと(笑)」
そんな『ゴジラ-1.0』はゴジラ生誕70周年記念作品であり、日本で製作された実写版ではちょうど30作目。節目となる作品からのオファーに歓喜したのは松井さんだけではなかった。
「一緒に仕事をさせていただいているアートディレクターの藤本さんがゴジラの熱狂的ファンで、ゴジラが今の仕事を始めるきっかけにもなったほどの方なんですが、今回のオファーを伝えたところ「絶対いいもの作りましょう」ととても喜んでくれて。2人でいつも以上に盛り上がりながらアイデアを出し合いましたね」
そんな2人の思いが込められて完成したゴジラシューズ。先の舞台挨拶で着用された靴の正式名称は「惹きずり込まれる運命のドレスシューズ/ヒールパンプス<King of Monster.>」。
この奇抜すぎるデザインに世界が震撼した。話題のアイテムについて松井さんにこだわりを聞くと意外な答えが。
「これは自分がデザインしている靴の全てに言えることなんですが、歩きやすさ履きやすさにはかなりこだわりました。奇抜なデザインに目が行きがちなんですが何よりも大事なのは実用性。素材もソフビ素材なので一見重そうに見えますが軽くて丈夫なんです」
その仕上がりには監督、演者はもちろんスタッフからは「これヤバい」とこれ以上ない賞賛の声が上がったという。さらに、
「山崎監督はすごく気に入ってくださって、あらゆる場面で履いてくださいました。『この靴は僕のユニフォームです』とまで言っていただき本当に感謝しかないです」