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ビジネスシーンで使用されることがある「ケイパビリティ」という言葉。近年では「ポジティブケイパビリティ」「ネガティブケイパビリティ」といった単語を見聞きする機会も増えつつある。しかし、これらの言葉が具体的にどのような意味を持つのかを知らない方も少なくないだろう。
そこで本記事では「ケイパビリティ」の意味を、類語と合わせて紹介する。ケイパビリティを活用するメリットや事例についても確認してほしい。
ケイパビリティとは
まずはケイパビリティの意味と使い方から見ていこう。また、ケイパビリティを含む「ポジティブケイパビリティ」「ネガティブケイパビリティ」の意味も解説するので、この機会にそれぞれの意味を把握しておこう。
■組織全体の能力のこと
ケイパビリティを直訳すると「能力」「才能」「可能性」になるが、ビジネスシーンでは、企業全体や事業全体の組織能力や強みのことを指す。
例えば、営業部門では、業務が属人的になってしまい、個人の能力によって担当する顧客の売上に差が出てしまうことがある。これはケイパビリティが低い状態といえる。この状況を打開するためには、営業部署全体で成績を挙げられる仕組みを作り、誰もが一定の売上を挙げられる状態を作る必要があるだろう。
ビジネス用語としてのケイパビリティは、例えば以下のような形で使われる。
【例文】
「競合より優位に立つために、ケイパビリティを高めておく」
「他社との差別化を図るため、競合のケイパビリティを理解しておく必要がある」
■ポジティブケイパビリティは「問題を明確にし、解決する能力」
ポジティブケイパビリティとは「問題を明確にし、解決する能力」のこと。
例えば、会議で議論が行き詰まってしまった時、別の意見を積極的に出したり、一度別の話題に移ったりと問題を解決しようと動く人がいる。このような行動を起こせる人たちはポジティブケイパビリティの素質があるといえる。
■ネガティブケイパビリティは「答えの出ない事態に耐える能力」
ネガティブケイパビリティとは「答えの出ない事態に耐える能力」のこと。
イギリスの詩人、ジョン・キーツ氏が作った概念だ。先ほどと同様に議論が行き詰まった場合を例にすると、すぐに結論を出そうとするのではなく、じっくりと考える人にはネガティブケイパビリティの素質があるだろう。
■アビリティやコアコンピタンスとの違い
ケイパビリティに似た言葉としてアビリティやコアコンピタンスがある。
アビリティは「能力」や「技能」を意味する言葉。ケイパビリティは将来性のある能力を指して使われることが多いのに対して、アビリティは単純にその時点で持ち合わせている能力のことを意味するのが一般的だ。
一方、コアコンピタンスは「競合他社に真似できないほど圧倒的なレベルの能力」を表す。ケイパビリティは事業プロセス全体を指すのに対し、コアコンピタンスは事業プロセスの一部を切り取って使われるため、場面に応じて使い分けができるようにしておこう。
組織がケイパビリティを高めるメリットとは
組織がケイパビリティを高めることによって得られるメリットはさまざまだが、主なメリットとしては以下の2点が挙げられる。
■競合他社との差別化が図れる
自社が築き上げた事業プロセス全体をそのまま他社が真似するのは容易ではない。
そのため自社の強みを活かしてケイパビリティを強化すれば、他社と差別化が図れて優位に立てる。
■経営の安定が見込める
一度確立されたケイパビリティは、長期的に活用できる。ケイパビリティを活用して継続的に収益を挙げられれば、経営基盤の安定も見込めるだろう。
企業におけるケイパビリティの活用事例
次に、自社のケイパビリティの活用によって、成果を上げてきた企業を紹介する。
■アップル(Apple)
iPhoneやMacBookで有名なアメリカのアップル社は、商品の販売を家電量販店などの小売店に任せるだけでなく、直営店を各地に展開して販売する戦略を採用した。
これにより、販売プロセスを自社で管理し、アップルの革新的な機能をより多くのユーザーに伝える強みを生み出した。
■ホンダ(Honda)
ホンダも、オートバイをアメリカで販売する際にケイパビリティを活用して躍進した。
当時オートバイのメーカーは、各地にあるディーラーに商品を卸して販促活動を行うのが一般的だった。
しかしホンダはディーラーに商品を卸すだけでなく、スタッフの研修、営業やサービス管理、店舗レイアウトなど多くのノウハウを提供して現地の販売活動もサポート。その結果、顧客満足度も向上し、競合他社より優位に立つことに成功した。
ケイパビリティを把握するフレームワーク
最後に、自社のケイパビリティを把握するフレームワークについて紹介する。
■SWOT分析
SWOT分析はマーケティングで活用されるフレームワークで、自社の強みと弱み、機会と脅威をそれぞれ内部環境と外部環境の両側面から分析する手法だ。
事業の強みや課題を発見できるため、全体の組織力を知る上で有効な分析手段といえる。
■バリューチェーン分析
バリューチェーン分析もマーケティングの手法として使用されている。商品を作成するための原材料の調達から、流通、販売までの流れを洗い出し、各工程において自社が提供できる付加価値を見つける手法だ。競合他社と比較して、プロセスのどこに強みや弱みがあるのかを分析できる。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部