3. 専門業務型に特有の改正ポイント
専門業務型裁量労働制については、共通の改正ポイントに加えて以下の改正が行われました。
(1)M&Aアドバイザリー業務の追加
(2)労使協定事項の追加
3-1. M&Aアドバイザリー業務の追加
専門業務型裁量労働制の対象業務に「銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言の業務」(いわゆるM&Aアドバイザリー業務)が追加されました。
この追加により、専門業務型裁量労働制の対象は20業務となります。
3-2. 労使協定事項の追加
専門業務型裁量労働制を導入する際に締結する労使協定において、以下の事項を定めることが義務付けられました。
・専門業務型裁量労働制の適用に当たって労働者本人の同意を得ること
・専門業務型裁量労働制の適用に労働者が同意しなかった場合に、不利益な取り扱いをしないこと
・専門業務型裁量労働制の適用に関する同意の撤回の手続き
・同意の撤回に関する記録を労働者ごとに5年間(当面の間は3年間)保存すること
4. 企画業務型に特有の改正ポイント
企画業務型裁量労働制については、共通の改正ポイントに加えて以下の改正が行われました。
(1)労使委員会決議事項の追加
(2)労使委員会運営規程の記録事項の追加
(3)定期報告の頻度の変更
4-1. 労使委員会決議事項の追加
企画業務型裁量労働制を導入する際に行う労使委員会決議において、以下の事項を定めることが義務付けられました。
・企画業務型裁量労働制の適用に関する同意の撤回の手続き
・対象労働者の賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に対して変更内容を説明すること
・同意の撤回に関する記録を労働者ごとに5年間(当面の間は3年間)保存すること
4-2. 労使委員会運営規程の記録事項の追加
企画業務型裁量労働制に関する労使委員会の運営規程において、以下の事項を定めることが義務付けられました。
・対象労働者の賃金・評価制度の内容についての、使用者の労使委員会に対する説明に関する事項
・制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項
・労使委員会の開催頻度を6か月以内ごとに1回とすること
4-3. 定期報告の頻度の変更
企画業務型裁量労働制を実施している使用者には、所轄労働基準監督署長に対して、労働時間の状況や健康・福祉確保措置の実施状況を報告することが義務付けられています(労働基準法38条の4第4項)。
従来の定期報告は、労使委員会決議の日から6か月以内ごとに1回とされていました。
しかし、決議日と適用開始日が同日とは限らないことを踏まえて、報告期間の起算日が決議の有効期間の始期(=適用開始日)と改められました。また報告の頻度についても、起算日後1年以内ごとに1回とされました(改正労働基準法施行規則24条の2の5第1項)。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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