デビューから45年目、63歳となった今も最前線で歌って踊り続ける田原俊彦さん。最近はYouTubeやTikTokなどの分野に進出。新たな発信ツールでダンス動画や対談コンテンツを積極的に発信し、若い世代にも認知が広がっている。
2024年も勢いは止まらず、新たな挑戦をすべく3つのプロジェクトを発表。未知の領域に挑む原動力を持ち続ける秘訣とは?独占インタビューで話を伺った。
仕事を続けてこられた理由は「欲」
「僕が一番活躍できた時代は、テレビがど真ん中の時。自分自身もたくさん楽しんだし、もてはやされた。そういう少年、青年期から年月を重ねて、今年63歳になりました。本当に色々あったな。途中で諦めないで全うすることは、僕の世界に置き換えると、歌って、踊って、ステージに立ち続けること。先が約束された世界じゃないけど、それもまた人生だなって思う」
これまでの45年を懐かしむように振り返る田原さん。第一線を走り続けてきたエンターテイメントの世界について、彼なりに思うこともあるという。
「僕が若い頃は、今みたいにコンプライアンスが厳しくなくて、言いたいことを言って、やりたいことをやっていた。今は縛りがたくさんある中で、生きづらい世の中になってきたことはちょっと寂しいなと感じるね。もっともっとエンターテイメントを明るく楽しく華やかに見せられる世界であってほしいなって」
言いたいこと、やりたいことを貪欲に発信してきたからこそ、この仕事を続けてこられた。欲は恥ずべきことじゃなく、むしろ剥き出しにしていいというのが田原俊彦流だ。
「いろんな仕事に言えることだけど、やっぱり『上に登りたい』『稼ぎたい』『いい女と遊びたい』『いい思いをしたい』、そういう人としてのエネルギーというか〝欲〟は皆さん持っていてほしいなって思いますね」
最年少から最年長へ。若いスタッフから遊ばれながらYouTubeに挑戦中!?
「15歳で『芸能界に入ろう』って夢見た当時は、僕がどこの現場に行っても一番若かった。ステージのスタッフも、テレビ局の人たちも、取材してくれる方々も、 僕より人生経験を積んでいる人たちで、こんな僕を面白がってくれた。それが63歳になった今、下手したら『僕がいつも年長者じゃん!』みたいな。『ああ、45年やってきたんだな』って実感がありますね」
現場の最年少から最年長へ。それでも、自身が全うする役割や、追求することは変わらない。
「僕は『田原俊彦』って役割を大好きでやってるんですけど、別に僕が1人でそれをやってるわけじゃない。そこには裏方さんがいて、スタッフがいる。僕のためにね、もっといろんなスキルを身につけて、『田原俊彦』をどうしたら面白くなるか、皆でクリエイティブを考えてくれるんです。昔も今も、本当にいろんな人たちがいて『田原俊彦』は成り立ってる」
最新の「田原俊彦」はどうやって作られているのか。聞けば、良い意味で〝最年長のプライド〟を取っ払った、フレキシブルで挑戦的な姿勢がそこにはあった。
「今、若い子たちはテレビを見ないらしいですからね。芸能人が自分自身で発信をする、そういう時代になった。でも、近距離でアプローチできるのはいいことだなと思うんです。僕はまだYouTubeの発信を始めて1年半ですが、『田原俊彦』の歴史をあまり知らないような若い世代のスタッフたちが面白がってくれる。気を使われて堅い雰囲気になってもつまらないので、和気あいあいとみんなに遊ばれながらやっています(笑)。YouTubeは多角的にね、『こんな一面があったんだ』とか、『こんなふざけた人なんだ』『こんなエッチな人なんだ(笑)』とか、そういうのを見られちゃう場。ああ、今の時代って、そういうものなんだなっていう流れは感じます」
バーチャル、チャリティー、ベアブリック!デビュー50年目に向けたプロジェクトが始動
おそらく日本で最年長の男性アイドルとして、63歳の今も全国ツアーを続ける田原さん。6月には80作目のシングルをリリース予定で、作詞・松井五郎さん、作曲・都志見隆さんという田原さんのヒットソング「ごめんよ 涙」「ひとりぼっちにしないから」などでタッグを組んだ巨匠たちが楽曲を提供する。45年のマイルストーンにふさわしい曲だ。
さらに、今回は音楽活動に加えて、2029年に迎えるデビュー50周年に向けた「ダブルHプロジェクト」の始動も発表。「H」の意味は「HAPPY&HEALTHY」。ネーミングの斬新さが印象的だが、その内容もまた斬新である。
63歳で頭の位置まで足があがる驚異の身体能力!すべてはアイドルであり続けるため……。
まずは、すでにYouTubeで挑戦の様子が公開されている「田原俊彦、100年後も現役アイドル続行XR計画」。これは田原さんの姿形とダンスする動きを完全データ化し、デジタル上にその姿を再現することで100年後の人にも〝田原俊彦の魅力〟を味わってもらうことを目指すプロジェクトだ。
2つめは、2023年のクリスマスに実施した「子供たちに夢を!トシちゃんサンタ団プロジェクト」。田原さんをチーフサンタとしたサンタ団がセガトイズの協力のもと、選んだおもちゃを70人のひとり親家庭にプレゼントした同企画。子供たちの笑顔を増やすべく、2024年も実施が決定。プレゼントの種類も拡大していく予定だという。
そして最後が、メディコム・トイとのコラボレーションによる「トシちゃん@ポップアートプロジェクト」。BE@RBRICKなどフィギュアを中心にてがけるメディコム・トイが「田原俊彦×ポップアート」をコンセプトに様々なプロダクトを展開していく。第一弾は2024年に「トシちゃんBE@RBRICK」を発売し、第2弾、第3弾と続く計画だ。
田原俊彦さんを囲んで写真右からメディコム・トイ代表取締役 赤司竜彦さん、小学館 嶋野智紀さん、セガトイズ 池田弥代さん
メモリアルイヤーも未踏の地を突き進む
夢を叶えるのは簡単ではない。叶えた夢を持ち続けるのも、同じく誰もができることではない。
それを45年続け、さらに新たな挑戦を掲げるアイドル、田原俊彦さん。時々勢いの有り余るジョークを交えながらも、真摯に取材に応える姿は、サービス精神の表われのように思えた。初心を忘れず、誰に対しても丁寧に向き合う姿勢がそこにはあった。
若い世代も巻き込みながら、これからも日本のアイドル史において未踏の地を突き進む。
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取材・文/北本祐子、撮影/洞澤佐智子