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『QOL』は、生活や人生の質を意味する言葉で、近年さまざまなシーンで使われます。
『QOL』を正しく理解するためのヒントとして、意味や評価基準について整理していきましょう。個人・企業それぞれでできるQOL向上の方法も紹介します。
QOLとは何か?
近年、見聞きする機会の多い『QOL』ですが、具体的に何を指す言葉なのでしょうか。まずは、その意味や注目されている理由から整理していきましょう。
■QOLは生活や人生の質を指す略語
『QOL(クオリティ・オブ・ライフ)』は、Quality Of Life(生活・人生の質)の頭文字を取った略語です。
QOLは、私たち人間が生きていく上での満足度や幸福度を表す指標の一つで、心身の健康状態・人間関係・生きがいなど、さまざまな観点から評価されます。
QOLが高ければ高いほど日々の生活に充実感があり、自分らしく前向きに生きられているといえます。
QOLに影響を与えるのは、心身の健康だけではありません。家族や友人など周囲の人々と良好な関係を築き、社会とのつながりを持っていることも重要です。さらに、自分の人生に生きがいや目的を感じられることも、QOLの高さを左右する重要な要素です。
■QOLが注目されている理由
近年、QOLが注目されるようになった大きな理由の一つに、医療技術の発展に伴う平均寿命の延びがあります。以前に比べて長生きできるようになった中で、ただ生きるだけではなく、「その人らしくより良く生きること」が求められるようになったのです。
また、コロナ禍を経て価値観が変化し、「どう生きていきたいのか」を考える人が増えたことも、QOLが重視されるようになった大きな理由の一つとされています。
QOLの重要性は、今後ますます高まっていくと考えられています。
■QOLが低くなる原因
QOLが低下する原因は、大きく分けて次の四つに分類されます。
- 身体的要因:病気やけがによる健康状態の悪化・運動不足など
- 精神的要因:不安・不満・過度なストレス・メンタルヘルスの不調など
- 社会的要因:仕事への不満・人間関係の悪化など
- 経済的要因:収入減・借金など
当てはまる項目が多ければ多いほど、QOLは低いと判断できますが、原因が分からない状態で改善策は見つけられません。
QOLの低下を感じたときは、まず自分自身の生活を振り返り、原因の特定から始めることが大切です。
QOLの評価基準
QOLを評価する指標には、主に介護業界で利用される『SF-36』と、WHOによって作られた『QOL-26』があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
■介護業界で利用される「SF-36」
『SF-36』は、『MOS 36-Item Short-Form Health Survey』の略で、主に医療や介護の現場で用いられているQOLの指標です。
SF-36は、以下の八つの健康概念を36の質問項目で測定します。
- 身体機能
- 日常役割機能(身体)
- 体の痛み
- 全体的健康感
- 活力
- 社会生活機能
- 日常役割機能(精神)
- 心の健康
国際的にも広く使用されており、日本語版も開発されています。特定の病気を抱えた人はもちろんのこと、健康な人のQOLを測定するのにも有効な指標です。
■WHOが作成した「QOL-26」
『QOL-26』は、WHO(世界保健機関)が作成したQOL評価の指標です。QOL-26は、以下の四つの領域で構成されています。
- 身体的領域
- 心理的領域
- 社会的関係
- 環境領域
設問数は合計26個で、各項目を5段階で評価します。
QOL-26は、文化や言語の違いを超えて、世界中で利用可能な汎用性の高い指標です。医療や介護の現場だけでなく、健康な人々のQOLを測定することもできます。
日常生活の質を多面的に評価し、豊かな人生を送るための指針を得る上で有用なツールです。
QOL向上のために個人ができること
QOLを向上させるために、私たち一人一人ができる効果的な方法にはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
■規則正しい生活を送る
QOL向上のために個人ができることとして、まず挙げられるのが、規則正しい生活を送ることです。
例えば、日々決まった時間に適切な睡眠時間を確保することは、体内リズムを整える上で有効です。また、栄養バランスの取れた食事は、心身の健康の基盤となります。おろそかになりがちな朝食をしっかり食べ、三食を通じてバランスの良い食材を摂取することを意識しましょう。
睡眠・食事共に規則正しく、質にこだわることが、心身の健康とQOLを保つための第一歩です。
■体を動かす
適度な運動は、心身の健康維持に欠かせません。定期的な運動習慣を取り入れることで、体力の向上やストレスの発散が期待できます。
なお、ここでいう運動は、激しい運動に限りません。ウォーキングやストレッチなど、自分に合ったペースで無理なく続けられるものを選ぶことが大切です。
体を動かすことは、身体的な健康の維持や向上に役立つだけでなく、不調を防ぐための予防策としても有効です。無理のない範囲で、できることから始めましょう。
■ストレス発散の時間を持つ
ストレスは、QOLを低下させる大きな原因の一つです。過度なストレスを感じた状態では、QOLを高めることはできません。
具体的なストレス発散の方法としては、時間を忘れて没頭できる趣味を見つけることがおすすめです。好きなことに熱中しているときは、ストレスから解放されて心が満たされるからです。
最近注目されているストレス対策の一つに、『マインドフルネス』があります。マインドフルネスとは、今この瞬間に意識を向け、あるがままの自分を受け入れることです。瞑想やヨガなどを通じて、自分の内面と向き合う時間を持つことで、ストレス耐性を高められるとされています。
QOL向上のために企業ができること
従業員のQOLに注目し、対策を進める企業が増えています。企業ができるQOL向上の施策には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
■働き方の自由度を上げる
従業員のQOLは、業務上のパフォーマンスや生産性、ひいては企業の業績に影響を与える重要な要因です。企業が従業員のQOL向上に取り組むことは、経営的な視点からも非常に重要といえます。
具体的な方法としては、リモートワークの導入やフレックスタイム制の導入が挙げられます。社員一人一人のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を可能にすることで、従業員の心身の負荷を軽減できるでしょう。
ワーク・ライフ・バランスを保ちながら、効率的に業務を遂行できる環境を企業側が率先して提供することで、社員のストレス軽減や生産性の向上が見込めると同時に、QOLの改善が期待できます。
■休暇取得を催促する
従来、日本企業では、年次有給休暇の取得率が低いことが問題視されてきました。この問題を改善するためには、休みを取りづらい雰囲気を変え、社員が安心して休暇を取れるような職場環境作りが必要です。
併せて、育児休暇の取得促進も重要です。従業員が無理なく仕事と育児を両立できるよう、安心して休める制度を整えましょう。
従業員の休暇取得を促進するためには、休暇取得を催促するだけでなく、上司が率先して休暇を取得したり、計画的な休暇取得を推奨したりすることが大切です。上司が休暇を取得することで、部下も休みを取りやすくなります。結果として、休暇取得を推進する職場づくりを実現できるでしょう。
QOLを上げて充実した毎日を送ろう
高いQOLは、一人一人の人生をより豊かにします。規則正しい生活や適度な運動・ストレス発散など、QOLを意識して生活することで、心身共に健康で充実した毎日を送ることができるでしょう。
QOLを高めるためのポイントは人それぞれですが、自分に合った方法を見つけ、実践していくことが大切です。企業の取り組みとしても重要で、従業員のQOLを高めることにより、パフォーマンスやモチベーション、業績の向上も期待できます。
心身共に健康で、生きがいを感じながら過ごせる人生を実現できるよう、QOLの高い生活を目指しましょう。
構成/編集部