業績が低迷していた三菱自動車工業の復調が鮮明になりました。
固定費を20%削減するという大胆な構造改革が奏功。販売台数至上主義を改めて中国からの撤退を決め、東南アジアエリアでの高付加価値戦略、アメリカでの「アウトランダー」のヒットが好業績に大貢献しています。
日本では、今年2月に「トライトン」の販売を開始。日本では売れないと言われるピックアップトラックにも関わらず、発売発表からわずか2か月ほどで1300台を受注するなど、勢いに乗っています。
新型1トンピックアップトラック『トライトン』を12年ぶりに日本に導入
販売台数は減少するも売上高は過去最高
2023年4-12月の売上高は、前年同期間比14.3%増の2兆638億円、営業利益は同4.2%増の1601億円でした。営業利益率は7.8%。SUBARUの10.6%、スズキの9.0%には水をあけられているものの、稼ぐ力の差は確実に縮まっています。
三菱自動車は2017年3月期以降、長らく営業利益率は5%を下回っていました。
※決算短信より筆者作成
2024年3月期通期の売上高は前期比15.9%増の2850億円、営業利益を同5.0%増の2000億円と予想しています。売上高、営業利益ともに過去最高を更新する見通し。通期の営業利益率も7%を上回る見込みです。
実は三菱自動車の販売台数は、以前よりも減っています。第3四半期累計の販売台数を見ると、コロナ前の2018年4-12月が89万4000台、2023年4-12月が58万5000台。3割以上も減少しているのです。
なお、2022年4-12月は63万台で、前年と比較しても1割近く減っています。
それでも業績が好調なのは、付加価値の高い自動車を販売できているため。すなわち、高単価の商品が売れているからです。
リストラを実施して固定費も削減
三菱自動車は2023年4-12月において、売価による営業利益の押し上げ効果が548億円分働いたと説明しています。三菱のように海外の販売比率が高い会社の場合、円安による増益効果に注目されがちですが、為替の押し上げ効果は200億円にも達しておらず、間接コストや一般経費の上昇分で相殺される程度しか作用していません。
※決算報告より
為替が増収増益効果の主要因であれば、本質的な稼ぐ力が強まっているとは言えず、好業績が長く続くことはありません。しかし、今の三菱自動車は実力が伴っていると見ることができます。
利益率の面で会社の潮目が大きく変わったのが、2020年7月27日に発表した中期経営計画「Small but Beautiful」でした。この経営計画の中で、固定費を20%以上削減し、強みを持つ地域・商品にフォーカスすることを明言したのです。
三菱自動車は中期経営計画を発表した後の2020年11月に、45歳以上60歳未満かつ勤続年数1年以上の社員、または60歳以上65歳未満の定年後再雇用者に対して550人の希望退職者を募集しました。その結果、計画を100人上回る654人が応募しています。
2021年3月期は3000億円を超える巨額の純損失を出しています。このとき、構造改革費用として700億円超を計上しています。その一部は希望退職者の退職金などに充当されます。三菱自動車はコロナ禍のタイミングで、痛みを伴う改革を断行しました。