慢性的な人手不足に陥っているとされる日本の労働市場において、人事担当者はどんな課題を感じ、また、どんな戦略を立てて採用に当たっているのだろうか?
リクルートはこのほど、企業で働く人事担当者5,048人を対象に、人材マネジメント(人事制度、人材活用等)をテーマとしたアンケート調査を実施し、その結果を発表した。
5,048人のうち、従業員規模30人以上の企業に勤める2,761人を集計対象とした。
【1】人材採用の現状
■半数以上の企業で人員が不足。直近1~2年で中途採用が難しくなっていると感じる企業は66.6%
現在、日本社会全体において「人手不足」が大きな課題になっている。今回の調査でも、企業の人員の過不足の状況について、「不足している」と回答した企業は半数以上に達した(「大幅に不足している」と「やや不足している」の計)。また、直近1~2年の中途採用の状況について「難しくなっている」と回答した企業は66.6%に達した(「全体として採用が難しくなっている」と「一部の職種等について、採用が難しくなっている」の計)。
■採用が成功している企業は35%未満。特に必要なスキルや経験を持つ人材の確保に苦戦
実際の採用状況は、「人手不足」と「人材不足」の両方の観点で、採用が成功している企業は35%未満となった。
「人手不足」とは、必要な人数が採用できているかという観点。一方の「人材不足」とは、必要なスキルや経験を持った人が採用できているかという観点だ。
特に「人材不足」の観点では、採用できている計が25.9%であり、約4社に1社しか求めるスキルや経験を持つ人材を確保できていないことがわかった。
■3年後の採用見通しは、新卒・中途いずれも約3社に1社が採用人数を増やす見込みと回答
次に、今後の採用の見通し・方向性を見ていく。まず、新卒採用・中途採用ともに約半数の企業はこれまでと同等の採用を行う見込みであることがわかる(新卒採用:50.7%、中途採用:48.0%)。
さらに、採用人数を「増やす見込み」と回答した企業は新卒採用で34.2%、中途採用で37.7%であることがわかった(「採用人数を大幅に増やす見込みである」と「採用人数をやや増やす見込みである」の計)。
上記を合計すると、新卒採用・中途採用ともに約85%の企業がこれまでと同等あるいはそれ以上の採用を実施する見通しであり、引き続き人材採用に積極的な姿勢が見える。
【2】人材採用の課題
■企業の人事課題では「中途採用・キャリア採用の強化」が上位に
ここまで中途採用・キャリア採用の現状や今後の方向性について見てきた。構造的な人手不足の中で、ますます中途採用・キャリア採用の重要性は高まっていくと思われる。実際に、企業の人事担当者が感じる人事課題に目を向けると、「中途採用・キャリア採用の強化」が全25項目のうち4番目に高い選択率(26.9%)であり、この結果から「新卒採用の強化(21.0%)」よりも課題感が強いことがわかる。
■57.5%の企業が人材採用のやり方や制度を変える必要性を感じている
中途採用・キャリア採用をはじめとした人材採用の課題感が強い中で、多くの企業がこれまでの人材採用のやり方や制度を変える必要性を感じている。今回の調査では、57.5%の企業が人材採用のやり方や制度を変える必要性を感じていることがわかった。一方で、変更の必要性を感じている企業のうち、「見直しができている」と回答した企業は26.1%であり、変更の必要性を感じているが見直しまでには至っていない現状が見て取れる。
■人材採用のやり方や制度の見直しが必要と感じている理由は、「これまでのやり方では必要な人材を確保できないため」が60.9%
人材採用のやり方や制度を変える必要性を感じている企業に、「見直しが必要と感じている理由」を確認した。最も選択率が高かった項目は、「これまでのやり方では必要な人材を確保できないため(60.9%)」となった。また、他の項目からは、企業の人材採用課題の多様な側面が見えてくる。具体的には、若手層や管理職・ミドルマネジメント層といった特定層の人材が必要であったり、組織の人材多様性の向上や異なるスキルを持つ人材の獲得ニーズが挙げられる。