目次
「謹んで」とは、相手への敬意を示す表現です。しかし、かしこまったシーンでよく使われているからこそ、使い方を間違えたくないと不安を感じることもあるのではないでしょうか。
この記事では、謹んでの意味や同じ読み方の「慎んで」の意味と違い、新年のご挨拶やお悔やみの言葉としてなどシーン別の使い方・例文を解説します。あわせて類語・言い換え表現も確認しましょう。
「謹んで」の意味や使い方などの基礎知識を解説
「謹んで」の読み方は「つつしんで」です。ビジネスシーンかプライベートかを問わず、新年のご挨拶やお悔やみの言葉など、かしこまったシーンでよく使われています。
はじめに、「謹んで」の意味や同じ読み方をする「慎んで」との違い、使い方・例文を確認しておきましょう。
■謹んでとは相手への敬意を示す表現
謹んでとは、「敬意を表して恭(うやうや)しく物事をするさま」を指す言葉であり、相手に対する敬意を示す表現です。「謹む(つつしむ)」という動詞の連用形に「て」という接続助詞がつき、「つつしみて」から音変化した言葉だとされています。
「恭(うやうや)しい」とは、「とても礼儀正しく丁寧な様子」のことです。気軽に話しかけられるような相手ではなく、敬意を払いながらの言動であることを表現したいときなどに用います。
■同じ読み方の「慎んで」の意味と違い
「慎んで」も、読み方が同じ表現です。慎んでは、「慎む(つつしむ)」という動詞からできた言葉です。意味は、「度を過ぎないように控えること」「間違いを犯さないように注意すること」などがあります。
「慎重」などの熟語でも「慎」という漢字が使われていることからイメージできるように、行動や想いを抑制する意味を持つ表現です。
一方で、謹んでは相手への敬意を表す言葉です。どちらも周囲を慮ってはいるものの、それが相手への敬意によるものなのかどうかが異なります。
■謹んでの使い方を例文で確認
謹んでの使い方が理解しやすいよう、実際にどのように使うのかを例文で確認しておきましょう。
謹んでを用いるシーンは、新年のご挨拶やお悔やみの言葉などがあります。また、以下のように、役職を引き受けるときやお詫びの言葉、頂き物を受け取る際の言葉としても使います。
・今回のプロジェクトリーダーに抜擢していただいた件、謹んでお受けいたします。
・先日のシステムトラブルにより、多大なるご迷惑をおかけしてしまいました。謹んでお詫び申し上げます。
・お見舞いの品物、謹んで頂戴いたします。誠にありがとうございました。
それでは、新年のご挨拶やお悔やみの言葉での使い方も、詳しく解説していきます。
1.新年のご挨拶:謹んで新春のお慶びを申し上げます
謹んでという表現は、新年のご挨拶でよく使われています。たとえば、以下のような表現が一般的です。
・謹んで新春のお慶びを申し上げます。
・謹んで新年のお慶びを申し上げます。
・謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
慶事のご挨拶の定型文に、「謹んで〜の〜を申し上げます」という表現があります。ほぼ決まり文句のように使うため、パターンとして覚えておくだけで表現の幅が広がるでしょう。
また、「謹」という漢字自体が、相手に対して敬意を払ってご挨拶するような意味があります。新年のご挨拶としては、「謹賀新年」という表現でもよく見聞きするでしょう。
2.お悔やみの言葉:謹んでお悔やみ申し上げます
お通夜やご葬儀などのお悔やみごとのときには、「謹んでお悔やみ申し上げます」と伝えます。「謹んで」をつけることによって、ご遺族に誠実な印象を持ってもらえる表現です。
口頭ではなく弔電を送る場合には、以下のように伝えましょう。
・このたびは〇〇様のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます。
「謹んで」を使った表現のほかに、「ご愁傷様です」「ご冥福をお祈りいたします」などのお悔やみの言葉もあります。
また、「故人のご功績を偲び、謹んでご冥福をお祈り申し上げます」というフレーズも、お悔やみのシーンで頻繁に用いられています。
謹んでの類義語・言い換え表現2つ
謹んでの類義語・言い換え表現の例は、以下のとおりです。
1.心より
2.畏みて(かしこみて)
また、「恐縮ながら」「謙虚に」「敬意を持って」「誠意ある態度で」なども、謹んでの類義語・言い換え表現です。このうち、「恐縮ながら」の「恐縮」とは恐れて身が縮むことを指します。「恐縮ではありますが」「恐縮ですが」などの言い換えも可能です。
それでは、謹んでの類義語・言い換え表現のさらに詳しい意味を確認しておきましょう。
■1.心より
「心より」とは、本心からの言葉であることを示す表現です。「心より」を用いることで、相手への誠意や丁寧な姿勢を表せます。
たとえば、お悔やみの言葉の言葉として謹んでから言い換える場合には、「心よりご冥福をお祈り申し上げます」「心よりお悔やみ申し上げます」などと伝えましょう。
かしこまった表現である謹んでよりも、話し言葉として使いやすい表現です。
■2.畏みて(かしこみて)
「畏みて(かしこみて)」は、やや古い表現であり、少し固いニュアンスがあります。あまり聞き慣れないかもしれませんが、謹んでと同じく相手への敬意を示せる表現です。意味は「相手に対して恐れ多く思い、謹みと敬意を持っておこなう様子」のことを指します。
例文は以下のとおりです。
・この度のご対応、畏みてお礼申し上げます。
・先日は悪天候により荷物の到着が遅延してしまい、畏みてお詫び申し上げます。
適切な場面で謹んでを使おう
謹んでという表現は、新年などの慶事のご挨拶にも、お悔やみの言葉にも定型文のように多く用いられている表現です。相手への敬意を示す表現であり、かしこまったシーンでよく使われているからこそ、適切な場面で正しく使いたいものでしょう。
謹んでを用いるシーンや「謹んで〜の〜を申し上げます」といったフレーズなどをあらためて確認し、適切な場面で自信を持って謹んでや関連する言葉を使えるようになりましょう。
構成/chihaya