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ケーキの端っこまでムダにしない!高級ホテルが取り組む食品ロス対策から人気商品が続々誕生

2024.03.21

2.年間約2.5トンの食品ロスを削減した、帝国ホテル 東京のサンドイッチ

帝国ホテル 東京 ホテルショップ ガルガンチュワ「W・E Bread サンドイッチ(2,268円)」。

見た目の美しさを追求した料理を提供することはラグジュアリーホテルでは不可欠で、廃棄食材が出ることは従来必然だったが、発想の転換をした商品も登場している。

帝国ホテル 東京のホテルショップ ガルガンチュワで販売している「W・E Bread(ウィーブレッド)サンドイッチ」はサンドイッチ製造時に通常切り落とす「食パンの耳」が出ないよう開発した「耳まで白くて新食感の食パン」を用いた新発想のサンドイッチだ。

従来の食パンと比べ、低温でじっくりと焼き上げた白い食パンは、耳まで白くて柔らかいため、切り落とす必要がなく、廃棄がゼロとなる。サンドイッチには白い食パンと同じ技術を使った人参ピューレ入りの黄色い食パンで、彩りも加えている。

実は2022年にW・E Bread サンドイッチを発売するまで、帝国ホテル 東京でも食パンの耳を切り落として提供していた。切り落とした耳はサンドイッチの具材が付着しているなどの理由で再利用が難しいため廃棄せざるを得ず、年間廃棄量は約2.5トンに達していたと、帝国ホテル 東京 総支配人室 広報課 漆原 花帆さんは振り返る。

漆原さん「帝国ホテルでは、『おいしく社会を変える』と名付けた“食を通じた社会貢献”の一つとしてさまざまな角度から食品ロス削減に取り組んできました。更なる食品ロス削減を目指し、パンの耳に着目。これまで食におけるSDGs達成を積極的に推進してきた東京料理長 杉本 雄が中心となり、切り落とされたパン耳のリサイクル方法を考えるのではなく、廃棄がでない食パンを開発するという発想の転換を行いました」

W・E Bread サンドイッチを販売する「ホテルショップ ガルガンチュワ」。

白い食パンの製造のためには一晩かけて水種を作ったり、焼き時間と窯の温度調整を見極めたりと、通常の食パン製造よりひと手間もふた手間もかかっている。その努力や想いはゲストにも届き、発売から1年以上が経過した今「W・E Bread サンドイッチ」はホテルショップ ガルガンチュワの惣菜カテゴリーで、毎月ベスト3に入る人気商品だ。白い食パンの噂を聞き、指名買いで訪れる客もいると言う。現在、「W・E Bread サンドイッチ」はレストランや宴会場での導入も進めている。

3.食品ロス実質ゼロのコンポストプラントを持つ「ホテルニューオータニ」

ホテルニューオータニのコンポストプラント。

SDGsが掲げられる以前より、食品ロス削減に向けて「仕組み化」していたのが「ホテルニューオータニ」。1999年に「コンポストプラント」を導入し、37店舗のレストラン、33の宴会場から出る1日約5トンの食品残渣(生ごみ)をすべてを有機堆肥へと変え、「食品ロス実質ゼロ」を実現している。現在、その有機堆肥を使用して育った野菜は社員食堂で提供し、循環させている。

37店舗のレストラン、33の宴会場を持つ、街のようなホテル。

ホテルニューオータニ 広報 有上未紗さんによると、ホテルニューオータニは約2万坪の敷地に1日約2万人が訪れる、1つの街のようなホテル。そのため、以前より食品ロスに限らず、包括的にSDGsの問題解決に取り組んできたと話す。

有上さん「1991年のオフィスビル『ガーデンコート』開業をきっかけとして、世界的な環境問題意識の高まりも背景に、ホテルのある紀尾井町を都市の小モデルととらえ、地球環境と調和する循環型社会の実現を進めてきました。

『コンポストプラント』以外にも、厨房排水をリサイクルする『中水造水プラント(1991年)』や、エネルギーの高効率化や廃熱利用を実現する自家発電システム『コジェネレーションプラント(1991年)』を導入してします」

人気ビュッフェで余った食材も、ゲストが気づかぬうちに、コンポストプラントでリサイクル。

ホテルニューオータニのユニークなポイントは、あえて対策を全面に出さず、「気づけばSDGs」をコンセプトにしていること。ゲストにはむしろ食品ロスなどを気にせずに食事を楽しみ、「気づいたらホテルとともにSDGsや食品ロス削減に貢献していた」という状態を理想としている。昨今はSDGsの浸透とともに一般の人にも取り組みが気づかれはじめ、広く共感してもらえているという。

さまざまな考え方や対策で、食品ロス削減に取り組んでいる東京のラグジュアリーホテル。小さなものから、大きなものまで、多種多様な対策の結果が、社会全体の食品ロス削減に繋がっていると考えられる。消費者としても、そういった取り組みを積極的に行っているホテルやレストランを選ぶことで、社会的責任を果たすことができるだろう。

取材・文/小浜みゆ

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