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「差し上げる」は正しい敬語表現か?覚えておきたい2つの意味と使い方

2024.10.01

「差し上げる」という言葉は、敬語として正しいのか心配になることもあるのではないでしょうか。敬語ではあるものの、使い方によっては失礼にあたることもあるため、注意が必要です。

本記事では「差し上げる」の意味や使うときの注意点、言い換え表現をご紹介します。

「差し上げる」とは?

■正しい敬語?

「差し上げる」は「与える」「やる」という意味の謙譲語であり、相手を敬う意味の正しい敬語です。「〇〇を差し上げます」というように物を与えるときや、「連絡を差し上げます」などなんらかの行動をするときに使われます。

ここでは、「差し上げる」の意味について、2つの使い方を上げてご紹介します。

「差し上げる」の意味

「差し上げます」は、与えるという意味がある「上げる」に、動詞に付けて強調させる「差し」という接頭語を付けた言葉です。自分が起こす動作に使うもので、「やる」「与える」の謙譲語として使われます。

へりくだった言い回しのため、目上の人にも使える正しい敬語です。物を差し出したり、なんらかの行為を行ったりするときに使います。

ビジネスシーンで「差し上げる」を使う場面は主に、相手に連絡をする「ご連絡を差し上げます」、相手に物を与える「〜を差し上げます」に分けられます。

参考:デジタル大辞泉

「ご連絡差し上げます」

「ご連絡差し上げます」は、連絡が相手にとってプラスになる場面で使用します。相手から連絡を依頼され、その連絡について「それでは後ほどご連絡差し上げます」といった使い方をします。

しかし、自分の都合に合わせてもらいたいときに「本日は都合が悪いため、後ほどご連絡差し上げます」という使い方をするのは避けましょう。上から目線に感じられます。

この場合は、「本日は都合が悪く、後ほどご連絡してもよろしいでしょうか?」と相手の都合をうかがいます。

(例文)

・お申し込みありがとうございます。後日こちらよりご連絡差し上げます

・詳細が決まり次第、こちらからご連絡差し上げます

・早急にご報告を差し上げるべきところ、ご連絡が遅くなり申し訳ございません

「〇〇を差し上げます」

相手に物を渡すときにも、「〇〇を差し上げます」を使います。「〇〇」には、具体的な名詞が入ります。

基本的に物を与える場面で使いますが、報酬を支払う場面で使うのは適切ではありません。

「報酬」は仕事に対する対価であり、対価を受け取るのは当然のことです。それに対して「差し上げる」という表現をすると、「こちら側の善意で払ってあげた」というニュアンスになります。

相手が当然受け取るべき物を渡す際は、「お支払いします」「お渡しいたします」で問題ありません。

(例文)

・ご出席いただいた方には、もれなく記念品を差し上げます

・誕生日のお祝いに、チーム一同から贈り物を差し上げます

・ご応募いただいた方の中から10名様に、弊社のオリジナル製品を差し上げています

「差し上げる」を使うときの注意点

「差し上げる」は使う場面によっては相手に失礼になることもあるため、注意が必要です。差し上げるのもとの言葉である「与える」「やる」は「施す」という意味があり、相手によっては見下されているように感じる場合があります。

基本的に、相手が望んでいたりメリットがあったりする場合に使う表現です。

例えば、相手が特に望んでいないことに対して「教えて差し上げます」というのは、上から目線に感じられるでしょう。

そのような場合は、「教えて差し上げましょうか?」と疑問形にして相手の選択に委ねることで、印象が和らぎます。

「差し上げる」の言い換え表現

「差し上げる」を使うのが適切でない場面では、言い換え表現を使うとよいでしょう。

言い換え表現には、次のようなフレーズがあります。

・「させていただく」

・「いたします」

どちらも、自分がなんらかの行為をするときの謙譲語です。

それぞれの内容や例文をご紹介します。

「させていただく」

「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語で、正しい敬語です。例えば「ご連絡差し上げます」は、「ご連絡させていただきます」に言い換えができます。

ただし、「させていただく」は誤用が多い表現であり、次の2つの条件を満たした場合に使用するのが正しいとされています。

・相手または第三者の許可があるか

・そのことで自分自身が恩恵を受けるのか

例えば、「こちらから後ほどご連絡させていただきます」という例文をみてみましょう。連絡するには相手に許可を受ける必要があり、連絡するのは自分であるため恩恵を受けるという条件も満たします。そのため、正しい使い方となります。

これに対し、自己紹介で「◯◯高校を卒業させていただいた」「課長を務めさせていただいている」といった表現は、誤用とされています。卒業も課長を務めることも誰かの許可は不要であるためです。「させていただく」を使うときは、十分注意してください。

「いたします」

「いたします」は、「する」の謙譲語です。「ご連絡差し上げます」は「ご連絡いたします」に言い換えができます。「します」も敬語として使えますが、「いたします」の方がより丁寧です。

シンプルな敬語であり、「差し上げる」を使ってよいか迷ったときは、「いたします」を使えば間違いありません。

メールで使用する際は、「いたします」と書くか「致します」と漢字にするか迷うことがあるかもしれません。

「致す」は「到達するようにする、至らせる」という意味で、「いたします」の「いたす」は補助動詞「する」の謙譲語・丁寧語です。そのため、「ご連絡いたします」はひらがなで書くのが正解です。

「差し上げる」は使う場面に注意しよう

「差し上げる」は「与える」「やる」の謙譲語であり、相手に物を与えるときや、なんらかの行動をするときに使われます。相手にとってメリットがある場合に使う表現であり、自分の都合で使うのは良いイメージではないため注意しましょう。

言い換え表現には「させていただく」「いたします」があるため、状況に応じて使い分けてください。

使う場面を考え、「差し上げる」を上手に使いましょう。

構成/須田 望

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